ディアンジェロが遺した比類なき伝説、日本の音楽シーンへの影響ーー逝去に伴いバイラルチャート急上昇
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの10月15日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:Torbahed「YOSHO HAI MONTAGEM」
2位:ディアンジェロ「Untitled (How Does It Feel)」
3位:JO1「Handz In My Pocket」
4位:ディアンジェロ「Brown Sugar」
5位:中島健人「IDOLIC」
6位:レゼ(上田麗奈)「ジェーンは教会で眠った」
7位:米津玄師「IRIS OUT」
8位:米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」
9位:ディアンジェロ「Send It On」
10位:cape, JXNDRO, Sayfalse「MONTAGEM RUGADA」
先週首位だったレゼ(上田麗奈)「ジェーンは教会で眠った」は6位に後退し、代わってTorbahed「YOSHO HAI MONTAGEM」が初登場で1位を獲得した。また米津玄師「IRIS OUT」と、米津と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」もそれぞれ7位、8位に順位を下げ、新たにJO1「Handz In My Pocket」(3位)や中島健人「IDOLIC」(5位)などの楽曲が上位に名を連ねている。
なかでも、10月14日に死去したディアンジェロの楽曲が今週は複数ランクインしている。突然の訃報を受け、彼の代表曲「Untitled (How Does It Feel)」が今週2位に急上昇し、「Brown Sugar」が4位、「Send It On」が9位にランクインした。さらに視野を広げれば、14位に「Lady」、15位に「Feel Like Makin’ Love」と、トップ100内に合計5曲がチャート入りを果たしている。これは、ディアンジェロというアーティストの日本国内における根強い人気と影響力の高さを如実に物語っていると言って差し支えないだろう。
ディアンジェロは1990年代後半から2000年代にかけて台頭したネオソウルムーブメントの開拓者のひとりであり、現代R&Bシーンに決定的な足跡を残した天才シンガーソングライターだ。寡作なアーティストで、リリースされたスタジオアルバムはたった3枚のみではあるものの、その全てが名盤として評価されている。特に2000年発表の2ndアルバム『Voodoo』は、後年になって音楽トレンドの大きな潮目になったアルバムとも評され、2001年の『第43回 グラミー賞』では「最優秀R&Bアルバム賞」を受賞。また同アルバムに収録された「Untitled (How Does It Feel)」は「最優秀男性R&Bボーカルパフォーマンス賞」を獲得し、その官能的なミッドテンポのグルーヴと圧倒的な歌唱はディアンジェロを象徴する代表曲となっている。
ディアンジェロの音楽的特徴としてしばしば語られるのが、その卓越したグルーヴ感だ。彼の作品群に触れると、音が鳴っていない“間(ま)”でさえグルーヴを練り上げる重要な要素であることを痛感するのだ。彼の楽曲には独特の揺らぎと深み、そしてHIPHOP、ソウル、ジャズを融合させ、人間味あふれるリズムと厚みのあるアレンジで紡がれたそのサウンドは、発売から20年以上経った現在でも色褪せるどころか、現行シーンのアーティストたちによって再発見され続けている。
日本においても、ディアンジェロの影響力は計り知れないものがある。彼の緻密かつファンキーなリズム感やメロウな楽曲群は、国内のリスナーからも長年支持を集めてきた。近年の邦楽シーンでもR&Bやソウルミュージック由来のグルーヴを取り入れた作品が傾向のひとつとして増えているが、その潮流の源泉にディアンジェロの存在があったことは間違いないだろう。こうした背景を踏まえると、彼の訃報をきっかけに多くのリスナーが改めて名曲の数々に耳を傾け、共有し合っている現在のチャート状況は必然と言えるかもしれない。
ディアンジェロの訃報は音楽シーンにとって大きな損失だが、彼の遺した音楽は今後も永遠に聴き継がれていく。それは、海を超えた土地である日本のリスナーによって彼の楽曲が多く聴かれ、そして今再びチャートに浮上した今回の現象が証明している。ネオソウルのパイオニアが残した比類なき伝説に、改めて敬意を表したい。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-10-15
























