富樫勇樹によるエンターテインメントの融合 『UNAVERAGE FES.』――稀有な出会いがもたらした2年目の成熟

『UNAVERAGE FES.』レポ

 8月28日、横浜BUNTAIにてプロバスケットボールプレイヤー、富樫勇樹がプロデュースする『UNAVERAGE FES.』が開催された。

 本イベントは、昨年初開催され大きな反響を呼んだクロスカルチャー型フェス。今年も引き続き、バスケットボール、音楽、カルチャー、スポーツといった複数ジャンルが交差し、来場者に新しい体験を提供する場として開催。富樫自身が掲げる“UNAVERAGE”=“平均的ではない”というコンセプトのもと、個性豊かなコンテンツが用意されたことで開催前から大きな注目を集めていた。

 当日は富樫のほか、渡邊雄太、金近廉、辻直人らBリーグを代表する選手たちと、バレーボールの柳田将洋、バドミントンの松友美佐紀、ブレイキンのShigekix、体操の谷川航、柔道の出口クリスタ、卓球の水谷隼ら他競技で活躍するトップアスリートたちが参加。また、氣志團、MONGOL800、Jairo、PUFFYといったアーティストの出演により、ジャンルの壁を超えた豪華な共演が実現した。


 イベント本編開催前に行われたオープニングセレモニーには、今年12月にスポーツブランド・コンバースより発売が予定されている自身のシグネチャーモデル「CONS UNAVERAGE MID」を着用した富樫が登場。デモンストレーションとして、自身の代名詞である3ポイントシュートを披露し、見事成功させると客席からは大きな歓声や拍手が寄せられた。

 こうして会場全体が高揚感に包まれるなか、定刻の18時にイベント本編がスタート。オープニングパフォーマンスを行なったShigekixは、ヘッドスピンやウインドミルなどダイナミックなブレイキンのトリックで会場を魅了した。

Shigekix

 参加アスリートたちが集結したTip-off Talkで富樫は「去年、『来年またお会いしましょう』という言葉で締め括ったので、その言葉どおり今年また開催できてうれしい」とコメント。また、今回が初参加の出口は「初参戦で緊張しているが、『SLAM DUNK』を読んでモチベーションをあげてきたので大丈夫!」と力強くもユーモアのあるコメントで会場の笑いを誘った。

 この日は「Sports Mix Challenge」「Dream Match」「3point Battle」の3コンテンツで構成される「UNAVERAGE Special Game」が実施され、参加アスリートたちが共同で競技に取り組む貴重な姿にも注目が集まった。

 また、「UNAVERAGE Special Game」と交互に実施された音楽ライブでは、最初に氣志團が登場。ドラムと赤いバイクに跨り会場入りした綾小路翔(Dragon Voice/MC/Gt)による直管コールのセッションでライブを開始。代表曲「One Night Carnival」を特攻服を着用した辻とともに披露した。また、この特別な“辻團”パフォーマンスのあとには、“ジェネリック 10-FEET”として、映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌「第ゼロ感」を熱唱。観客の予想を裏切るサプライズで会場を大いに盛り上げた。

氣志團

 2番手として登場したMONGOL800は、代表曲「あなたに」からライブをスタート。同曲の演奏を終えたあと、キヨサク(Ba/Vo)は「こんな素敵なイベントに呼んでくれて、富樫選手ありがとう。いろいろな世代の人が遊びにきていると思いますが、『UNAVERAGE Fes.』でも響かせてもらってもよろしいでしょうか?」と客席に語りかけ、もうひとつの代表曲「小さな恋のうた」を熱唱した。さらにスカパンク調の「DONʼT WORRY BE HAPPY」の間奏時には、沖縄から連れてきたというパフォーマーが3ポイントシュートに挑戦。一度は失敗するもキヨサクとの『SLAM DUNK』の“安西先生と三井”風やりとりを経ての再チャレンジでは見事成功を収めたことで会場は感動に包まれた。

MONGOL800(撮影=SARUYA AYUMI)

 3番手を務めたビートボックスグループのJairoは、昨年行われたビートボックスの世界大会を制した実力を惜しげもなく披露。人の口から発せられているとは思えないほどの迫力あるグルーヴィーなビートで観客の目を釘付けにした。

Jairo

 この日の音楽ライブコンテンツの大トリを務めたPUFFYは、「アジアの純真」や「愛のしるし」、「渚にまつわるエトセトラ」といった代表曲を披露。どの曲でも大合唱が起きるほど大盛況だった。

PUFFY

 イベントの最後に富樫は「たくさんのアスリート、素晴らしいアーティストの方に来ていただいて、みんなで盛り上がったことを本当にうれしく思います。去年と同じ締めになりますが、来年またお会いしましょう!」と盛況に感謝しつつ、来年の開催を期待させる言葉で締め括った。

 また、終了後の記者会見で富樫は、スポーツミックスチャレンジなど、ほかのスポーツの要素も取り入れた新しいコーナーが追加されたことも含めて、今回の感想を問われると、「まず、2年連続開催できたことをすごく嬉しく思いますし、去年に引き続きたくさんのアスリート、そして素晴らしいアーティストの方に来ていただいて、無事終えられたことをすごくよかったなと思います。また、僕自身もすごく楽しむことができました。同じように会場に足を運んでくれた皆さんにも楽しんでいただけたら嬉しいなと思います」とコメント。

 そのうえで来年の開催時の構想について聞かれると「まだ今の段階では全く構想はありません。でも、これだけの別の競技のアスリートと交流できる機会はなかなかないので、来年も開催できるよう頑張りたいです」と来年開催への意欲を口にした。

 一方、昨年からのブラッシュアップについては、「ライブ形式のバスケをやめたことです」と即座に回答。続けて、その理由を「体力的にキツすぎる」と説明した上で、具体的な反省点と改善策を次のように語った。

 「去年はアーティストの皆さんの音楽を聴きながら、ずっと座っていたにもかかわらず、急に本気の1on1をさせてしまい、自分にも参加アスリートの皆さんにも大きな負担をかけることになってしまった。だから、今年はそのことを反省して、そういった体力面での負担が大きいことはやめてくれと運営に伝えました。それで今年はゲームをスリーポイントシュートに変更したことで、体力的には非常に助かりました(笑)」

 また、記者会見には松友、渡邊、柳田の3人も参加。松友はこの日の感想を「富樫選手からお声がけいただいたことで、今回こんなにも素晴らしいイベントに参加させていたただくことができました。私自身もすごく刺激をいただき、楽しい時間を過ごさせていただきました」と語った。次に渡邊が「今日は、たくさん楽しませてもらいました。去年も声はかけていただいていたのですが、スケジュールの都合で参加できませんでした。でも、今年は本当に参加できてよかったです」と答えると、柳田は「本当にこの素晴らしいイベントに参加させていただき非常に嬉しく思っています」と、まずイベントに参加できたことに対する感謝の意を示した。次に「本来であれば、僕たちのようなアスリート、アーティストもそうですけれども、ファンの方を楽しませるという目的で参加すると思っていたのですが、僕自身もこのイベントのファンだし、楽しめたと思っています。もし、会場にいる皆さんがひとり残らず楽しめた時間になっているとすれば、僕も今日、非常に有意義な時間を過ごさせていただいたなと思います」と語った。

 2年目を迎えた『UNAVERAGE FES.』は、富樫のビジョンのもと、競技の枠を超えたアスリートと個性豊かなアーティストが一堂に会する稀有なイベントとして成長を遂げた。今後も、“UNAVERAGE”なエンターテインメントの形を提示していくであろう、このイベントのさらなるスケールアップに期待せずにはいられない。

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