SPYAIR UZ「まだまだ音楽に煌めきがある」 ソロ活動への深い確信から生まれた新曲「Soloist」を語る

SPYAIR UZ、ソロ活動への深い確信

 今年、結成20年&メジャーデビュー15年を迎えたバンド SPYAIRのメインコンポーザーとして、これまで100曲以上の楽曲を世の中に送り出してきたUZ。ソロデビューした2023年に5曲を発表。そして約1年半の沈黙を経て、今年6月に「Fly Higher」でソロ活動を再始動させ、さらにその第2弾として8月27日、「Soloist」が届けられた。彼のキャリアの中で、特別な新しさを持って響くこの「Soloist」について、語ってもらった。(大西智之)

「もっと自由にもっと遊び心を効かせようとなれた」

ーー2023年にスタートしたUZさん名義の活動を一度止めて、新たに構築し直し6月にリリースした「Fly Higher」は新しい一面を感じました。そして、今回届いた「Soloist」はまた違う角度の新鮮さを感じる曲で。ミディアムスローなテンポ感で、ネオソウルあたりに通ずる洗練された大人の楽曲ですね。

UZ:今年に入ってトラックを作っていく中で都会的な音楽をよく聴いていたんです。そういったものを自分の楽曲として表現したいと思えたし、表現しても違和感のない年齢だな、と。コーヒーを飲みながらゆっくり聴けるような曲を、とイメージして作ったのが「Soloist」です。

ーーサビ始まりの曲で、そのブロックはすべてファルセットで歌われています。サビの歌とベースにも色気がありますね。

UZ:曲の雰囲気に合わせてサビはファルセットでアプローチしています。声を張ると世界観が壊れてしまいますし、同時にある程度のキーの高さが欲しかったんです。音に関しては、一つひとつの音がニュアンスの細部まで聴こえるように音数を少なくして作っていったんですよ。基本的にピアノとかは白玉(長く伸ばした音)で、サビではベースを刻んでいます。サビはピアノのフレーズとかで表現できたら、とも思ったんですが専門外ですし。今持っている知識で成り立たせました。

ーー洗練された統一感の中で、大人の色気と心地いいチルさがいいバランスで成り立っていて素敵ですよ。曲自体は、サビといわゆるDメロ的なブロックがメロディ、そしてバースが16小節続くラップで構成されていますね。

UZ:フック(ロック&ポップスで言うサビ)もラップにしてもいいんですが、特にこういうゆったりした曲では、やっぱりメロディが欲しくなるんですよ。メロディで気分を変えて、そしてまたラップにいくという構成にしています。

ーーそこに乗る歌詞がかなり個人的な世界で。

UZ:本当にパーソナルです(笑)。わかりやすくサビでテーマを描いていて。普通の日常における決まり切ったルーティンみたいなものって一人ひとりにありますよね。そういう日々のルーティンもひとつ角度を変えれば旅になる。旅している時間のように日常を大切にしよう、いい音楽をかけて過ごそうというのがテーマ。サビで描いたフレーズの〈Traveling without moving〉は動かなくても旅になるっていう意味なんです。

ーー例えば音楽を聴くことで脳裏に浮かぶいろんな景色を巡ったり、日常にいて想像の中で心が旅をするような。

UZ:そうです。だから1番で自分のリアルな朝の始まり、2番で仕事終わりを描いていて。そうすることで、こういう時間も素敵だよね、って言いたかったんです。

ーーそのリリックの中でチェアーやギターだったり……それこそバイクの名前が飛び出したり。ご自身がお持ちで愛着のある物の名前が入り込むことで、よりプライベート感が出た気がします。

UZ:パーソナルな固有名詞をガンガン歌詞に入れていくのはラップでよくやる手法で、他のアーティストの曲を聴いていても楽しいんです。たとえその物自体を知らなくてもね。だから、このリリックが「〈Grass tracker〉って何だろう? ああ、バイクの名前なんだ」とか、気づきのきっかけになることもあるだろうし、流してもらってもいい。そういうスタンスでいいのかなってところで、あえて固有名詞を入れている面もあります。

ーー固有名詞、特に自分が好きなものの名で韻を踏んでいくかっこよさもありますよね(笑)。

UZ:そうそう! 〈Grass tracker〉と〈向かうサウナ〉の韻を思いついた時は自分でも「やべぇな!」ってなりました(笑)。

ーー(笑)。〈サウナ〉がそうですが、〈旋律〉と〈色鉛筆〉とかかっこつけてない言葉で韻を踏んでいたり。

UZ:歌詞で〈サウナ〉ってあまり見ないですよね(笑)。「Soloist」を書いたのは2025年の年始あたりで。このリリックを書いたことによって、自分を縛るものがより外れたし、ここまでやっていいんだな、みたいな感覚があって。ある程度できた他の曲の歌詞を「Soloist」を完成させた後に書き直したりしたんですよ。それくらい、もっと自由にもっと遊び心を効かせようとなれた曲です。

ーーより自由に、言葉も音も表現しているんですね。

UZ:今、制作の追い込みに入っているアルバム全体を見ても本当にそういう気がします。

バンドとはまた異なる音楽的探究の刺激

ーーその自由とか新しさを感じるひとつが「Soloist」のラストサビのコーラスのアプローチです。

UZ:このあたりはジャンルへのリスペクトでもあります。ネオソウルとか1990年代のR&Bってオケを分厚くすることってあんまりないですよね。基本的にワンループの中で起承転結がついていて、1曲を魅力的なまま聴かせているっていう。その中でコーラスを重ねるのが、厚みを出すためにできる技法なんです。主旋律のボーカルから、フェイクが主役に切り変わったり。ロックではリズムを変化させるとか転調で盛り上がりを作るところを、ネオソウルや当時のR&Bはこういったコーラスワークでやっていて、かっこいいんですよ。それを自分なりに挑戦しているんですが、やっぱ難しいです。頭で考えて作るハーモニーではなく、録りながら感覚でやっていく感じで。そこに生感があって楽しかったですけどね。そうやってトライしながらまだまだ研究している段階です。

ーーソロの楽曲は、コンポーザーとしてメジャーで15年やってきたUZさんが、未知の音楽を掘り下げて知っていく、その喜びが入っている気がします。

SPYAIR『オレンジ』Music Video(『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』主題歌)

UZ:それこそソロをやる意味です。SPYAIRで発表した「オレンジ」が俺たちの想像を越えて多くの方に聴いていただけた後、一度立ち止まって「ソロで何がやりたかったんだっけ?」と向き合い直したんです。その時に、自分の中にある音楽を広げるために、探るためにソロはやるべきだなと思えて。そこで2023年に出した、ソロでの楽曲を含めて当時描いていたアルバム全体のビジョンをすべて白紙に戻したんですね。そこから2024年に水面下で試行錯誤してきて、今、新たなアルバムを制作しているわけですけど、ソロをやる本質に戻れているし、それがわかりやすく出たのが、「Fly Higher」と「Soloist」と言える気がします。この2曲はSPYAIRにない要素が詰まっていますから。改めて、こういった音楽的研究は楽しいですね。やっぱり今まで作ったことがないジャンルの音楽って実際にやってみると、聴いているだけじゃわからないことがたくさんあって。制作しながら「こうなるんだ!」という発見があるんです。

ーーそれを今持てるっていいですね。ソロで発見したものがバンドに返っていくこともあるでしょうし、新しい音楽を作る中で、まだまだ知りたい、例えばピアノをもっと掘り下げたいとか思えたりするでしょうし。

UZ:まだまだ音楽に煌めきがあるんですよね。作曲とかアレンジの経験を重ねるとリスナーとして自分がやっているのと同じジャンルのものを聴いた時、「ああこうね、知ってる」みたいなふうになってきがちなんです。それがまったく違う音楽を作ろうとすると、こういうものなんだ、っていう発見があるし、心が柔らかくなったり、音楽に謙虚になれたりして、もっと知りたいと思えるんですよ。

ーーちなみに、現在制作中というアルバムは全体のデザインというか、こういう音楽的なピースが必要、みたいな全体像を見て進めているんですか?

UZ:それこそ、2024年にやっていたことがそれなんです。大体4小節あれば曲の雰囲気がわかるから、そういったものをまず作って。それを繋ぎ合わせてアルバム像をイメージしてから、1曲1曲を膨らませている感じです。今、収録予定の全曲の細かいアレンジを詰めているところに入ってきているんですが、想像より時間がかかっていて(苦笑)。

ーー「Soloist」に〈駆ける時代に 記す現在地〉とありますが、時間をかければもっと良くなるという気持ちにどこかで折り合いをつけて、今を生き、それを形にして残すってことは大切ですよね。

UZ:それはひとつのテーマです。今を生きるってやっているようでやってないというか。“旅”を制作中のアルバムの核にしていて、それって今を生きる大切な要素だと思っているんです。新しい旅先に行くと、目の前に集中するじゃないですか? 知らない景色を前にスマホで関係ない動画とか観ないですしね。そうやって今を生きようぜ、今を楽しもうぜ、って。その中で、「Soloist」は日常の中にある旅、「Fly Higher」はスマホを一度置いて旅に出ようぜ、という楽曲です。

ーー初めてのジャンルの音楽を作るのもひとつの旅でしょうし、生きている中での旅を刻んだアルバムになりそうですね。そしてソロライブも叶いそうですか?

UZ:ソロでアルバムを作って、ワンマンライブをやるということが30代に入ってから軸に持ち続けている夢ですから。それは叶えたいです。

UZ「Soloist」ジャケット写真
UZ「Soloist」

▪️UZ リリース情報
「Soloist」
配信中:https://smar.lnk.to/mcxpOk

▪️UZ ライブ情報
初のワンマンライブ
『UZ LIVE 2025 “STATE OF RHYMES”』
日程:2025年12月13日(土)open 17:30 / start 18:00
会場:shibuya CYCLONE
料金:オールスタンディング ¥6,500(税込)
※入場時別途ドリンク代必要

<チケット最速先行予約受付中>
SPYAIRオフィシャルモバイルファンクラブAIR-GATE:https://k.spyair.net/

▪️SPYAIR リリース情報
ボートレース2025 MCソング「Chase the Shine」
配信中:https://SPYAIR.lnk.to/cK27rv
MV:https://youtu.be/TNpUAy0NJp0

▪️SPYAIR ライブ情報
単独野外ライブ『JUST LIKE THIS 2025』
日時:2025年9月27日(土)、28日(日)開場16:00/開演17:00(19:30終演予定)
会場:山梨県 河口湖ステラシアター
料金:指定席9,000円(税込)※3歳以上チケット必要
お問い合わせ DISK GARAGE:https://info.diskgarage.com/
JLT2025特設サイト:https://www.spyair.net/justlikethis2025/

▪️関連リンク
・UZ
オフィシャル HP:https://www.spyair.net/uz/
X(@UZSPYAIR):https://x.com/UZSPYAIR

・SPYAIR
Web Site:https://www.spyair.net/
Instagram:https://www.instagram.com/spyairstaff/
X:https://x.com/SPYAIRSTAFF
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