稲垣吾郎はなぜ“変わらない”のか? 崩れることのない規則正しい生活、見習いたいいい年の重ね方
しかし、それでも「老けない」「変わらない」と口にせずにはいられないのはなぜか。
そのヒントは、やはり本人の言葉にあった。稲垣は同ラジオで「ある一定の自分の理想の姿みたいなのがあって。それは別にいくつの時の自分とかってことでもなくて。自分のなかで『稲垣吾郎はこういう姿形をしていたほうがいいな』っていう理想があって。そこを常に基準にしているんです」と答えていたのだ。
そんな稲垣の話を聞きながら、フォトエッセイ『Blume』(宝島社)の刊行時に彼が語った「(本は)染み付く匂いとか、触った感じとか、いい意味で経年劣化が楽しめるのも魅力的」(※1)というフレーズを思い出した。
稲垣にとって時間の経過は、劣化ではなく熟成なのだ。愛用するフィルムカメラや腕時計、そしてワイン。いずれも時を重ねることで深みを増すものばかり。重要なのは、ただ時の流れに任せるままにしておくのではなく、目をかけ、手をかけ、愛情を注ぎながら、ともに時を重ねていくこと。その姿勢が彼の生き方とオーバーラップしているように感じた。
きっと稲垣自身も“稲垣吾郎”という作品を手入れし続けている感覚なのではないだろうか。変わらないように見えるヘアスタイルも、実は小さなアップデートが繰り返されているそう。毎日観察しているからこそ、その変化さえも愛しく楽しめる。時の流れに愛情を抱くことができるのだと思った。
そんなふうに楽しむためには、もちろん健やかな体と心の余裕が欠かせない。多くの人は、いつだって不調になってから生活を見直しがちだ。しかし、稲垣は心身の健康を維持するために、規則正しい生活を長年続けてきている。
夜はできるだけ22時までに就寝し、朝は6時に起きる。愛する猫たちや植物とともに迎える朝。公園を散歩してベンチで台本を覚えることもある。朝食には草彅剛から譲り受けた“手作りドレッシング”をかけたサラダを食べたというエピソードも、過去のブログ(※2)で明かしていた。
十分な睡眠と適度な運動、そして好きなものに囲まれる日常。本人は「おじいちゃんのような生活」と笑っているが、そのシンプルな心がけを継続していくことこそ実は難しい。ましてや多忙を極める芸能活動の合間に、というのだから頭が下がる。
心身を整えるルーティーンを崩さないからこそ、維持される稲垣のみずみずしさ。その安定した存在感が、私たちに「変わらない」と言わしめるのだろう。ラジオでは「年を取らない魔法はないと思いますし、いい年の重ね方をするのがいいんじゃないかと思いますけどね」と締めていたのも、稲垣だからこそ語れる言葉だ。
一瞬にして若返ったり、何か特別なアイテムで若さを維持することはできない。人は必ず年を取るからこそ、年齢とともに深まる自分自身の味わいを楽しむ。そんな「いい年の重ね方」というミラクルを見せてくれているのだ。
※1:https://realsound.jp/2020/09/post-621922.html
※2:https://ameblo.jp/inagakigoro-official/entry-12378812197.html
























