GLAY、DIR EN GREY、PENICILLIN、Plastic Tree……なぜこうなった? V系が90年代アニソンシーンに与えた衝撃

 8月9日より東京 サンシャインシティ 文化会館ビルで開催されている漫画家・うすた京介の展覧会『祭りだワッショイ!うすた京介ワールド展~すごいよ!!マサルさん30周年・ピューと吹く!ジャガー20周年記念~』のテーマソングが、PENICILLINの楽曲「ロマンス」に決定した。

【公式】PENICILLIN「ロマンス」(MV)【8thシングル】ペニシリン/Romance

 当時を知らない世代はハテナが浮かんだかもしれないが、知っている人はニヤリとしたはず。今回の展覧会のメイン作品のひとつである伝説的ギャグマンガ『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(集英社)がアニメ化を果たした際、オープニングテーマとなったのが「ロマンス」なのだ。

 令和のアニメソングと言えば、その多くが作品のための書き下ろしとして制作され、担当アーティストの作品に対する理解度や解釈の深さが話題に上ることも珍しくない。アニメの楽曲に起用されたなら、作品の世界観に寄り添った曲であるべきだと思っている人も多いだろう。

 しかし、90年代のアニメでは、既存曲が主題歌となることも多く、そもそもタイアップの構造が今とは異なるという側面もあるが、「自分たちがかっこいいと思った曲が後々に主題歌となる」という流れのなかで結果的に作品と化学反応を起こし、ヒットに繋がったのだ。

 アニメ『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(TBS系)と「ロマンス」は、まさにその代表格だ。〈愛に気づいて下さい〉というフレーズとHAKUEI(Vo)の歌声が印象に残る情熱的なラブソングと、シュールでハチャメチャなギャグアニメ。世界観がまったく違う予想外な組み合わせに、当時ザワついたものだった。だが、とにかくクセの強すぎるオープニング映像に、誰しもが気づけばハマっていた。

 爆走するマサルさんの背後で響くキャッチーなメロディ、ボケるキャラクターとロマンチックなフレーズのギャップ、最終的にはなぜかPENICILLINのMVが一瞬だけ差し込まれるというオープニング映像。今思い返しても意味不明だし、合っているかと言われればやっぱり合っていないのに、絶対に忘れられない。令和の時代になっても愛されているとは、当の関係者たちのほうが驚いているのではないだろうか。

 ギャグアニメとの意外な組み合わせと言えば、浜岡賢次による破天荒なギャグマンガ『浦安鉄筋家族』(秋田書店)がアニメ化された際、DIR EN GREY(当時はDir en grey)のインディーズ時代の楽曲「-I’ll-」がオープニングテーマとなった。

 『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』と同じ放送枠だったため、制作側は再び“ギャグアニメ×ヴィジュアル系”のマッチングに挑戦したのかもしれない。こちらもオープニング映像にチラリとDIR EN GREYのMVが差し込まれ、メロディアスな楽曲と個性的なキャラクターたちのギャップに翻弄されるという名(迷?)作だ。今でもそうなのかはわからないが、当時カラオケで「-I’ll-」を入れるとアニメの映像が流れ、やや困惑したのが懐かしい。

 ほかにも、90年代にアニメソングを務めたヴィジュアル系バンドの名曲を紹介していこう。

 1999年にPlastic Treeがリリースした「Sink」は、探偵ミステリーアニメの金字塔『金田一少年の事件簿』(読売テレビ/日本テレビ系)のエンディングテーマ。有村竜太朗(Vo/Gt)の歌うメロディが優しくも儚いバラードで、エンディング映像には物悲しげな夕焼けの海が描かれた。幅広く聴きやすい曲であると同時に、シューゲイザー風味のギターアレンジにしっかりPlastic Treeらしさが滲む。ファンタジックなバンドイメージを崩すことなく、悲しい事件も登場するアニメのエンディングとして心を癒してくれる1曲だ。

 『金田一少年の事件簿』と言えば、のちのヴィジュアル系シーンに大きな影響を与えた名古屋出身バンド・Laputaの「meet again」も外せない。ピアノ×ストリングス×バンドサウンドが絡み合うダークなサウンドはLaputaのカラーが強く、アニメソングとしては浮くかと思いきや、作品のシリアスな側面をうまく際立たせている。

 ちなみに、『金田一少年の事件簿』では2000年にPENICILLINの「ウルトライダー」、2014年よりスタートした第2シリーズ『金田一少年の事件簿R』(読売テレビ/日本テレビ系)ではMUCCの「故に、摩天楼」が起用されている。意外にもヴィジュアル系との親和性が高い作品だったのだ。

 そして、GLAYのメジャー1stシングル曲「RAIN」と2ndシングル曲「真夏の扉」も、実はアニメソングだったのをご存知だろうか。1994年に放送されたオリジナルロボットアニメ『ヤマトタケル』(TBS系)で、「真夏の扉」がオープニングテーマ、「RAIN」がエンディングテーマだった。大ブレイクを果たす前の楽曲ながら、すでに力強いメロディとポジティブなメッセージ性が強い輝きを放ち、少年・ヤマトタケルの冒険を描くアニメにも違和感なくフィット。アニメファンにも受け入れられ、のちに国民的バンドとなるGLAYのメジャーデビューを後押しした。

GLAY / RAIN
GLAY / 真夏の扉

 GLAYは、2010年代以降も『ダイヤのA』(テレビ東京系)のオープニングテーマとなった「疾走れ!ミライ」など、彼らならではの熱いアニメソングを生み出している。

 90年代に実現した、アニメ×ヴィジュアル系バンドの不思議なマッチング。何も知らずに観ていたアニメの楽曲がヴィジュアル系へのめり込む入口になった人も多いだろう。この機会に、ぜひそれぞれの思い出の楽曲を聴き直してみてほしい。

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