FRUITS ZIPPERの魅力はライブにこそある――“桁外れの野望=東京ドーム”を現実にするSUPER IDOLの姿

 東京ドームに立った日本の女性アイドルグループは、歴代でもほんの一握りだ。日本武道館、さいたまスーパーアリーナの先にある、さらなる夢の果て。目標に掲げても、なかなか辿り着けないアイドルグループがごまんといるなかで、FRUITS ZIPPERは結成から3年目という早さで東京ドームに立つことになる。

 〈桁外れの野望 笑うのは野暮〉〈どデカい事 ハッタリかましてこう〉と「ぴゅあいんざわーるど」のなかで歌ってきたように、FRUITS ZIPPERもまた東京ドームという5文字を夢のひとつに挙げてきた。KAWAII LAB.スタッフ陣も想像し得なかった破竹の勢いで突き進むFRUITS ZIPPERが東京ドームという夢の舞台に辿り着くことができたのは、発表時の映像にあった通り奇跡ではなく、地道に歩んできた証。まさにグループ名が示す、努力が“実を結ぶ”形であり、それは泣き崩れるメンバーたちが最も実感していることだろう。

 誤解を恐れずに言えば、“SNSでバズっているアイドル”としてのイメージを強く持たれているであろうFRUITS ZIPPERだが、それだけでは到底、東京ドームで単独公演を開催することはできない。筆者が、今回のSSAスタジアムモードでのステージを見て強く感じたのは、FRUITS ZIPPERの魅力はライブにこそあるということ。かわいいだけでなく、かっこいいも打ち出した今のFRUITS ZIPPERは無敵だ。

 ライブのテーマは「SUPER IDOL」。アソビシステムの先輩であり、「原宿から世界へ」を体現するきゃりーぱみゅぱみゅが声優を務めた猫・じっぺぇが魔法の呪文「ますかるのゆあ ふるふるる」と呼びかけることで、メンバーが順に巨大なコンパクトミラーから登場。そのまま「かがみ」へと流れていき、曲中の呪文ではメンバーが一瞬にして新衣装へと変身するという、これ以上にない“KAWAII戦士”としての演出で、ライブの終わりにはまたメンバーがコンパクトミラーに帰っていくという完璧な幕引きだったように思う。

 アンコールを入れて31曲、2時間半にも及ぶライブのなかには、メンバーが演出面で関わっている部分が多くある。鎮西はMCの中で「武道館を超える」という裏テーマを明かしていたが、そのひとつが黒を基調とした初めてのパンツ衣装を着ての「Going!」を皮切りにして「スターライト・ヴァルキリー」まで続く、いわゆるかっこいい楽曲群。「Re→TRY & FLY」では初めてのダンスブレイクが取り入れられている。ソロ曲ブロックはそのままメンバーの個性が表現されていることは言うまでもないが、ダンスブレイクはメンバーがそれぞれパフォーマンスでも主役になれるということを体現しているとも取れるだろう。

 公演中に放たれる銀テープに、松本が「崎玉スーパーアリーナ」と誤字したことを受け、会場の公式SNSやサイト、会場外のビジョンまで「崎玉(SAKITAMA)」の記載になる異例の事態は、SSAの25周年公演としてだけでなく、会場側もFRUITS ZIPPERを大いに歓迎していることが伝わってきた。また、スタジアムモードの広さを活かしたムービングステージ、花道とその先から伸びるクレーンも、メンバーが意見を出した演出案で、会場がどんなに広くなったとしても、ふるっぱーの近くに行きたいという思いが滲んでいる。

 初披露となった新曲「ピポパポ」「ふるっぱーりー!」の2曲は、東京ドームに向けて2025年を駆け抜けるための新たなレパートリーとなる楽曲。どちらも夏フェス映えしそうなアップチューンであり、一度聴いたら頭から離れないメロディーだ。特に「ピポパポ」で早瀬が担当している英詞パートは、“NEW KAWAII”をもう一度提唱する、素晴らしいリリックであることも特筆すべき点だ。

 最後に忘れずに記さなればいけないのが、月足の存在が確かにあったこと。冒頭の演出で、じっぺぇは「君がいなきゃ始まらないよね。真っ赤に燃えたぎるハートは、7人の大事なエンジン」と紹介していた。各楽曲の月足のパートではふるっぱーの持つ“かわぬい”がスクリーンに映し出され、「君の明るい未来を追いかけて」ではいつも以上の天音コールがSSAに響き渡った。気持ちは7人。虹は7人でないと作れない。今度は7人でSSAスタジアムモードに立つことをメンバーは誓う。

 仲川は東京ドームでのライブのアナウンスを受けて、ドームツアー、さらには地球丸ごとふるっぱーにしたいと新たな決意を語っていた。それを誰かは桁外れの野望だと嘲笑うかもしれない。どデカい事だと、もしかしたらふるっぱーさえも思っているかもしれないが、それを現実に変えてきたのが、FRUITS ZIPPERだ。東京ドームは彼女たちの進化と真価を証明する場所。地図にない場所へ。

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