SAWTOWNE、TAK、FLAVOR FOLEY……世界で育つボカロカルチャー、シーン拡張の鍵を握る海外ボカロPたち

FLAVOR FOLEYの活躍、音楽プロデューサー・TAKの参入も

 また、CIRCRUSHのように、カルチャーの文脈に則った“音楽サークル”的なチーム体制で活動するボカロPも海外で散見されている。アメリカ在住ボカロPによるチーム、フレーヴァー・フォリィ(FLAVOR FOLEY)はそんなユニットのひとつであり、今注目のクリエイターを複数擁するサークルとしても注視したい存在だ。メンバーはJamieP、Vane Lily、ricedeityの3名。全員が音声合成ソフトを使用したオリジナル曲やカバー曲を投稿しており、中でも現在YouTube再生数3500万回超を誇るVane Lily「BUTCHER VANITY」や、初音ミク YouTube公式チャンネルにて投稿されたJamieP「Radiant Revival」などは、目にしたことのあるリスナーも多いのではないだろうか。

BUTCHER VANITY ft. Yi Xi

 また、ricedeityは音楽のみならず映像制作も手掛ける多才さを持ち、メンバー個人の楽曲MVなどにも時折制作で関わっている様子。ユニットでは「ELECTRIC WEEKEND ZONE」をCircus-Pと共作したり、今年5月投稿の「Static」(FLAVOR FOLEY)は考察余地のある作品性を持つということもあり、すでにYouTube再生数700万回を突破するなど、大きな話題となっている。今後もその活躍は、よりワールドワイドなものへ拡大していくだろう。

Static ft. Hatsune Miku

 さらに日本と同様、海外のボカロシーンでも徐々にプロクリエイターのカルチャー参入現象が始まっている。その文脈上ですでにリスナーから耳目を集めているのが、韓国在住の音楽プロデューサー・TAKだ。これまでNCT 127やStray Kids、TWICEといった、数々のK-POPシーンに携わってきた経歴を持つ彼のシーン参入は、まさにビッグニュース。自身2作目のボカロ曲「LEMON MELON COOKIE」は投稿から半年足らずでYouTube再生数700万回再生を突破し、直近の最新作「孤独サイコ」も着実に再生数を伸ばしている。プロキャリアで培われたテクニックを存分に発揮したサウンドに魅了されるリスナーが、世界中で今着々と増え続けている最中なのだろう。

[MV] TAK - ‘孤独サイコ (Psycho Mode)’ feat. 初音ミク

 近年のシーンはまさに“多様性”という言葉に象徴される拡張を見せている。こうしてVOCALOIDが国境を越え、よりさまざまな人々に親しまれる音楽となることで、ボカロカルチャー自体が持つ多様性もさらに深度の高いものとなるはずだ。将来的には従来の日本の文化にはない、各国独自のボカロカルチャーが世界中で産声を上げ育っていく可能性もある。今後も日本のみならず世界を舞台に、より多様になっていくボカロカルチャーの行く先を、引き続き大きな期待とともに見守っていきたい。

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