久保田利伸の“才能”を考察 40年のキャリアが生んだ「諸行は無常」に宿るグルーヴ、音楽への飽くなき探究心

圧巻のリズム感、今も変わらず輝きを放ち進化し続ける理由

 さらに彼の才能を語る際に必須なのがリズム感だ。既出のボーカリストとしての技量ととマニアックな音楽性が、前例のないポップミュージックとして結実したのが、3rd アルバム『Such A Funky Thang!』である。本作はブラックミュージック、ファンク、そしてダンスミュージックという概念を日本のメインストリームに押し上げた金字塔だ。

久保田利伸 - Dance If You Want It [Official Video]

 この作品のオープニングを飾る「Dance If You Want It」は、ミディアムテンポながら、最初から最後までループする〈Dance if you want it!〉というフレーズと、ファンキーなベースラインを軸に、フリースタイルのようなボーカルを聴かせるダンスミュージック。今聴いても相当攻めている構成の曲だと思うが、久保田はリズムをキープしながらも自分の歌声をしっかりと残すことで、中毒性の高いポップソングに仕上げている。

 そして最後に挙げたいのが、音楽に対する探究心、そして好奇心を持ち続ける才能。ファンク、レゲエ、アフリカの民族音楽を取り入れるなど、1980年代後半~1990年代にかけ、リリースするアルバム毎に明確なテーマがあったのも、久保田利伸というアーティストの特徴である。これは、彼の探究心のたまものだと言える。この探究心は、音楽を聴いて掘り下げるだけでなく、その音楽が生まれた背景、その環境までに及ぶ。1993年、活動の拠点をニューヨークに移したことも、彼の探究心がそうさせたのだろう。そしてこの意識が、久保田の最大のヒット曲となる「LA・LA・LA LOVE SONG」(1996年)を生み出すことになる。

久保田利伸 - LA・LA・LA LOVE SONG with NAOMI CAMPBELL [Official Video]

 当時、世界的なトップモデルだったナオミ・キャンベルとのデュエットが実現したのも、彼がニューヨークに居を構えていたからだと考察する。2010年以降、各地のフェスやイベントへの出演や、KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHIなどのライブにゲスト出演するなど、日本のブラックミュージックシーンのパイオニアとして、今でもその存在感をいかんなく発揮しているのも、久保田の根底に、音楽に対する変わらぬ探究心、そして好奇心があるからだろう。そして今も変わらず、彼の源泉にある音楽は、変わらず輝きを放っている。

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