水曜日のカンパネラ 詩羽&ケンモチヒデフミに聞く、充実した活動の中で確立された現体制の“らしさ”

ファンの皆さんが求めてくださっていることに応えたい

——では、「サマータイムゴースト」について聞かせてください。TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』(テレビ東京ほか)オープニング主題歌ですが、どんなイメージで制作された楽曲なんでしょうか?

ケンモチ:まず『九龍ジェネリックロマンス』の原作を読ませてもらったんですよ。ミステリーやラブロマンスなどいろいろな要素が入っている作品だし、描かれている街の雰囲気もすごく素敵で。ノスタルジー感もあるし、“行ったことがないのに、懐かしい”みたいな感覚を曲でも表現できたらなと思っていました。トラックに関しても、新しさと懐かしさを両方入れたいなと。

——当然、歌詞にも原作のイメージが反映されている?

ケンモチ:そうですね。原作を読み込んで、作品の世界観をどう歌詞に落とし込もうか考えて。ただ、すべてをなぞってしまうと水曜日のカンパネラらしさがなくなってしまうので、そこをどうするかがポイントだった気がします。この曲を作っていたのは去年の夏で、めちゃくちゃ暑かったんですよ。「こんなに暑い夏はこれきりにしてほしい」という気持ちが作品の雰囲気ともリンクするような気がしたというか。香港に行ったときに見た光景も反映していますね。マンションが密集していて、ずらっと並んだベランダに室外機が置かれていて、すごい音がしていて。それがすごく印象に残っているんですよね。あと、「暑い日にアスファルトから出ているモヤッとしてるヤツって何て言うんだろう?」と調べて見つけた〈輻射熱〉という言葉を歌詞に入れたり。

——なるほど。詩羽さんも原作を読んだそうですけど、どんな印象をお持ちですか?

詩羽:私、マンガが大好きでいろんなジャンルの作品を読んでいるんですけど、『九龍ジェネリックロマンス』はとにかく絵がキレイで、読みやすかったです。ミステリーの要素が組み込まれているので、1話1話読みごたえがあって、すごく好きですね。じつは曲がリリースされた後に一気読みしたんですけど、そのときに初めて「『サマータイムゴースト』、めっちゃいい曲だな」と思って。

ケンモチ:あとからね(笑)。

詩羽:レコーディングのときは原作を読んでいなかったので、今思うと、あまり歌詞の意味とかもわかってなかったなって(笑)。この曲の歌詞からは原作へのリスペクトをすごく感じるし、『九龍ジェネリックロマンス』のことを知らない方もシンプルに楽しめるだろうなと。

ケンモチ:よかったです(笑)。

——ボーカルのレコーディングはどうでした?

詩羽:難しかったです。自分では作らない感覚の音階だったし、それを理解するまでに少し時間を使いましたね。

——これまでの楽曲とはメロディのテイストが違いますよね。

ケンモチ:そうですね。コードのうえで口ずさめるようなメロディは歌いやすいと思うんですけど、この曲はそういう作り方ではなくて。最近のボカロPさんの楽曲を聴くと、歌のメロディをおそらく鍵盤で作っていることが多いと思うんですよ。人の口から自然に出てこないようなメロディで、今のヒット曲は作られているというか。「サマータイムゴースト」はそれを自分なりに解釈して、ちょっとメカニカルで不思議な旋律にしているんですよね。

——詩羽さんが「難しい」と感じたのは、それが理由なんですね。

ケンモチ:今まであまり使っていなかった雰囲気のメロディなので、歌うのは難しいかもなと思っていて。でも、しっかり練習してきてくれて、レコーディングも思った以上にスムーズで。「この旋律をすんなり歌えるんだ」という驚きがありました。

詩羽:自分のなかで「こうかな」と思った感じで歌っただけなんですけどね(笑)。

水曜日のカンパネラ『サマータイムゴースト』

——6月からはアジア&ヨーロッパツアー『SUMMER TIME GHOST』がスタート。詩羽さん加入後、初の海外ツアーですね。

ケンモチ:はい。これまでお会いできなかった人たちにどんなふうに自分たちの音楽を届けられるのか、どんな反応が返ってくるのか。自分としてもすごく楽しみです。

詩羽:私としては、日本とか海外とかはあんまり関係なくて。どんな会場であっても「歌ってる時間が楽しい」というのは変わらない。なので同じように楽しみです。

——今後、水曜日のカンパネラとして実現したいことは?

詩羽:ファンの皆さんが求めてくださっていることに応えたい、というのはずっと思っていますね。メンバーやチームのみんながやりたいこともあるし、前に立って歌う、表現するというのが私の役割なので。個人的にはソロ活動……バンドも楽しく続けていきたいなと思っています。俳優やラジオもそうですけど、やりたいことはかなりできていて。ずっとやりたいと思っていて実現できていないのは声優の仕事ですね。

——今回はJASRACとのコラボレーション企画ということで、最後に著作権に関する質問もお聞きしたくて。お二人が著作権を初めて意識したのはいつ頃ですか?

ケンモチ:もともと僕は個人でインスト音楽を作るところからキャリアをスタートしていて。自分で作ったCDを『デザインフェスタ』などのイベントで販売して、「1枚売れるといくら」というだけだったんですよ。著作権を初めて意識したのは、水曜日のカンパネラを始めてからですね。初めてもらった印税の金額を見たときは「あんなに頑張ってこれだけかぁ」と思いましたけど(笑)、その後ヒット曲にも恵まれて、少しずつ状況が変わっていって。今はCDが売れる時代ではないですけど、テレビやラジオ、有線やSNSなどいろんなところで楽曲を使ってもらえるチャンスがあるし、使用料という形で徴収してもらえる、権利が守られているのはありがたいなと思っています。

詩羽:私は何もわからないままやってますね……勉強します(笑)。

■水曜日のカンパネラ
2013年からコムアイを主演歌唱とするユニットとして始動。
メンバーはコムアイ(主演)、ケンモチヒデフミ(音楽)、Dir.F(その他)の3人だが、表に出るのは主演のコムアイのみとなっていた。
2021年9月6日、コムアイが脱退、二代目として主演/歌唱担当に詩羽(うたは)が加入となり新体制での活動をスタートさせる。
2022年2月にリリースした「エジソン」のMVが解禁後、SNSを中心に話題となり再生回数は6,500万回、ストリーミングの累積再生回数は1億回を突破。
2024年3月には詩羽体制になって初めて日本武道館での単独公演~METEOR SHOWER~を成功させた。2025年4月にはTVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』のOP主題歌「サマータイムゴースト」をリリース。

・水曜日のカンパネラ Official Site:http://www.wed-camp.com/
・水曜日のカンパネラ YouTube:https://www.youtube.com/user/wedcamp
・水曜日のカンパネラ X:https://x.com/wed_camp
・水曜日のカンパネラ・詩羽 Instagram:https://www.instagram.com/utaha.89/
・水曜日のカンパネラ Facebook:https://www.facebook.com/WednesdayCampanella/
・水曜日のカンパネラ TikTok:https://www.tiktok.com/@wed_camp

■一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC / Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers)

1939年、音楽クリエイターたちが集結し、JASRACを創設。
以降、JASRACは音楽クリエイターの権利を守り、その挑戦を支えてきました。
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