『ラブライブ!』Liella!、リバイバルライブに宿る意義 声なき日々を掬い上げる“みんなの夢が叶う場所”に
2025年4月20日、ライブの熱も冷めないまま発表された『Liella! First Generation LoveLive! ~Wonderful Starlines~』の特報は、幸福感に溢れる宮城・セキスイハイムスーパーアリーナを熱狂の渦に包み込んだ。『ラブライブ!シリーズ』初となる、過去ライブのリバイバル。ただ、その熱狂は決して「過去のライブの再演がある」という事実だけから生まれたものではないだろう。特に、コロナ禍に生まれたLiella!にとって、1stライブ、2ndライブを再構成したライブをすることは大きな意味を持つ。
リバイバルライブそのものは、歴史あるアーティストにとっては珍しいことではなく、周年など節目となる年に行われる傾向がある。逆に言えば、リバイバルを行うこと自体が、Liella!が振り返るに値する歴史を築き、ひとつの節目を迎えた証とも考えられる。こと“今を生きる”スクールアイドルたちにとって、過去を振り返る行為は、ひとつの到達点に至らなければできないことだろう。Liella!1期生の卒業までを描いたアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』(NHK Eテレ)3期も完結、そしてアニメ3期を背負ったライブツアー『ラブライブ!スーパースター!! Liella! 6th LoveLive! Tour ~Let's be ONE~』も6月14日には千秋楽を迎える。まさに過去と向き合うには最適なタイミングだろう。だが、このライブはただ過去を振り返るだけの“焼き直しライブ”ではないはずだ。
告知映像にもある通り、Liella!1期生の5人体制だった当時はコロナ禍の影響もあり、リリースイベントに限っては無観客、1stライブから5人体制最後のライブとなった2ndライブ大阪公演まで、有観客ではありながらも一貫して声援なしで公演が開催された。そんな状況下にあっても、彼女たちのパフォーマンスが素晴らしかったこと、クラップとペンライトだけでも伝わるほどファンの熱量が高かったことは言うまでもないが、やはり声で想いを届けられないことに歯痒さを感じた人も多いはずだ。そのため、声出しが解禁された3rdライブ埼玉公演での声援、そして2期生から粋な形で託された1期生のコール&レスポンスは、特別な思い出になっているだろう。
それから2年、声のない思い出と向き合いながら、Liella!はリバイバルライブに臨む。言ってしまえば、今回のリバイバルは単なる再演ではなく、ある種ネガティブな過去と向き合う挑戦でもあるのだが、そこに過去への悲観は一切感じられない。むしろ、声を聞けなかった過去すら、「今なら声援ありのライブができるよ!」と未来の楽しみへ反映させてしまう姿勢は実にLiella!らしい。澁谷かのんが、かつて歌えなかった場所で「私を叶える物語」を紡いだように、心身ともに成長した今だからこそ拾い上げられる過去もあるのだ。
「過去を振り返るまでに至った」と先述したが、それは決して終わりを迎えるという意味ではない。むしろ、過去すら抱えて「再び新しい一歩を踏み出す」というLiella!の決意の表れだ。声援がないまま、5人体制から9人体制への一歩を踏み出した大阪城ホールが、今回のツアーの始まりの場所として組み込まれていることも、その意思を感じさせるのではないだろうか。