f5ve、新アルバムが海外で話題に クィアポップとの親和性を持ちつつ独自に打ち出す“女性らしさ”の視座

f5veが面白い。面白いうえに、海外でどんどん中毒者を生んでいる。NMEは楽曲「Underground」を2024年のベストソング50に選出し、グループを2025年注目の新進アーティストとして紹介した(※1)。もちろんこの躍進の前提には、BloodPop®がエグゼクティブプロデューサーを務めているという事実がある。グライムスやレディー・ガガらの楽曲を手がけてきた彼は、明確にグローバルポップの文脈に属するプロデューサーだ。そんな人物が日本のガールズグループに関与すること自体、異例の出来事である。結果として、f5veは最初からグローバル基準の耳で聴かれることを前提にした音楽を鳴らしている。制作陣にはA.G.クックやハドソン・モホークといった名前も並び、YouTubeのコメント欄には各国の言語が飛び交っている。
ただ、f5veの人気が海外で広がっている理由はそれだけではない。本稿では、f5veがなぜこれほどまでに熱狂的なファンに支持されているのか、読み解いてみたい。
まずは何よりも、クィアフレンドリーな美学とポーズが挙げられよう。メンバーは性的指向やジェンダー・アイデンティティについて明言しているわけではないが、グループの表現は多様な感性に開かれているように思う。ミュージックビデオやアートワークではY2Kファッションやアンドロイド風のメイク、過剰な装飾が特徴的で、ジェンダー表現を誇張しアイロニカルに再構築するようなキャンプ的アプローチを感じる。また、サウンドもハイパーポップやエレクトロの要素を取り入れることでクィアポップ文脈との親和性を感じさせる音楽性を持ち、たとえばチャーリーxcxやキム・ペトラスといったアーティストの文脈と響き合う部分が多い。さらには本人たちがフィールする日本のカルチャーを組み合わせることによって、独自の世界観を形成してもいる。
そのような表現は、クィアの美学や視点に親しみをもつ人々の間で強く響き、共鳴を生み出している。今年NYで開催されるクィアとエレクトロポップの交差点としてのイベント『LadyLand Festival』への出演が決まったのは、象徴的なニュースだろう。過去にはキム・ペトラスやソフィー、ティナーシェ、Slayyyterといった面々が出演してきたフェスに呼ばれたというのは、単なる“かわいいアジア人”として消費されるのではなく、彼女たちが纏うスタイルや態度そのものが、規範的なジェンダー観への揺さぶりとして受け止められていることが分かる。つまり、このグループは、カルチャーの中での意志的な選択として迎えられているように思う。






















