『ポラポリポスポ』世界初の“リアルタイムCGバンドライブ”への挑戦 徳永暁人×濱田織人×福田未和 特別鼎談

『ポラポリポスポ』世界初への挑戦

 アイドルのダンスやバンドのライブステージなど、キャラクターIPにおいてCGを駆使した演出の存在感が増すとともに、表現自体もさらに磨き上げられ融合を果たしている。そんな中、モーションキャプチャーしたデータを修正することなく使う“ゼロエディット”を起用したキャラクターバンドプロジェクト『ポラポリポスポ』が、世界初のリアルタイムCGバンドライブに向け、大きなステップアップを遂げようとしている。ライブに向けて次々とドロップされる新曲MVの作編曲を担当するのは、B'zや大黒摩季など数々のプロジェクトに参加するベーシスト・徳永暁人だ。本プロジェクトの音楽プロデューサーの濱田織人、そしてこのIPの生みの親である福田未和プロデューサーに熱量高く語っていただいた。(日詰明嘉)

次世代の“リアル”に徹底的にこだわったプロジェクト

――先日掲載された『ポラポリポスポ』公式サイトのインフォメーションページ「準備期間中と活動再開についてのお話」(※1)の文章を書かれたのは福田プロデューサーですか?

福田未和(以下、福田):はい。どうしてわかったんですか!?

――一般的な告知文章ではあまり目にしないほど熱い筆致だったので、これが書けるのは福田さんだけだろうなと読みながら思っていました。

福田:10カ月ぶりに活動再開するところだったので、ちょっと熱量込めて書いてしまいました(笑)。

「準備期間中と活動再開についてのお話」
「準備期間中と活動再開についてのお話」

――そんな告知文章ひとつにも、中の人の熱さが表れるプロジェクトが『ポラポリポスポ』なんですよね。あらためて、このプロジェクトの概要を教えていただけますか?

福田:『ポラポリポスポ』はキャラクターたちの物語と音楽、パフォーマンスの3つを通じて表現を極めるプロジェクトです。一番のこだわりは、とにかくバンドをリアルに描くこと。そのために、このようなモーションキャプチャー(以下、キャプチャー)スタジオを使い、キャラクターたちにリアリティを反映できるよう、音とパフォーマンスで互いに技術を高め合いながら映像制作を進めています。

スタジオの様子
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スタジオの様子
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――そうしたリアリティ志向を念頭に技術者や音楽スタッフを集められていったんですね。『ポラポリポスポ』の音楽プロデューサーである濱田さんはこのプロジェクトの概要を聞いた時、最初はどのような印象を抱きましたか?

濱田織人(以下、濱田):今まで聞いたことがないプロジェクトでしたので、とにかくビックリしましたね(笑)。でも、「もしかしたら化けるかも?」という感じはしました。というのも、福田さんは最初から開発最中の映像や技術的な裏側など、すべてを見せてくれたんです。それを見た時に、このプロジェクトには技術的な側面と、音楽・キャラクターIP的な側面の境界が溶けていくような気がしました。これまでそれぞれの専門家が探求してきたことが、このキャプチャースタジオで交わるというか、互いに引き上げられていくプロジェクトになれるのではないか、と。当初は自分でやろうと思っていたのですが、今後の技術の革新や音楽的な進化を考えると、自分で抱え込まない方がもっといろんな人に届くプロジェクトになるかもしれないと思い、音楽業界の先輩であるベーシストの徳永暁人さんにお声掛けをした次第です。

徳永暁人(撮影=三橋優美子)
徳永暁人

徳永暁人(撮影=三橋優美子)

――徳永さんに白羽の矢を立てたのはどんな理由から?

濱田:まず、こうした個性的なプロジェクトを面白がってくれそうな方であること。そしてキャプチャーをする以上、プレイヤーとしての技術が確かであること。徳永さんとはその少し前に別件でお会いして、今後の活動のお話を聞いたタイミングだったんです。そうした経緯でご連絡をして、相談に乗っていただいたという形です。

徳永暁人(以下、徳永):もう、この2人のプレゼンが熱くて(笑)。それが第一印象でしたね。いざキャプチャーの話になると、完全に次の時代のエンタメを目指しているということが伝わってきました。そのくらいの衝撃だったので、二つ返事で「ぜひとも引き受けさせてください」と、申し上げました。その段階では“ゼロエディットモーションキャプチャー”は、まだ開発中だったのですが、だからこそワクワクしますよね。こんな面白い技術の開発の最中から自分が関われるわけですから。

福田:徳永さんは作中バンドの1つ、WAKAZOのMVでモーションアクターとして実際に弾いていただいているんですが、そこでこの技術がどこまで徳永さんの指に追いつけるかの検証もしています。

濱田:そこもよかったですよね。技術者側に返すフィードバックも、1人で考えるよりは2人で意見を出し合ったほうが、より深まりますから。徳永さんとは日々話し合ってやりとりをしています。

濱田織人(撮影=三橋優美子)
濱田織人
福田未和(撮影=三橋優美子)
福田未和

「音楽に助けられた人たちが集まっている」プロジェクトから生まれる新曲

CGバンド【WAKAZO】ミュージックアニメ『コイノヤマイ』 歌唱(CV)武内駿輔・律可

濱田:1曲目の「コイノヤマイ」(WAKAZO)のMVをぜひともご覧ください。キャプチャー技術者VS徳永みたいになってますから(笑)。

徳永:僕もソロのところでライトハンドタッピングなど、あえてテクニカルなことをして、キャプチャーがどこまでついてこられるか試してみたんです。ドラムもスティックにセンサーが付いていて、高速フィルをかましているんですけど、どちらも完璧にキャプチャーが取れていましたね。従来とは別次元だと感じました。

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――これらはいわゆる当て振り用の楽器ではなく、シールドを繋げばそのまま録音ができる仕様になっていますが、これほどの完成度であることもプレイには影響しますか?

濱田:もちろんです。気持ちの面で非常に大きいですし、撮影中の動きにも表れると思います。モニターでキャラクターが動いてる様をチェックしながら演奏するのですが、2テイク撮るだけでアクターがそのキャラクターっぽくなっていくんです。僕は全体を見て、データもアクターもチェックするのですが、動きに注目するようになるとキャラクターとアクターが融合しているように見える瞬間があって、それは面白い感覚でしたね。

――『ポラポリポスポ』では、曲によってキャプチャーのアクター=ミュージシャンを替えていますが、それが意味するところは何でしょうか?

濱田:バンドって、やっぱり成長したり変化したりするものなんです。それをキャラクターIP上で最も簡潔に表現するための1つが、“中の人”を替えることだったんです。

福田:その曲のどこが魅力で何を表現したいのかによって、お願いするミュージシャンの方々を適宜替えていき、バンド表現を豊かにしていくのが狙いです。たとえばWAKAZOの1曲目の「コイノヤマイ」は、ベースを弾いてるSO(アクター:徳永)というキャラクターがメインボーカルを務めていたのですが、今回の新曲ではギタリストのKYOSUKがギターボーカルとしてメインで歌っているので、新曲MVではご自身の音楽活動でもギターボーカルを務められているヒダカトオル(THE STARBEMS/GALLOW/作詞・作曲・編曲家/音楽プロデューサー)さんにお願いをしました。

濱田:音楽のいいところって、ミュージシャン同士のケミストリーにあると思うんです。徳永さんであれば、ミュージシャン仲間も大勢いらっしゃるから、新曲のアクターも希望通りに組むことができる。でも、そこの人選をあえてこちらに任せてくれたので、僕らとしてもせっかくだから驚かせたくて、徳永さんはこれまで組んだことがない意外な方を呼んでみました。もちろん楽曲には意志が詰まっていますので、それをしっかりと受け止めてくれそうな方を何人か挙げて、ヒダカさんと柳原和也(Dr)さんに決まりました。

徳永暁人(撮影=三橋優美子)
徳永暁人(撮影=三橋優美子)
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徳永暁人
徳永暁人
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徳永暁人
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徳永暁人
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ヒダカトオル(撮影=三橋優美子)
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ヒダカトオル
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柳原和也(撮影=三橋優美子)
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柳原和也
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柳原和也
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――音源のレコーディングはすでに終えられたそうですが、いかがでしたか?

徳永:もうバッチリでしたね。バン、と音を出した瞬間に「ハマった!」と思いました。お二人の音楽も当然聴いていたのである程度は想定していましたが、やっぱり合わせるとそれ以上のケミストリーが生まれるんです。それが音楽の面白いところなんですよね。

福田:WAKAZOのキャラクターの範囲を理解した上で、絶妙な感じに収めてくれるプレイが素晴らしかったですね。

――曲自体は徳永さんが書かれてアレンジまでされていますが、作中に表れるWAKAZOらしさはどのようにインプットされていますか?

徳永:そのあたりは、表に出ていない資料を福田さんが用意してくれるので、そこからイメージを膨らませて書いています。これが厚さ数cmもあるような代物で(笑)。

福田:一人ひとりのキャラクターの人生を紹介するような資料を、全8人分作りました(笑)。

徳永:そのキャラクターの誰もが完璧な人間ではなく、どこかが足りていない奴らなんです。それが何なのかはまだ表現されてなくて、これから小出しにしていく形です。別にバンドなんかやらなくても生きていけるのに、それでも音楽をやりたいのはなぜか。「何でバンドなんかやってるの?」という想いを(濱田)織人くんはもちろん、福田さんもすごくわかってくれていて。このプロジェクトの人たちはみんな音楽に助けられた人たちが集まっているんだろうなって気がしています。僕としてもそこを表現していきたいですね。

――新曲のイメージについて教えていただけますか?

徳永:1つはパンクロックのアップテンポな楽曲ですね。この音楽は決して完璧ではないというか……完璧であってはならないというか。別に彼らにそんなものを求めていないし、何かが溢れていたり、歪んでる思い、届かない思いみたいなものが高速ビートに乗っかっている曲です。もう1つは、曲調もエモ系の洋楽でミディアムテンポな楽曲。フェスでペンライトを振りながら恋人同士が肩を組んで横揺れする、バラードではないけどそういったイメージの曲ですね。僕が曲を書くときはいつも映像を想像しているんです。MVであったりライブに来てくれた人の表情であったりを思い浮かべて、BPMを1つ単位で調整しテンポを作っていきます。この曲もそんなふうにして作りました。

リハーサルの様子
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