高倉健がいたからこそ生まれた名優・草彅剛 “生き方”を滲ませた『新幹線大爆破』で向き合う演技

 「生き方が大事」。その言葉を胸に秘める草彅だからこそ、この『新幹線大爆破』ではパニックになる乗客たちに最後まで真摯に対応しようと努める車掌・高市和也の生き様を表現できたようにも思う。本物の新幹線で、東京〜青森間を7往復しながらの撮影。ド迫力の映像を見れば、どれほど過酷な現場であったか容易に想像できる。なかには、長いトンネルに入ってしまう前に撮らなければと、現場がピリついたこともあったそうだ。少々殺気立った空気が漂う中でリテイクを決意した樋口監督。そのときの様子を、草彅が「みんな焦ってたからね」と和やかに捉えていたことが窺える。そして再度、撮り直したシーンでは「天使のような顔」と言わずにはいられない穏やかな表情を浮かべたという。その気持ちの整え方は、車掌として車内に立つ高市と、俳優として現場に立つ草彅が一致したような裏話だ。

乗降オーライ! - はやぶさ60号(5060B)出発進行 | 新幹線大爆破 | Netflix Japan

 また、配信直前に行われた『発車記念イベント』では、若手車掌・藤井役の細田佳央太が現場での草彅について「どんなに時間がかかっても、どんなに体力的にしんどくても、辛い顔を一切見せない方ですし。常に明るく現場のみなさんを包んでくれる優しさを持たれている方なので。ピリピリすることないのかなって逆に気になった」とコメントしていたことも印象的だった(※3)。加えて、その言葉に対して草彅が「私、優しいマンなんで! 自分が優しくしたことは回り回って自分に返ってくるかなっていうマインドでやってる」という人生格言を残していたことも。こうして、また草彅が見せた“生き方”を見て育つ若者が、次世代を担っていくのかもしれないなどと思いを馳せてしまった。

 1975年版があったからこそ生まれたリブート版の物語。そして、高倉健がいたからこそ生まれた草彅剛という名優。ものごとにはすべて“因果”があることを、約50年の時を経て描かれた『新幹線大爆破』を観ながら痛感した。女性運転士・松本千花(のん)の活躍や政府と対立するほど強まったSNSの持つ力など、1975年版には描かれなかった未来の日本を私たちは生きている。そして、この作品を見ている今の私たちの生き方が次の50年後の日本にもつながっている。そんなことを1975年版とリブート版が同時に楽しめるNetflixの画面を眺めながら考えさせられたのも、きっと草彅が高倉の“生き方”を滲ませる演技を継承した証なのだろう。

※1:https://www.crank-in.net/interview/165332/1
※2:https://encount.press/archives/622952/
※3:https://x.com/NetflixJP/status/1914243981812339138

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