アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(4)TVアニメ/劇場版『AIR』“国歌”「鳥の詩」、今なお響き続ける普遍の名曲
森口博子、如月千早、Roselia……「鳥の詩」が歌い継がれる“方向性”
「鳥の詩」は現在も多くの人に愛され、様々なアーティストにカバーされて歌い継がれている。ただ、その方向性は大きく2つに分かれているのではないかと考える。
1つは“アニソン史に残る名曲”としての受容のされ方である。これを象徴するのが、2024年8月にリリースされた森口博子のアニソンカバーアルバム『ANISON COVERS 2』で「鳥の詩」が選曲されたことだ。国民的な知名度を持つ歌手であり、アニソンシンガーとしても長年にわたって活躍している森口のカバーアルバムで、数々の名曲とともに「鳥の詩」が選ばれたわけだ。
もちろん、森口の歌声が楽曲に合っていたということも選曲理由にはあるだろう。ただ、今や「想い出がいっぱい」など一般に知られた名曲と肩を並べても違和感がない域にまで「鳥の詩」が達しているとも言える。
そしてもう1つが、ゲームでのカバーやVTuber/バーチャルシンガーによる歌ってみた動画での需要だ。ゲームでは『THE IDOLM@STER』シリーズの如月千早や、『BanG Dream!』に登場するガールズバンド・Roseliaがカバー。VTuberでは富士葵によるカバーが有名だが、それ以外にも多くのVTuberが歌ってみた動画の投稿を行ったりライブでの歌唱をしている。
そんな中で注目したいのが、にじさんじの新人ライバー・珠乃井ナナによる「夏影 ~Cornwall summer mix~」の歌ってみた動画である。「鳥の詩」をカバーする者は数多いが、「夏影」の歌ってみた動画は珍しい。歌声も非常にマッチしていて、原曲へのリスペクトが強く感じられる秀逸なカバーとなっている。今後、「鳥の詩」以外にも名曲の多い『AIR』の楽曲が、もっと多くカバーされることを期待したい。
この記事の掲載日は2025年3月31日――“京アニ版”TVアニメ最終回「総集編」のEDで「鳥の詩」が流れた2005年3月31日から、ちょうど20年という節目となる。放送当時の熱狂をリアルタイムで知らない世代も増えているが、そんな層にも『AIR』と「鳥の詩」、そしてその楽曲群は深く刺さっている。きっとこれからも多くの人に「鳥の詩」は歌い継がれ、“国歌”として愛され続けることだろう。
※1:https://news.denfaminicogamer.jp/interview/231021a/2
※2:https://animeanime.jp/article/2018/05/28/37910.html