『ap bank fes '25』はなぜ東京ドームだったのか 20周年を迎えた歴史と縁、Bank Band「カラ」へと帰結するメッセージ

 2日目のBand ActではSaucy Dogから、マカロニえんぴつへとバトンが渡される。マカロニえんぴつの「なんでもないよ、」では合唱が起こるほどの温かな空気とともに、バンドとしては初の東京ドームのステージを終えた。筆者が驚いたのは、Saucy Dog。2日目のトップバッターという、重要な役目を任された彼らは1曲目の「いつか」でしっかりと会場の心を掴んでいたのだ。言ってしまえば、東京ドームのスタンド席にいると残酷なまでに人の出入り、つまりは盛り上がりが目に入ってしまうのだが、「いつか」「シンデレラボーイ」の流れは、会場全体がSaucy Dogに魅了されているような感覚を覚えた。

 「Bank Band with Great Artists」の後半ブロックでは、櫻井和寿を入れたBank Bandとの夢のステージが繰り広げられていく。櫻井とはデビューが近い“同級生”でありながら、意外にも一緒に歌う機会がなかったという槇原敬之が登場。櫻井が歌うとロックになる、と2Aのパートを預けた「僕が一番欲しかったもの」では、会場が沸き立つ。「遠く遠く」は、東京ドームという場所だからこそ、故郷を思い、同時に〈この街〉を見つめ直すことができる、フェスのテーマに合った見事な選曲だと感じた。

 『ap bank fes '25』の出演者発表で最も大きな反響があったのは、間違いなくB’zだった。稲葉浩志が松本の肩を掴み、2人仲良く登場すると、ライブでは初披露となる最新曲「イルミネーション」で口火を切る。槇原が「どんなときも。」でコールアンドレスポンスをしていたことを意識しながら、稲葉はマイクを通さずにドームという広さでも地声を響かせていく。少なくとも1階3塁側にある記者席には稲葉のシャウトが届いていた。そこから「Calling」、ワンマンさながらの勢いでドーム全体が飛び上がった「ultra soul」と続く。ハッとしたのは、「Calling」もまたフェスのテーマと共鳴する選曲になっていること。〈街の色も 変わりつづける中で なんだか今もいっしょにいる〉という歌詞が顕著だろうか。

B’z (C)VERMILLION

 2日目にはSuperfly、JUJU、宮本浩次。「愛をこめて花束を」「Alright!!」といった代表曲で優しくて、それでいてパワフルな歌声を轟かせていくSuperflyの越智志帆は、自宅で無農薬野菜を育てているという自身の取り組みをMCで話していた。『ap bank fes』の原点を思い出させてくれる大切な行動理念。東京ドームに場所を移しても、『ap bank fes』はフードエリアやオフィシャルグッズなどで環境に配慮した取り組み、食を通じた能登の復興支援活動も行われている。

 久々の『ap bank fes』への登場となったJUJUは、「奇跡を望むなら...」「やさしさで溢れるように」といった楽曲のほかに、Mr.Children「くるみ」をカバー。JUJUが2020年にリリースしたカバーアルバム『Request』に収録された楽曲で、“大きめの寝言”としてリクエストした櫻井とのデュエットが実現した形だ。櫻井も称賛しているJUJU独自の世界観が素晴らしく、大サビでは2人の極上のハーモニーがドームにこだました。

JUJU

 Great Artistsとしてはトリを務めた宮本は、「今宵の月のように」「悲しみの果て」「ハレルヤ」といったエレファントカシマシ/ソロとしての楽曲で端から端までステージを練り歩きながら、観る者に元気と勇気を与えていく。何度も頬を寄せ一つのマイクで歌っていた櫻井と、ラストは宮本浩次 × 櫻井和寿 organized by ap bankの「東京協奏曲」。魂がぶつかり合うような大サビに加え、〈東京は 夢も 恋も 痛みも 愛も ポジもネガも 歌に変える〉という歌詞が東京という街で歌うことの意味を伝えていた。

関連記事