LUNA SEAが開いた新しい扉と確かな光 『ERA TO ERA』グランドファイナル、東京ドーム公演を完全レポート

 昨年から続いていたLUNA SEAのツアー『ERA TO ERA』のグランドファイナルとなった2月23日の東京ドーム。このステージに彼らが立ったのは2010年の『LUNACY 黒服限定GIG 〜the Holy Night〜』以来だが、35周年記念であるこのツアーには35年分の彼らの思いが込められていることを感じさせるライヴだった。

 明るい場内に流れていたThe Cure「Torture」が途切れて暗転すると、2000年12月27日の“終幕”公演の映像が流れ、その時の最後のMCが続いた。「ある意味、ここから始まることもいっぱいあるから。みんな目を凝らして、自分の本当に信じるものを追いかけてください」――。RYUICHI(Vo)のその言葉通り、LUNA SEAの5人は自分が信じるものを追いかけて、ここまできたのだ。ツアータイトル『35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE-LUNATIC TOKYO 2025-黒服限定GIG-』の映像に続いて浮かび上がった「覚悟の夜」「その光を掴む」という文字に合わせ、RYUICHIの声が響いた。水を打ったように静まり返った場内にベートーヴェンの「月光」が流れ、ミラーボールが輝くなか、5人がセンターステージに登場。花道を歩きメインステージへ集まると、円陣を組んで、手を繋いで気合いを入れ、ポジションについた彼らからは、GLAYと楽しく盛り上がった前夜とは違った緊張感が感じられた。

RYUICHI(Vo)

 オープニングナンバーは、張りつめた空気のような「LOVELESS」。代表曲のひとつであり”終幕”でも最初に演奏した曲だ。柔らかな歌とハードなビート、SUGIZO(Gt/Violin)がこの曲で弾くトリプルネックギターの音色が響く。真矢(Dr)のシンバルが繋いでアッパーな「G.」へ雪崩れ込み、音霊が炸裂。一気に場内の熱気が上がった。

SUGIZO(Gt/Violin)

 「2025年2月23日、東京ドーム……会いたかったぜ!」RYUICHIが叫んだ。「『TOUR ERA TO ERA -THE FINAL』として、覚悟をもって、この場所を選びました。今夜たとえここで命が尽きようとも……お前たち一人ひとりの顔を覚えて帰るからな!」。その思いをぶつけるように「Déjàvu!」とタイトルコールして曲に入ると、ビジョンには時計の映像が現れて、〈未来・過去・今、人々のドラマ。シナリオはいつもDéjàvu〉という歌詞と呼応した。中盤にはバンドの音を抑え、オーディエンスのシンガロングを促し、さらに「東京ドーム! 歌ってくれ!」という呼びかけを受けてさらに高まる熱気のなか、「DESIRE」に突入。INORAN(Gt)のシャープなギターに乗ってRYUICHIの歌が切なく響く。曲の終わりで「JESUS!」とRYUICHIが告げると、真矢のドラムでハンドクラップが起きた。前夜にGLAYがカバーした曲だけに、オリジネーターとしての気合いを感じさせる演奏だ。

INORAN(Gt)

 「今日はファイナルにふさわしいライヴにしたいと思っています。俺たちにしか作れないグランドファイナルをともに作りましょう」とRYUICHIが呼びかけると、大きな拍手が送られた。「2000年の扉を開いてくれた曲」と紹介した曲は、「gravity」。前夜をともにしたGLAYとは25年前に20世紀を締めくくったわけだが、この曲はLUNA SEAの2000年になって最初のシングルだった。その後の終幕、そして『REBOOT』と、進んできた時間を噛みしめるように歌ったRYUICHIは、終盤をヴォーカリーズでドラマチックに彩った。

J(Ba)

 このあとに続いた「RA-SE-N」は、LUNA SEAならではのディープな世界を描き出した。赤だけの、しかし明るさを抑えた照明で、“赤い闇”とでも言いたくなる空間にドームを染め上げ、アリーナに建つ照明タワーのライトがまさに螺旋を描きながら回る。そんな空間でスリリングな演奏を繰り広げる5人のシルエットが美しい。「VIRGIN MARY」は、SUGIZOのバイオリンソロが響くなか、RYUICHIが静かに花道を進んでいくと、ビジョンには教会の聖堂らしきステンドグラスが浮かび上がった。祈りを捧げるように歌ったRYUICHIがステージに戻ると、ドームは闇に包まれた。

真矢(Dr)

 そんな空気を受け継いで、20分間のインターバルに流れていたのはDead Can Danceの曲。LUNA SEAのライヴSEではお馴染みの80年代ゴシックパンクを代表するバンドの曲が流れるなか、黒服に身を包んだ4万を超えるファンが東京ドームを埋め尽くしている。その壮大さに想いを馳せながらアリーナを見ていると、センターステージでは何かの準備が進んでいた。やがて場内が暗くなりそこにスポットが当たると、真矢がドラムを叩きながらせり上がってきて、大歓声が起こった。ドラムの音と「真矢!」とコールするオーディエンスの応酬が繰り返されて一気に熱気が高まった。

 「お前ら最高にかっこいいぞ!」と真矢が叫んでドラムセットを離れると、会場に流れるリズムトラックの音にベースが重なり、J(Ba)が姿を表した。ステージに戻った真矢をJは両腕を広げて迎え、ふたりは笑顔でハイタッチ、今度は、Jのソロコーナーだ。ダイナミックにベースを響かせながら花道を進み、「もっとこい!」と叫ぶJにオーディエンスが応え、さらに熱量が上がっていく。手を休めたJがマイクを胸に叩きつけ、「東京ドーム! 35年分の思いを込めて、盛り上がっていこうぜ!」と叫ぶと、メインのドラムセットに戻った真矢とのセッションに。男気溢れるリズム隊のプレイに誘われるようにほかのメンバーも登場し、パンキッシュな「IN FUTURE」から第2部が始まった。

 ビジョンには懐かしい映像が流れ、現在と過去の5人がシンクロする。高揚感を加速させていく曲のギターソロパートで、RYUICHIが「SUGIZO!」と名を呼ぶと曲がブレイク、そして4万人のオーディエンスを煽ったSUGIZOのギターで曲が再開する、ライヴならではの展開に熱気がまた高まった。それを落ち着かせるように、RHUICHIが静かに語りかけた。

「最高だね。最高の夜、覚悟の夜。俺たちはきっと選択をしてキャッチした、その未来に行こうとしてる。そして今夜集まってくれた精鋭たちが、この先もともにLUNA SEAを作ってくれる。自分のなかにある理想をしっかりと追い求め、これからも長い旅をともに……」

 あたたかい拍手を受けて、「心から最大の感謝と愛を込めて送ります」と始めた「I for You」。ビジョンには歌詞の文字が踊り、それに押されるように、RYUICHIは歌いながらオーディエンスとの距離を縮めるように前へ進んでいった。コントロールのきいた歌から感情が迸り、この曲への思いが伝わってきた。RYUICHIは、3年前に声帯を痛めて手術を受け、声を戻すためにたいへんな努力をしてきた。このツアーでも心配の声があったが、東京ドームの2日間は不安を感じさせることなく、むしろ今まで以上にボーカリストとして成長した歌と声を聴かせていた。「I for You」は、そんな彼の現在を感じさせる素晴らしい曲になっていた。

 「今夜はきてくれて本当にありがとうございます。親愛なるSLAVE(ファンの呼称)たちへ、最後のピースを届けます」そのRYUICHIの言葉から、ライヴ初披露となった「FAKE」を投下し、いよいよラストスパートへ。レーザーが飛び交い、INORANがドレッドヘアを振ってヘッドバンギングしながらギターを鳴らした「FAKE」、続く「BELIEVE」では中盤をRYUICHIがINORANの鳴らすギターだけをバックに歌うとオーディエンスの歌声が重なり、テンポアップした後半から「ROSIER」へと進めば東京ドームがひとつに溶けて熱いカオスに。RYUICHIとオーディエンスの息ぴったりのシンガロングからJのリリックパートへと小気味よく進み、SUGIZOとINORANのギターがカラフルに絡み合った。RYUICHIが「スタンド! アリーナ! 東京ドーム! お前ら全員で飛ばしていくぞ! いけるか!」と叫び、Jのベースが唸って「HURT」へ。腰の据わったビートにサイケデリックなギターが重なり、RYUICHIの歌がドラマチックに響いていった。

「最後に35周年のファイナルにふさわしい、『黒服』を象徴するようなこの曲を送りたいと思います」

 告げられた曲は、「NIGHTMARE」。ドレスコードが“黒”の夜にふさわしいと5人が選んだのも納得の、Jの歪んだベースから始まり、SUGIZOのサイケデリックなリードギターが彩る、美しきダークサイドナンバーだ。やがて場内はほぼ暗闇となり、視界にうまく映らない5人の代わりのように5本の光がステージから天井に向けて立ちのぼった。現実味が薄れていくなかでビジョンに映るメンバーの姿だけがリアルなものに思える、不思議な時間だった。「NIGHTMARE」はインディーズ時代のデモテープに収録されていた曲で、正式にレコーディングされていないが、最後を飾ったレアナンバーに大きな拍手が送られた。

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