Berryz工房、無期限活動停止から10年 それぞれの道を歩むメンバーの現在地、今こそ聴いてほしい楽曲5選
今あらためて聴いてほしいBerryz工房楽曲5選
今年1月、Berryz工房や℃-ute、メロン記念日らのハロプロ楽曲のサブスクリプション配信が解禁されて話題を集めた。Berryz工房の音楽へのアクセスがより身近になり、本稿では、数ある楽曲の中からあらためて聴いてほしいBerryz工房の作品をいくつか紹介していこう。なお、サブスク解禁によりカップリング曲やアルバム収録曲が聴きやすくなったこともあり、本稿ではそれらの楽曲を多めに選んだ。
「フラれパターン」(2008年)
作詞・作曲:つんく 編曲:山崎淳
2008年のシングル『MADAYADE』のカップリング曲。〈愛したから寂しいの〉というフレーズを4回繰り返す構成が特徴的だ。つんく♂メソッドのひとつである、昭和の歌謡曲にオマージュを捧げた“ネオ歌謡曲”とも言うべき歌詞とサウンドになっている。そもそも、シングルの表題曲「MADAYADE」も、MV含めて昭和パロディ的な楽曲であった。決して派手な曲ではないが、こういった楽曲でしか感じることのできない魅力があるものだ。
「ちょっとさみしいな」(2010年)
作詞・作曲:つんく 編曲:藤澤慶昌
TVアニメ『イナズマイレブン』(テレビ東京系)のEDテーマだった2010年のシングル曲「シャイニング パワー」。そのカップリング曲が本楽曲だ。藤澤慶昌編曲によるヒップホップソウル調なサウンドが聴き心地よい。このサウンドは2005年のアルバム『第②成長記』収録「お昼の休憩時間。」や、2010年のシングル曲「友達は友達なんだ!」にも繋がるものだ。
歌割りの側面から見ると、2番の〈あなたはお疲れ顔〉という箇所での徳永の歌唱が味わい深い。「Berryz工房のカップリング曲には名曲が多い」というのは昔からファンの間で定説のように言われていて、特に「徳永千奈美が目立っている曲は良曲」とも囁かれることもしばしば。この曲のほかには2012年のシングル『Be 元気<成せば成るっ!>』カップリング曲「もう、子供じゃない私なのに…」冒頭の〈悔しいな〉という徳永の歌い出しなどに顕著だ。
「Mythology ~愛のアルバム~」(2012年)
作詞・作曲:つんく 編曲:松井寛
2012年の『愛のアルバム⑧』収録のタイトルチューンとも言える1曲。東京女子流のサウンドワークなどを手がける松井寛がBerryz工房楽曲に唯一参加したのがこの曲である。松井らしいフィリーソウル的な音感が特徴。ハロプロ内ではモーニング娘。の2007年のシングル「笑顔YESヌード」や、近年ではJuice=Juiceの2022年のアルバム『terzo』収録「ノクチルカ」ともリンクするサウンドだろう。
特に、1番Bメロの〈ほんのちょっと 勇気だして〉のあとの〈I LOVE YOU〉と菅谷が歌う箇所は、楽曲の“良い表情”を引き出している。菅谷が歌唱面で一皮剥けたのは2010年のシングル『雄叫びボーイ WAO!』からだと筆者は考えているが、以降もさまざま場面で成果を残している。
「サヨナラ ウソつきの私」(2013年)
作詞・作曲:つんく 編曲:平田祥一郎
2013年の両A面シングル『ゴールデン チャイナタウン/サヨナラ ウソつきの私』収録。この頃の後期Berryz工房のシングル曲は、タイポップスのカバーである「cha cha SING」、ゴスロリ的な男装衣装で歌う「ROCKエロティック」、変化球すぎる詞世界の「1億3千万総ダイエット王国」といったクセ強めな曲が目白押しだ。しかしこの曲は、先述した楽曲群のようにわかりやすいセールスポイントは薄く、比較的シンプルな仕上がりのシングル曲と言える。
そこから浮き彫りになってくるのは、メンバーの歌やダンスといったパフォーマンス面での魅力だ。MVを観てもそれは確認できるのだが、よりわかるのはやはりライブ映像。複数ある中でおすすめしたいのは、2013年5月19日に行われた『日比谷野音90周年記念事業 Hello! Project 野音プレミアムLIVE ~外フェス~ supported by Hellosmile』での一幕。この日が本楽曲のライブ初披露だったのにもかかわらず、完成度の高いステージとなっているのだ。同じメンバーでパフォーマンスを日々磨いていったことで到達した高みとも言えるステージだった。
「あなたなしでは生きてゆけない (04-13-15 完熟Completion Ver.)」(2015年)
作詞・作曲:つんく 編曲:AKIRA、原田勝道
Berryz工房のデビューシングル「あなたなしでは生きてゆけない」は、当時ローティーンの集まりだった彼女たちが歌うにはあまりにも大人っぽいR&B調の楽曲だった。そのミスマッチ感が当初はひとつの狙いだったかもしれないが、活動を通して年齢とスキルが成長していくことによって、楽曲の雰囲気に違和感がなくなっていく=“自分たちのものにしていく”という過程そのものが、この曲の魅力でもあった。
2015年の無期限活動停止のタイミングでリリースされたベストアルバム『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』に収録されたこのバージョンでは、2004年、2013年、2015年それぞれの時期にレコーディングされたボーカルが1曲の中に編集されて収められている。それによって楽曲の持つ意味合いが強化されているのだ。
そして、前述の20周年記念ライブのセットリストにもこの曲はもちろん入っており、20年目の“あななし”を聴くことができた。音楽の永続性に感じ入るばかりだ。
※1:https://ameblo.jp/sudou-maasa-blog/entry-11903581436.html