PSYCHIC FEVER、初アメリカツアーで「J-POPの壁」越えられるか? LDH JAPANのグローバル戦略に迫る

PSYCHIC FEVER、アメリカ進出の狙い

クール・ジャパン、J-POPという文脈だけではあまり考えていない

ーーそして2025年早々、新曲「Paradise」がリリースされました。アメリカへのリスペクト、ディスコっぽいサウンドで、前作のヒットも踏襲した隙のない楽曲だと思います。

石井:昨年の春という早い段階で北米ツアーが決まっていたので、アメリカで仕掛けていける楽曲をしっかり準備したいなと。アメリカにチャレンジするというコンセプトのもと、入り口はシティポップ風なところから入り、80年代風のレトロなものをPSYCHIC FEVERなりの新解釈で表現できました。レコーディングが終わったとき、ボーカル陣もラッパー陣もこの「Paradise」でさらにレベルが上がったと感じましたし、本人たちのアメリカへの意気込みも含めて、成長と挑戦ができる楽曲だと思っています。日本のアーティストがこれまでやっていなかったアプローチで、SNSを見ていると、どの国の方も「こういう曲を待っていた」という反応なので、アメリカでしっかり広がってくれたらいいなと。

PSYCHIC FEVER - 'Paradise' Official Music Video

ーーiTunesのワールドチャートでも東南アジアを中心に、各国でかなり上位に食い込んでいます。

石井:東南アジアではこの2年間活動してきたことで、新曲を出せばかなりの注目が集まる状況なので、これを今度はアメリカ、ヨーロッパ、世界中へと広げていきたいですね。これまでと違ったのは、Spotify「New Music Friday」の韓国版に入ったことで、韓国にもかなり広がっているのではないかと。

ーーやはり東南アジアでの人気はすごいですね。

石井:TikTokでも、国別でフォロワー数の1位はフィリピン。インドネシア、カンボジア、アメリカ、ベトナムと続き、6番目に日本、続いてタイという感じです。世界的にはこれだけ広がっていますが、日本での活動量が少ない分、まだ周知されていないところが大きいですね。

ーーさて、あらためてこの「Paradise」を携えての北米ツアーはどんなものになるでしょうか。

石井:アメリカではメディアツアーを行い、公開収録やテレビ出演はしましたが、実はまだお客さんの前でライブをしていません。そのなかで、初めてのツアーでワシントンD.C.、ニューヨーク、ダラス、シアトル、LAとアメリカのキーになるような6都市で公演できるというのはすごいことです。各都市、歴史や文化も違うなかで、それぞれ音楽の受け止められ方も違うし、ファンも違う。「アメリカ」と一括りで考えるのではなく、各都市に合わせたパフォーマンスをしっかりやっていこうと準備をしています。

 ライブの楽曲アレンジや演出に関しては、ブルーノ・マーズチームでバンドマスターをキーボード・ライブアレンジを務めるジョン・フォシットがやってくれていて、めちゃくちゃカッコよく仕上がっています。年末も会ってお話ししていて、これはNYのBillboardのジャーナリストにも言われたことなのですが、「アメリカにおいて、K-POPはあくまでもファンビジネス/アイドルビジネスが軸になっている。J-POPが流行っていると言われるがそれはほぼアニメソングで、J-POPはサブカルチャージャンルだと見られている。そのなかでPSYCHIC FEVERはあくまで楽曲で評価され、アーティストとして見られている」と。その意味で、アメリカの最高峰の舞台で戦うにはもっとレベルを上げていかなければならず、ジョンは「PSYCHIC FEVERのパフォーマンスはGoodだが、アメリカでやるにはGreatでなければならない」と言っていました。ステージで原曲を再現するのではなく、究極的にはブルーノ・マーズのようにフルバンドで、それぞれの会場の雰囲気に合わせたバイブスをどう出せるかが大事なのだと。今回はバンドが入れられないので、元の音源をベースにジョンがアレンジを施し、JIMMY、椋雅と作り込んでいます。特にLA公演はジョンもキーボードとして参加してくれるのでUS TOURの集大成としてすごいものになると期待していますので、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね。現地のファンの方々に楽しんでもらうことは大前提に、やはりアメリカの音楽業界にプレゼンする場でもあると考えて臨みたいと思います。いわば最高峰の「武者修行」ができるのが、アメリカツアーだということです。

「SUMMER SONIC Bangkok 2024」出演時のライブ

ーー北米の音楽シーンについて、市場としての魅力はどう捉えていますか。

石井:やはり大きいですね。日本も金額的な面で言えば世界第2位の音楽市場と言われていますが、北米の方が人口が3倍くらい多いし、マーケットの大きさはニューヨークやLAに行って実感しました。特にニューヨークは音楽メディアの人たちはジャーナリスト志向が強いので、見る目も本当に厳しい。インタビューも英語で答えなければいけませんし、こちらもトレーニング中です。東南アジアでは、第二言語としての英語で対応できていたのですが、第一言語のアメリカでは通用しない部分もあり、鍛えなければいけないところですね。インタビューだけではなく、アーティストやスタッフとメンバーが直接話すことで距離が縮まりますし、理解度も高まるので、コミュニケーションツールとしての英語力は、もっと上げていかなければいけないと考えています。

ーー世界では日本のアニメが爆発的にヒットし、忘れられかけていた「クール・ジャパン」的なカルチャーがまた盛り上がっています。日本のコンテンツビジネスにあらためて注目が集まっていますが、そういう大きな視点で捉えたとき、現在のプロジェクトはどう位置付けられますか。

石井:音楽でいうと、YouTubeもSpotifyも広がっており、いまや国の垣根もないし、タイムラグもない状況です。毎日世界中で大量の楽曲が生まれているなかで、単に「話題のJ-POPです」ということではなく、一曲一曲、誰に対して何を伝えたいのか、ということを考えて届けていくことが重要だと考えています。そこで理解してもらって、共感されたものが広がっていく、ということがアーティストとして大事だとアメリカでも言われています。日本を代表するアーティストになれたら素晴らしいと思いますが、個人的にはクール・ジャパン、J-POPという文脈だけではあまり考えていない、というのが正直なところです。アメリカでも、自分のルーツやアイデンティティがなんなのか、ということが問われるので、自分達が何者であるか、そこは常に意識するようにメンバーにも伝えており、それがたまたま日本発なんですが、自分達は日本から来ているということには誇りを持って臨みたいといつも思っています。

 例えば、ダンス&ボーカルグループが流行していて、「踊ってみた」がバズるから……といったことばかりに頼ると、楽曲や歌詞のよさを伝えるという音楽における本質的な部分が疎かになってしまう部分もあるのではないでしょうか。当然ながら、ダンスはLDHのDNAでもありますが、EXILE ATSUSHIさんのスタンスを考えても、「どういう思いで誰のために歌っているのか」ということを懸命に伝えていましたよね。もちろん、ダンスがバズるグループも、世界を沸かせるアニソンも素晴らしいのですが、PSYCHIC FEVERはせっかく楽曲を評価されるアーティストとしてアメリカのメディアにも今は認識されているので、音楽の本質にフォーカスするグループとして、メインストリームに向けて活動していけたらいいなと思います。

■リリース情報
シングル「Paradise」
2025年1月9日(木)日本時間14時リリース
ストリーミング&ダウンロード
https://lnk.to/psychicfever-paradise

「What's Happenin'」
1月30日(木) 日本時間14時リリース
ストリーミング&ダウンロード
https://lnk.to/psychicfever-whatshappenin

■関連リンク
【YouTube】https://www.youtube.com/c/PSYCHICFEVER
【Instagram】https://www.instagram.com/psyfe_official/
【X(旧Twitter)】
[公式] https://twitter.com/psyfe_official
[メンバー] https://twitter.com/psyfe_member
【TikTok】https://www.tiktok.com/@psyfe_official
【Facebook】https://www.facebook.com/psyfe.official

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる