秋元康プロデュース・MATSURI、シングル首位獲得 『アヴァンチュール中目黒』が映す“昭和歌謡”を紐解く
もとよりカテゴリとして非常に曖昧な“昭和歌謡”だが、やはり根強いファンがいるし、若い世代からも少数ながら繰り返し“発見”され続けてもいる。しかし、こうした“昭和歌謡”に投影されているのはしばしば、ある時代の雰囲気そのものというよりも、実際には“昭和”というざっくりとした区分が呼び込むアナクロニズム、すなわち時代感覚の混乱なのではないだろうか。もっとも、こうしたアナクロニズムこそ、根本的にはポップミュージックに不可欠な要素なのだろうが。
話が宙に浮いてきたので、閑話休題。「アヴァンチュール中目黒」に戻ろう。先述した通り、この曲は、恋の駆け引きを描く点ではムード歌謡的な典型をなぞった部分があるものの、人称の使い方や、そこから感じられる視点の置き方、あるいは口語的な言葉の省略は、あまりムード歌謡的ではないし、“昭和”っぽくもないのだ。これが意図された現代性なのか、秋元の単なる手癖なのか、ちょっと判断がつかない。その狙いについては解釈の余地があるが、快活さのなかに艶っぽさもにじませるメンバーたちの堂に入ったパフォーマンスが、この曲にいきいきとしたオーラを与えているのが最良のポイントだろう。
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