日向坂46が迎える転換期、勝負の一年へ グループが直面する課題、求められる次なる一手を探る
当時、CDセールスが良くも悪くも“横ばい”に近い状態が続いていたのも事実。数字的に決して悪いわけではないが、しかし横ばいというのは、支持数がほとんど変わっていないことを意味している。
これからの日向坂46のポイントは、一人ひとりのメンバーがいかにして輝けるかということ。一期生はグループ卒業後もさまざまなシーンでその活躍を見ることができるほど、タレント揃いだった。実際、グループ在籍中から影山、齊藤京子らはメディアなどからも注目度が高く、卒業後のさらなる飛躍にも驚かされるものがある。現在の二期生も、金村、小坂菜緒、富田鈴花など知名度があるメンバーは数多い。もちろん三期生、四期生も徐々に頭角を現し始めている。
ただグループの大変さは、バラエティ番組などに出られる“打席数”が限られること。新期生が入るたびにメンバーの数はどんどん増えていくので、“競争率”と“倍率”は年々高くなる。大所帯になればなるほど、前に出られないメンバーが増えるのは大規模グループの宿命でもあるだろう。メンバーによっては、グループの外で個性を発揮できる機会は決して数多くないかもしれない。だからこそ、それをどれだけモノにできるか。着実にモノにしていければ、自然とグループの裾野が広がったり、底上げされたりするだろう。そういう意味で金村の「与えられたことをやるだけではない」という指摘は至極納得である。
たとえば三期生は、2018年の乃木坂46、欅坂46、けやき坂46の3グループによる『坂道合同新規メンバー募集オーディション』に合格したメンバーにあたるが、その同期という意味では、乃木坂46の遠藤さくらが2024年末の『紅白』でセンターポジションに抜擢され、櫻坂46も田村保乃、藤吉夏鈴、松田里奈、森田ひかる、守屋麗奈、山﨑天らがグループ内外で目立つ活動を行っている。これらの同期生に負けじと個性を目立たせるためにはやはり、前述した金村の言葉が示しているように個々の動きにおける存在感の際立ちが求められるだろう。
ただそんな中、日向坂46の上村ひなのはバラエティ番組『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(ABEMA)で超一流のお笑い芸人と上手く渡り合い、バラエティセンスを発揮。山口陽世は野球経験を武器に元プロ野球選手のアレックス・ラミレスのYouTubeチャンネルへの出演やプロ野球の試合で始球式を務めるなど、自分にしかない持ち味を見せている。それぞれ着々と活躍の場を広げ、グループにも貢献している印象だ。
四期生に話を広げてみても、演技初経験の11人がメインキャストの映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』(2024年)は彼女たちにとって大きな経験となったはず。メガホンをとったのは映画『鬼畜大宴会』(1998年)や『海炭市叙景』(2010年)などで知られる熊切和嘉監督だ。多数の登場人物の奥底にある人間性をあぶりだす熊切監督の独自の演出を目の当たりにできた四期生たちは“演者”としてどのように化けるのか――この映画出演で得たものをどのように活かしていくのか、注目していきたい。このように三期生、四期生が様々な分野で資質を見せ始めている今だからこそ、飛び抜けた企画やテレビ番組出演など、たたみ掛けるような仕掛けが欲しいところだ。