Bialystocksによる短くも永遠のような宇宙旅行 とびきり刺激的な演奏を繰り広げたライブハウスツアー
宇宙みたいだ。開演直前に到着したZepp DiverCity(TOKYO)のフロアは、真っ暗な空間をミラーボールで反射する無数の光の粒に覆われていた。銀河にぽかんと浮かび上がったような気分。アルバムのテーマにあったSFというモチーフは、こんなところにも反映されているのだろうか? なんてことを想像してぼんやりしていると、演奏が始まってからブッ飛ばされた。とびきり刺激的なライブである。
バンド史上最大公演数となる全国7都市を巡るBialystocksのライブハウスツアー『Songs for the Cryptids Tour』、そのファイナル公演が11月29日に行われた。舞台前方にはBialystocksの甫木元空(Vo)と菊池剛(Key)が並び、少し背後にある一段登ったステージに、向かって左から朝田拓馬(Gt)、越智俊介(Ba)、小山田和正(Dr)、オオノリュータロー(Cho)、西田修大(Gt)の5人が並ぶ配置。並列の2本の線をイメージさせる立ち位置は、彼らの端正なアンサンブルを視覚的にも具現化していたように思う。
アルバム『Songs for the Cryptids』でも冒頭を飾っている「空も飛べない」でスタート。そして「All Too Soon」に繋がっていく。ジャジーなテイストを含んだ楽曲で、中盤のピアノとドラムのやり取りに早速ゾクゾクさせられた。続いて軽やかなカントリー調「Emptyman」を挟み、緑、黄色、青、紫、オレンジの照明に照らされるステージ上で「コーラ・バナナ・ミュージック」が演奏される。カラフル……というよりも極彩色で怪しげな雰囲気を纏ったサウンドがカッコよく、粘り気のあるベースもすこぶる良い。他の曲に比して野生的な印象を与えるボーカルもハマっており、甫木元の声はこうした美麗と粗野が同居しているところに魅力があるのだろう。
柔らかい音色の鍵盤と美しいメロディにうっとりする「差し色」。The Beatlesからの影響を感じずにはいられない「Kids」。そして軽快なテンポのエイトで進んでいく「光のあと」。続く「灯台」まで、最終的には『Songs for the Cryptids』に収録された全ての曲が披露されるこの日のライブだが、前半は過去曲中心のセットリストで会場を温めていく。とりわけ灯台の灯りのように回転する光の中で、幻想的なアンサンブルとショーマンシップを感じるボーカルで魅了した「灯台」は印象的だ。
そして恐らくこの日会場に足を運んだ人のほとんどがノックアウトされただろう、「憧れの人生」「虹」「聞かせて」「頬杖」と新作からの選曲が並ぶ中盤へと入っていく。
妖艶なアンサンブルを聴かせる「憧れの人生」は、仄暗くもうっとりするようなメロディに引き込まれる。控えめだが存在感のある西田のギターも効果的で、終盤には朝田と越智のセッションでシビれさせられた。が、さらなるハイライトはこの先にある。このまま永遠に続けばいいのに、と思わせるような長尺のアレンジのアウトロに突入。最後はステージ前まで出てきたギターふたりのスリリングな熱演に放心。大きな歓声が上がる中、朝田と西田がハイタッチする姿にほっこりさせられる。
一転してボーカルのまろやかな発声で始まったのが「虹」である。誰もが空気が変わるのを感じただろう。曲ごとに音楽性やテイストをガラッと変えていくライブの中で、甫木元の声色は曲の場面転換やガイドのような役割も担っていたように思う。静寂が聴こえてくるようなしっとりとした鍵盤と、心の内側からあたためてくれるような音色が印象的な「聞かせて」、そして開放的なパーカッションとコーラスが気持ち良い「頬杖」まで、実にバラエティ豊かな楽曲を端正なアンサンブルで聴かせていく。