『ゴールデンカムイ』『はたらく細胞』『山田くんとLv999の恋をする』……実写化を機にアニメ主題歌を振り返る
11月28日から実写ドラマ版『【推しの子】』がPrime Videoにて世界独占配信開始となる。ドラマシリーズ全8話の主題歌は各話ごとに異なるアーティストが務めることが発表されており、MY FIRST STORY、ロクデナシ、Da-iCEなどのアーティストたちが『【推しの子】』の世界をどのように彩るのか、多方面から注目が集まっている。『【推しの子】』と言えば、昨年放送されたアニメ第1期のOP主題歌であるYOASOBIの「アイドル」は、日本どころかグローバルのチャートでも記録的なヒットを飛ばし、今年7月から10月まで放送されたアニメ第2期では、中島健人とキタニタツヤによるユニット・GEMNが歌うOP主題歌「ファタール」が大きな話題となったことも記憶に新しい。
配信環境の普及や『君の名は。』『鬼滅の刃』などの多くの大ヒット作品の影響もあり、昔と比べてアニメーション文化が世間的に定着しているのは周知のとおり。それもあってか、近年は『【推しの子】』のように原作漫画からのアニメ化を経て実写化される作品の数が、肌感覚でも増えてきたように感じる。ここ数年の間にアニメ→実写の順番で映像化されたものだけでも、『ゆるキャン△』『ぐらんぶる』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『波よ聞いてくれ』『ばらかもん』『星屑テレパス』など多数あり、『ONE PIECE』や『シティーハンター』に至っては海外のスタジオが実写版を製作するなど、両手で数えきれないほどの作品が日々制作されている。
今回のコラムでは、今年および来年以降に実写化される(された)作品をピックアップし、そのアニメ主題歌はどのようなものだったかを紹介していく。実写とはまた異なる視点で作られた書き下ろし主題歌を聴きながら、作品への理解を深めていこう。
『ブルーピリオド』
美術学生の青春と苦悩を描いた本作は、2021年にTVアニメが放送、今年8月には眞栄田郷敦主演で実写映画化された。アニメのOPテーマは、「幾億光年」でブレイクを果たした3ピースバンド・Omoinotakeが歌う、彼らのメジャーデビュー作品のタイトル曲でもある「EVERBLUE」。曲が進むにつれてどんどんカラフルに色づいていくような歌詞とアレンジ、そしてボーカルの藤井怜央の印象的な高音が癖になる1曲で、もがき続きながらも絵を描く楽しさにのめり込む様を描いた『ブルーピリオド』の魅力を豊かなサウンドと質感で表現している。彼らの実写MVも『ブルーピリオド』にインスパイアされたような映像となっているので、特に美大受験に取り組む学生はアニメのOP映像とあわせて見てほしい。
そして、ロックバンド・mol-74が務めたEDテーマ「Replica」は、「誰かに期待するのではなく、自分自身で世界を変えよう」というメッセージが込められたポストロックナンバー。歌詞の中に様々な色が登場するOPテーマとは対照的に、色を表す単語を一切出さずに主人公・矢口八虎の心の機微を切り取っているのは見事である。WurtSの歌う実写映画版主題歌「NOISE」や、原作からインスパイアされ生まれたYOASOBIの「群青」など、様々な楽曲とともに『ブルーピリオド』の世界に浸ってみてはいかがだろうか。
『ゴールデンカムイ』
2024年1月に漫画原作第1巻から第3巻前半までを実写映画化したのち、本作の続編となる連続ドラマW『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』が10月からWOWOWオンラインにて放送/配信中。先述した『【推しの子】』と同じく、本作のED主題歌も毎話変更となる豪華仕様となっており、ACIDMAN、[Alexandros]、&TEAMといった錚々たる面々がこの作品に参加している。TVアニメ版は2018年に第1期が制作されて以降、2023年までに合計4期が放送され、最終章となる第5期の製作も発表済(放映時期は未定)。今回は8つあるアニメ主題歌の中から2曲を紹介していこう。
1つ目は第二期OPテーマとして書き下ろされた、さユり×MY FIRST STORYによる「レイメイ」。両者の共作詞・共作曲という、がっつりタッグを組んで作られた疾走感あふれるラウドロックチューンであり、杉元佐一とアシㇼパのように、お互いまったく異なる音楽性を持った2組による化学反応が楽しめる1曲となっている。特にさユりとMY FIRST STORYのボーカル・Hiroの歌声が混ざり合うサビのパートの畳み掛けっぷりは、作品を盛り上げるOPテーマとしての役割を120点満点で果たしていると言っていいほど。『ゴールデンカムイ』のアニメ主題歌として、現在も語り継がれる名曲である。
THE SPELLBOUNDによる第四期EDテーマ「すべてがそこにありますように。」は、中野雅之の浮遊感のあるダイナミズムなサウンドと、小林祐介の心地よい歌声、そして多重コーラスワークが光る1曲。〈君が一番欲しかったもの/すべてがそこにありますように〉という祈りにも似たサビの印象的なフレーズは、まるで鎮魂歌のような佇まいさえ感じさせる。物語が終盤に進み、メインキャラクターがどんどん離脱していく状況もあって、この楽曲に感情移入した『ゴールデンカムイ』のファンも数多いだろう。切望、寂寥、哀愁など、曲を聴いた後には様々な感情が去来するはずだ。THE SPELLBOUNDは実写ドラマ版にも「雨ニウタレ命ナガレ」という楽曲を第8話EDテーマとして書き下ろしている。こちらも合わせてチェックしてもらいたい。