『徹子の部屋』はなぜ特別? MISAMO、Ado、JO1……意外な一面発見する黒柳徹子のトークの哲学

 TWICEのMINA、SANA、MOMOの日本人メンバーで構成されているユニット・MISAMOが11月14日、黒柳徹子が司会を担当しているトーク番組『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演。MOMOが「日本のトーク番組は今回が初めて」と言っていたように、MISAMOにとって貴重なトーク番組出演となった。

 番組内では、関西出身の3人が10代で親元を離れて韓国へ渡ったときの不安、その決断を下したときの家族の反応などが語られた。MISAMOのファンであればよく知られている話だが、番組自体、幅広い世代の視聴者いることもあり、改めて同ユニットのことが知れ渡ったのではないだろうか。

 それにしても、番組を観ていてあらためて感心させられたのが“聞き手・黒柳”のMISAMOに対するアプローチの仕方だ。『徹子の部屋』の黒柳はいつも、ゲストの家族や故郷に関する話を膨らませていくことが多い。今回も「(活動拠点である韓国から)実家へ帰る時間はあります?」「実家に帰ったときはどうやって過ごします?」と、率直な質問を投げかけて、メンバーから「だらーんとしています」と飾らない答えなどを引き出した。

 そのほか「地元の食べものではなにが好き?」と尋ね、MINAは「お好み焼きが好きですね。韓国でもたまに作って食べたりします」、SANAは「お鍋を食べることが多いです。ポン酢につけて食べるのが好きです」、MOMOが「八ツ橋です。お餅が好きなんです。生八橋。ショコラ八ツ橋が好きで」と回答。京都出身のMOMOにいたっては、リラックスムードもあってかこのトークのときはやや関西弁のイントネーションになっていたほど。

なにわ男子の放送回で黒柳が語った、同じ話を繰り返すことの大事さ

 ちなみに筆者のようなライター、インタビュアーは取材時「まだ世の中に出ていない情報や答えを引き出そう」といろいろ深読みしながら質問をおこなっていく。しかし『徹子の部屋』の黒柳はトーク中、分析・考察をまじえるようなことは決してしない。ファンであれば知っている基本的な情報を躊躇なく持ち出し、そこから話を広げていく。もっと言えば、「好きな食べものはなんなのか」といった分かりやすい質問までぶつける。

 なぜ、ファンであれば知っている情報を尋ねたり、分かりやすい質問をしたりするのか。その手がかりは2021年11月24日の、なにわ男子の出演回にある。なにわ男子の大橋和也に「取材を受ける機会が増えてきたのですが、同じ質問が続いたときは答えが同じになってしまいます。どう答えたら良いのでしょうか」と逆質問されたとき、黒柳はこのように答えた。

「あなたにとっては同じ答えでも、(取材者は)初めて聞く答えだから。同じことを繰り返しているように思っていても、自分のなかで答えが磨かれていく。そこから派生して違うことも言えるようになる。はじめのうちは無理して違うことを言おうとしなくても良い」

 それは“聞き手・黒柳”のスタンスにも当てはまるのではないだろうか。ファンにはお馴染みの情報や答えであっても、視聴者のなかにはそれを知らない人が必ずいる。もしくは、そのタレントやアーティストを好きになり始めた人にとっては初めて聞く答えになるかもしれない。黒柳は聞き手として、そういうことを大事にしたいと考えているのではないか。加えて黒柳が指摘したように、幾度も答えている質問であっても、時間を経ると答え方や回答内容が変わるかもしれない。だから黒柳は奇を衒うことはせず、ファンであれば知っている情報、分かりやすい質問をあえて尋ねていると思われる。

 またなにより、黒柳の聞き手としての信条もそこにあらわれている。書籍『話を聞く技術!』(2005年/新潮社)で黒柳は「番組をはじめる前にテレビ朝日に申し入れたことがあります。『スキャンダルとゴシップについて、私に聞けとは言わないでくれ』と頼んだの。というのも、それがあると、お客様が用心しながらいらっしゃるでしょう。そうすると話がちっとも発展しないですね」と語っていた。

 スキャンダルやゴシップについては基本的にはゲストに聞かない(ただ1979年10月29日放送の三浦友和の出演回は、その収録前日にのちの妻となる人気歌手・山口百恵がライブ中「好きな人(三浦)がいます」と熱愛宣言したことから「ゴシップがいやだなんだといっても、これは聞かないわけにはいかないじゃないですか」(書籍『話を聞く技術!』より)と明かしている)。そうやって黒柳が、出演者が安心して喋れる状況作りをきっちりおこなってきた結果、誰もがざっくばらんに自分のことを明かせる番組になったと言える。

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