Uru、野田愛実、乃紫……SNSやカバー動画からヒットを生む女性シンガーたち 拡散される鍵は歌声にあり?
ミュージシャンがネット上で人気を集めてデビューに至るケースは年々増え、もはや当たり前の時代となった。むしろそれが正しい道かとさえ思う。すでに多くの人々の目によって評価されているため、その実力や魅力は保証されているからだ。
そこで本記事ではネットでのヒットや口コミから話題になった女性シンガーにフォーカスし、その足跡と楽曲を紹介していきたい。
Uru
2013年からYouTubeにカバー動画を投稿し、その透き通るような美しい歌声が話題を呼ぶ。初投稿は荒井由実の「ひこうき雲」。J-POPを中心にさまざまな楽曲を歌い、なかでも中島みゆき「糸」やback number「ヒロイン」のカバーが大きな人気を集める。2016年のメジャーデビュー前にチャンネル登録者はすでに14万人を超え、デビュー後は数々のドラマ主題歌やCMソングを担当し着実に知名度が上昇して今に至る。
今年2月にリリースした「アンビバレント」はテレビアニメ『薬屋のひとりごと』第2クール(日本テレビ系)のオープニングテーマ。片思いする主人公の気持ちを描いたこの曲は、スローバラードを得意とするUruにとって新境地と言うべきアップテンポなナンバーで、切なさや儚さを持ち合わせた彼女の歌声のなかに、どこか胸が高鳴るような絶妙な高揚感を味わうことができる。まさにアンビバレントな表現を歌声を通して堪能できる一曲だ。
野田愛実
幼少より歌に親しみ、その類い稀な歌唱力により数々のコンテストで賞を受賞。一方で大学院に進学し、音楽活動と並行して建築学を専攻するという特殊な経歴も持つ。コロナ禍でYouTube配信を始め、ギターの弾き語りによるカバー動画で徐々に注目を集めてきた。カバーする楽曲はJ-POPを中心に、ポルノグラフィティやサザンオールスターズからIZ*ONEまで幅広い。今ではチャンネル登録者数は25万人を超え、リリースした楽曲すべてにおいてテレビドラマやアニメの主題歌のタイアップを手掛けてきた。
野田の魅力は、なんと言っても歌のテクニックと力強さだ。短いフレーズのなかにも細かなビブラートを挟み込む技術を持つため、比較的落ち着いたAメロやBメロでも聴き手を逃さない。そして、時折突風が吹くようなパワフルな歌声を見せる。だから彼女の歌には魅せられるし、心が持っていかれる。
新曲「明日」は、テレビドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)の主題歌への書き下ろし。夫以外の男との子供を夫との子と偽って育てる“托卵”を題材にしたドラマだが、野田の歌はこの作品の描く複雑な感情を見事に表現している。特にサビ頭のフレーズが素晴らしい。〈明日 これからも ずっと先も〉の〈先〉、この一音だけでいかに主人公が痛みや不安を抱えながら生きているかがありありと伝わってくる。静かな水面が突然波打つかのごとく、歌声から感情がどっと溢れだしてくる秀逸な一曲だ。
有華
幼少期からピアノや声楽を学び、歌手の道を志す。就職して会社員として生活する傍ら週末はライブ活動に励み、Instagramに投稿するJ-POPのカバー動画で徐々に注目を集めていった。そんななか、昨年リリースした「Baby you」がバイラルヒット。現在日本のみならず、東南アジアを中心に人気を拡大している。
現時点での最新曲「レモネード」は、忘れられない恋をレモネードに喩えた一曲。新しい出会いがあっても比べてしまうくらい好きだった〈あなた〉への未練の思いが、シンプルかつリアルな表現で歌われている。同世代の女性を中心に共感を呼んでいる彼女らしい等身大の作曲センスが存分に発揮された歌だ。