石井竜也、レア曲満載のツアーファイナル 米米CLUBとは異なる“ROCK一色”のエンターテインメントに

 来年デビュー40周年を迎える石井竜也の全国ツアー『TATUYA ISHII ROCK TOUR 2024「STONE ROCK’S GIG」』のファイナル公演が11月10日、Zepp DiverCity(TOKYO)で開催された。米米CLUBではファンクをベースにエンターテインメント性あふれるステージを展開していたが、ソロとして近年はジャズやオーケストラサウンドのコンサートを開催してきた石井。このツアーでは“ROCK”に特化し、90年代の楽曲から音源化されていない楽曲まで、ロック系の楽曲を集めて演奏。これまでとは異なるスタイルでファンを楽しませた。

 これまでの石井のソロステージは天使をモチーフにしたものが多かったが、今回はユニオンジャックがあしらわれたモノトーンのステージセットで、バックにはシルクハットをかぶった巨大なスカルヘッドのオブジェが鎮座。観客もブラックを基調にした思い思いのファッションに身を包み、ステージも客席も“ROCK一色”といった雰囲気だ。

 70年代のハードロックを彷彿とさせるハモンドオルガンの音色が鳴り響く中、石井が登場すると客席が一気に沸き立ち、オープニングナンバー「LINE」が始まった。腰に響く低音の効いたグルーヴ、メロディアスなサビ、時にシャウトするようながなり声を交えながら、熱くボーカルを響かせた石井。続く「TRAUMA」では、ムーディなサックスとギターのリフの導きによって、熱帯のどこかの島のようなプリミティブなリズムが印象的に響く。そして、冒頭でパワフルなロングトーンを響かせた「AFFECTION」では、女性コーラスのリーディングに合わせて、フェイクやアドリブを披露して会場を沸かせた。

 MCもROCKにモードチェンジされ、どこかワイルドに決めた石井。まずは満員の会場に「ありがとうございます」と感謝しつつ、バンド名が「THE STONE ROCKS」であることを紹介。そして「オレはジョニー・デップです(笑)」と自己紹介するあたりは、いつもの“てっぺいちゃん”で、オーディエンスもその二面性を石井流のエンターテインメントとして楽しんだ。

 この日のライブはほぼ全編、12月25日にリリースするニューアルバム『STONE ROCK’S』から選曲された。「天使の標的」は1998年のナンバー、「RAIN SONG」は2013年と、実に幅広い年代からピックアップ。“ROCK”というキーワードで一貫しているとは言え、曲調は実に変幻自在で、そのトリックスターぶりはかつてカメレオンとも呼ばれたデヴィッド・ボウイを彷彿とさせた。

 北欧メタルのようなパイプオルガンの荘厳な音色で始まった「Where is Heaven」は、一転スカのリズムが軽快に鳴り響き、どこかロンドンの裏路地を、天使を探しながら彷徨い歩く雰囲気。石井は身振り手振りを交え、膝を突いて祈るように歌った姿も印象的だ。縦縞のタキシードの衣装に着替えた後半戦は、2005年のナンバー「闇に光が」でスタートし、アップテンポのリズムに、軽快なメロディを乗せたナンバー「砂漠へ行こう」と続く。まるで先ほどまで闇を彷徨っていた主人公が、愛という光を見つけて前を向いて歩き出したような、そんなストーリーが思い浮かぶ展開に心が踊った。

 また、このライブでは普段のライブではなかなか聴くことのできないレア楽曲も多数披露された。その一つが「BODY RHYTHM」だ。石井曰く、米米CLUBが解散後のツアーで3回やったのみで、YouTubeには上がっているものの未レコーディングだった楽曲とのこと。アルバム『STONE ROCK’S』に初収録されることも告げ、「すげえいい曲だから」と言って、この日生披露してファンを喜ばせた。サビの切なくも爽快なメロディが秀逸な同曲。疾走感あふれるビートに身を委ね、クラップしながら体を揺らした観客。石井は身をのけ反るようにして熱くパワフルなボーカルを聴かせた。

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