星街すいせいの歌声は「エレガントな部分と繊細な部分とが透けて見える」

――ここまでツミキさんの話を聞いてると、石野さんのボーカリストとしての存在も大きいのかなと感じます。

ツミキ：大きいですね。あくまで僕の作る曲ではという感じになりますが、ボーカリストは楽曲を伝える役割にあるので、本人が何を思っているのか、どんな声色で発音するのかによってメッセージ性は変わってきます。そういう意味でも、ボーカルの存在は大きいですね。

――まりあさんと石野さんのボーカリストとしての違い、それぞれの特色をどのように捉えていますか？

ツミキ：ノーメロもAoooもポップシーンにないものを作ろうとしているところは同じなんですけど、ノーメロの記号的ではないオリジナリティというところは、まりあの歌声にもあると思っています。まりあの歌声は、ちょっと擦れてるというか、いい意味でピュアではないと思っているので、そこがオリジナリティですかね。石野は、Aoooのポップの部分を担ってる人だと思うんです。Aoooはサウンドがぐちゃぐちゃとしてるから、そのピースの一つとしてポップに中和してくれる担当という印象です。

――「サウンドがぐちゃぐちゃとしてる」とおっしゃってましたけど、この1年で見つけたAooo独自のサウンド、バンドとしての色というのはどういったところにあると思いますか？

ツミキ：全員の我が強いので、普通にバンドを組んで一つの目標に向かってやっているバンドと比べるとまとまりがないんですよ。ただ、それを僕はいいこととしてプラスに捉えていて。こんな歪な形をしたバンドはいないと思いますし、そこがAoooの良さだと僕は思っています。この形は再現できないけど、楽曲自体は分かりやすくて、コピーしようと思ってくれる人もこれからたくさん出てくるだろうし、そういった部分は普遍的でもあって。本人たちの奏でる音は真似しようと思ってもできないものというのは強みかなと思います。

――Aoooは成り立ちから特殊なバンドですが、これからバンドとしてどうなっていきたいということも話したりは……？

ツミキ：話さないです。でも、これから出てくるんじゃないかなとは思います。今は4人で音を鳴らすということの喜びに向き合っているフェーズだと思っていて、これからまた何か変化があるかもしれないですね。その辺は、ドキュメンタリーみたいな感覚で楽しんでもらいたいです。その歪さをハラハラしながら見てる人もいていいと思いますし、そこにワクワクを与えられるようなメンバーだと思うので、どういう風に変化していくかを観察していてほしいです。

――先ほど、「ポップスシーンに、グランジやオルタナティブなバンドが減ってきている」と話していましたが、改めて、ツミキさんは今の日本のバンドシーンをどう見ていますか？

ツミキ：僕が思い描いてるようなバンド像は、もっと棘があって、最近はシュガーコートしすぎかなと思います。それはサウンドも含めて、聴きやすく、共感しやすくなっていて、摩擦がなくなってきたという印象です。僕は摩擦を喜んで聴いていたので、すんなり入ってくるという。

――その摩擦を感じたというのは具体的にどんなバンドがいたんですか？

ツミキ：僕は元々NUMBER GIRLが好きだったんです。そこから聴くアーティストはどれも人とは違う悲哀を歌っているみたいなことが多くて。そこのジリジリする気持ちが好きだったんです。今はどちらかというとバンドがシンガーソングライター的な文脈の延長にあるような気がするというか。それはそれでいいんですけど。もっと棘棘しかったような気がします。

――もしかしたらとは思っていたのですが、「水中少女」はNUMBER GIRLからですか？

ツミキ：「水中少女」はそうですね。AoooでNUMBER GIRLみたいな楽曲があったら面白いなって、個人的には思っていて。別にメンバーに共有していたわけではないんですけど。

――Aoooとしては、東急歌舞伎町タワー前シネシティ広場でフリーライブ『Flash!!!!』を開催します。

ツミキ：まだちょっと絵が見えないので、どんな風になるのか楽しみです。

―― eggmanでのワンマンでは、フロアにAoooへの期待感が充満していたように自分は感じました。フリーライブでは今まで観たくても観られなかった人たちも集まると思うので、また新しい景色が見られそうですね。

ツミキ：熱量をもっと伝播していきたいですね。実際に観ないと分からないことがあると思うので。

――新宿というところだと、「FLASH FORWARD」の〈思惑が煙る新宿通り〉という歌詞だったり、「ネオワビシイ」の〈駅前3Dの猫を横目に〉というフレーズにかけた場所選びなのかなと思いました。

ツミキ：確かに。たまたまですけどね。そういうことにしときます（笑）。

――12月からは追加公演も含めた初めてのツアー『Aooo 1st Live Tour "BOWWOW"』も行われます。

ツミキ：僕たちの冠で行ったことのない土地に行って、お客さんに観てもらうのは大事なことだと思っています。僕は大阪に住んでいたんですけど、原体験として聴いていたバンドが大阪に来てくれたことがすごく嬉しくて。それが自分にとっての記憶の財産になっていたので、そういった体験をしてもらえるように頑張りたいです。

――資料によれば、「来年に向けて制作中のさらなる新曲も披露予定」だとか。

ツミキ：もう完成はしているので、早く世に出したいです。曲数で言うと、まだレコーディングしたのは1曲だけなんですけど、まさに制作中という感じですね。

――ほかにも、ツミキさんが星街すいせいさんに今年3月に提供した「ビビデバ」が、この取材時点では1億回目前という再生回数を叩き出しています。ノーメロやAoooとの制作の違いはありますか？

ツミキ：違いはないと言えばないですけど、ボーカリストですかね。歌ってほしいメッセージだったりとか、その時に自分が作りたいものと先方がやりたいことをいかにフュージョンさせられるか。そんなに明確な違いはないかもしれないです。

――やはりボーカリストの存在が大きいんですね。

ツミキ：そうですね。僕は基本的にそのボーカリストを見てしまうので、この人が伝えるメッセージに僕の今やりたいこと、思ってることを乗っけるとしたら、どういうものができるかを考えます。

――星街さんのボーカルの魅力はどういったところにあると感じますか？

ツミキ：キャッチーなアイコン性を持っていて、VTuberという肩書きがあって。内にはエレガントな部分と繊細な部分とが透けて見える感じが歌声にあるなと僕は思っています。あとは、技が細かい人だなという印象です。そういった全ての良さをパッケージしたいという思いで「ビビデバ」は作りました。

――最近はDJとしてもライブイベントに出演していたりと、様々な軸がある中で、ツミキさんが目指すアーティスト像、理想の形というのはありますか？

ツミキ：僕は、見る人、聴く人に自分も音楽をやりたいと思わせられるようなアーティストになりたいというのがあります。音楽というのは、例えば口笛が吹けたりだとか歌が歌えたりだとか、自己表現が1番簡単だと思うんですよね。みんなが持ってるオリジナルをもっと共有したいですし、みんなが表現者であってほしいと思っています。

――それは原体験として、大阪で好きなバンドを観てきたところにも通じることですね。

ツミキ：そうですね。僕は音楽家系だったので、物心つく前から音楽がありふれたものとしてあって、音楽なら表現できると思って生きてきました。でも、環境が変わるとそうではない人たちがほとんどということに気づいて。趣味でもいいから、音楽をやってみたらいいのにと思うんです。日々感じているストレスをSNSで表現することはあまり健康的ではないと僕は思っていて。もっと自由な場所で自己表現すればいいのにという思いから、音楽を広めるために音楽をやっています。音楽を始めるのに知識は全く必要ないと僕は思ってるんです。その引き出しの大きさ、その人に見合った引き出しがみんなにあると思っています。

■リリース情報
NOMELON NOLEMON『水光接天』
TVアニメ『るろうに剣心 －明治剣客浪漫譚－ 京都動乱』第一クールエンディングテーマ
2024年10月16日（水）発売
CD： https://nomelonnolemon.lnk.to/NB1gHE

Aooo 1stアルバム『Aooo』
定価：¥3,300 （税込）
品番：SRCL-13021
購入URL：https://Aooo.lnk.to/Aooo

■公演情報
【Aooo】
『Aooo 1stアルバム「Aooo」発売記念フリーライブ「Flash!!!!」』
日時：2024年10月18日（金）19:00〜
場所：新宿 東急歌舞伎町タワー前 シネシティ広場
※観覧フリー

『Aooo 1st Live Tour "BOWWOW"』
2024年12月19日（木）
開場 18:00 / 開演 19:00
会場：愛知・THE BOTTOM LINE

2024年12月22日（日）
開場 15:00 / 開演 16:00
会場：大阪・UMEDA CLUB QUATTRO

2024年12月29日（日）
開場 15:00 / 開演 16:00
会場：東京・代官山UNIT

チケット料金：スタンディング ¥5,000（税込）
※ドリンク代別途
※未就学児童入場不可、小学生以上チケット必要
プレイガイド先行：10月5日（土）12:00～10月20日（日）23:59
※愛知公演、大阪公演のみ

一般発売：11月30日（土）12:00～

2025年1月31日（金）
開場　17:00 / 開演 18:00
会場：東京・東京キネマ倶楽部
チケット料金：スタンディング ¥5,500（税込）
※ドリンク代別途
※未就学児童入場不可、小学生以上チケット必要
アルバム封入先行：10月16日（水）12:00～11月10日（日）23:59

【NOMELON NOLEMON】
『MIX SPICE #2　Namba Culture Terminal 2024 -1st Anniversary-』
日程：2024年10月28日（月）
場所：Yogibo META VALLEY
出演：NOMELON NOLEMON / NELKE
OPEN18:30/START19:00
ADV¥4,900
https://eplus.jp/sf/detail/4000180001

chef’s presents 『おてまえ』
日程：2024年11月22日（金）
場所：下北沢ADRIFT
出演：chef's / NOMELON NOLEMON / and more!!
OPEN18:00/START18:30
チケット¥3,400（ドリンク代別）
https://eplus.jp/sf/detail/4170870001

【ツミキ】
『ASOBIZA  -HALLOWEEN SPECIAL-』
日程：2024年10月25日（金）
場所：ZEROTOKYO
B4 Z HALL出演：ケンモチヒデフミ / TAKU INOUE / ☆Taku Takahashi (m-flo, block.fm) / ツミキ / WATARU / DJ WILDPARTY
VJ：Naohiro Yako / Shun Nagasawa
OPEN 23:00
HP：https://zerotokyo.jp/event/asobiza-halloween-special1025/
DOOR：¥4,000-
FASTPASS TICKET：¥3,500-（優先入場・入場料金含む）
【ZAIKO】https://zerotokyo.zaiko.io/e/asobiza-halloween-special1025

■関連リンク
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