野外フェス参加者の安全はどう守る? 台風、交通機関の乱れなどで浮き彫りになった課題

 今年の夏フェスシーズンが幕を下ろし、長引く暑さが続いた10月に開催された神奈川県・相模原『[Alexandros] presents THIS FES '24 in Sagamihara』や、大阪府・泉大津『HEY-SMITH Presents OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2024』などの大型野外フェスも無事に終了した。今年の野外フェスは様々な事象による開催中止や中断など、普段と異なる状況での開催が例年よりも多数見られた印象がある。本稿ではそんな今年の野外フェスで起こった様々な事象を振り返りながら、野外フェスの今後の課題について検討する。

 まずは今年に限らず、近年の野外フェスにおいては常について回る“天候問題”についてだ。毎年倍々ゲームのように上昇していく気温は野外フェスにおいても多数の熱中症患者を生み出す要因となっている。来場者はもちろん、出演者にとっても大きな課題となっており、今年はサザンオールスターズが「令和の夏は暑すぎる」と“最後の夏フェス出演”を決意し、夏フェスからの勇退を発表した(※1)。高温化について各フェスでは様々な対策を講じてはいるものの、やはり抜本的な解決策としては“開催時期の変更”だろう。例年8月に千葉県・蘇我で開催されている『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』(以下、『ロッキン』)は、来年度からは9月のシルバーウィークの開催に変更することを発表した。

 筆者は今シーズン、5月末に愛知県で開催された『森、道、市場2024』と9月に茨城県で開催された『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA』に参加したが、特にロッキング・オン主催の野外フェスとしては初の9月開催となった『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA』は想定していたよりもずっと涼しく、過ごしやすい気候であった。r

 元来よりいかにユーザー/参加者にとって過ごしやすい環境を作るかを理念としてフェスを催してきた『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』にとって、この開催時期の変更は長い目で見れば必然であったように思う。今回『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』が真っ先に取り組んだ酷暑を理由とした開催時期の変更は、今後他のフェスにも波及していくのではないだろうか。

 酷暑同様に年々激しさを増す豪雨や台風、落雷についても今年は大きな課題となった。8月末から山梨県で開催された『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2024』(以下、『ラブシャ』)は、日本列島に台風10号が近づいた影響で会場は水たまりが多数でき、SNSでは来場者の膝辺りまで濁った水が残る会場の様子が大きな話題に。他の野外フェスにおいても台風接近や豪雨を理由とした中止が相次いだが、とりわけ『ラブシャ』においては公共交通機関が不通となった影響でフェスへの参加が叶わなかったチケット購入者への返金対応(※2)が注目を浴びた。

 今年の『ラブシャ』の事例は、フェスそのものの開催可否、実際にチケット購入者の来場が叶うかどうか、そして来場できなかったチケット購入者に対してどういった対応が求められるのか、そしてそれは実現可能なのか、といった課題を改めて浮き彫りにしたと言える。

 また、9月7日、8日に栃木県で開催された『ベリテンライブ2024』(以下、『ベリテン』)では、2日目の開催中に落雷によってイベントスタッフが怪我を負う事故が発生し、フェスそのものについてが途中中止となった(※3)。各フェスは様々な事象に対する対応策について精一杯実施しているものの、特に今回の『ラブシャ』や『ベリテン』においてはそれを上回る自然の脅威に襲われてしまった、と言えるだろう。

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 そうした意味では、先述した『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のようにやはりどのフェスも開催時期の変更を検討する時期にきているように思うが、野外で過ごしやすい季節でもある春秋の時期が年々短くなっていることに加え、開催タイミングが他フェスと重複してしまった場合のブッキング調整や、特に台風については9月のほうが発生の可能性が大きいことなども、今後波及していくであろう各野外フェスの開催時期変更における課題だと言える。

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