サザンオールスターズ、“真逆のプロダクション”が推進力に 独自の流儀で突き詰めたダンス&ロック

 もう1曲の「ジャンヌ・ダルクによろしく」は、「恋のブギウギナイト」とは真逆のサウンドプロダクションだ。しばしば桑田のソングライティングは、連続する時間のなかで作品ごとに振り子の作用を果たし、バンドの推進力を生んできたが、今回の二作品にも当てはまるかもしれない。

 「ジャンヌ・ダルクによろしく」は、ベーシックを録る段階からセッション感覚の音作りが成されている。ストーンズ・タイプのエイトビートから小手慣らしして、やがてZZトップ的なものへと発展したそうだが、ここまで王道ロックを意識したオリジナル楽曲は、過去になかったと言っていい。

 そもそも彼らの生み出してきたものは、例えば「ロック」と分類されるものであっても、時代に即し、配合を変化させつつのミクスチャーだったことが多かった。

サザンオールスターズ - ジャンヌ・ダルクによろしく [Official Music Video]

 歌詞に関しては、長くバンドを続けている自分達を歌ったとも受け取れる(特に歌い出しは)。それでいて、パリオリンピックをはじめとするスポーツテーマという役割も果たし、アスリートのフィロソフィーとも合致する内容である。

 なお、この原稿を執筆しているのは、彼らが最終日のトリを務める『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』の直前である。これまでのバンドの流儀でいうなら、今回の新作二作品も、セットリストに加わるはずだ。目の前に居るであろう数万の観客に対し、「恋のブギウギナイト」と「ジャンヌ・ダルクによろしく」は、まったく違う効能を発揮するだろうし、特に“ジャンヌ・ダルク”には、〈熱いステージが始まるよ〉という歌詞すら書かれているのだった。

 フェスが終われば、この冬にリリース予定の新作アルバムへの集中度が、さらに増していく筈である。今回の二作品からアルバム内容を予測するのは難しいが、振り幅と奥深さにおいて、サザンオールスターズにしか有り得ない容積を有するものになることだけは確実だろう。

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