サザンオールスターズ、一曲も例外なく観客を熱狂させた2時間半 45年の重みを感じさせる地元・茅ヶ崎での特別なライブ

サザン『茅ヶ崎ライブ2023』レポ

 サザンオールスターズは、デビュー45周年にあたる2023年、「盆ギリ恋歌」「歌えニッポンの空」「Relay~杜の詩」の3曲の新曲のリリースに続いて、『サザンオールスターズ「茅ヶ崎ライブ2023」』を、神奈川県茅ヶ崎市の茅ヶ崎公園野球場にて、9月27日・28日・30日・10月1日に行った。

 桑田佳祐の地元であるこの場所でサザンがライブを行うのは、2000年・2013年に続き、三度目。運良くチケットを入手できた18,000人が各日に集まったほか、30日は270館365スクリーン、1日は268館344スクリーンの全国の映画館でライブビューイングも行われ、それぞれ100,000人が視聴したという。

 それでは以下、その最終日、10月1日の模様。書きたいことがありすぎるので、箇条書きにしました。

サザンオールスターズ

・まず、開演の様子。「夕陽は赤く」そして「君といつまでも」と、SEで加山雄三のメドレーがかかる中、サポートメンバーが配置につき、メンバー5人がグレイシートレインで登場。桑田佳祐は映画(でありアルバムでもある)『イエロー・サブマリン』の時のThe BeatlesのTシャツ姿(アンコールで着替えたTシャツも『イエロー・サブマリン』の別バージョンだった)。桑田の「オイ!」という叫びに続き、ステージ上部から上がった花火と共に始まった1曲目は、「C調言葉に御用心」。この曲をはじめとして、この日のセットリストは、言わば“茅ヶ崎関連”、もしくは“湘南関連”、あるいは“海関連”の曲が多めに選ばれていたとも捉えられる。たとえば「夏をあきらめて」「Moon Light Lover」「そんなヒロシに騙されて」「栞(しおり)のテーマ」「真夏の果実」「希望の轍」など。

 とはいえ、“茅ヶ崎関連”なのにやらなかった曲はいくつもあるし(たとえば「チャコの海岸物語」や「HOTEL PACIFIC」とか)、「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」のように、“横浜関係”の曲もあったので、必ずしも“茅ヶ崎関連”の曲が選ばれていたわけではない。

 ただし、12曲目「歌えニッポンの空」で、野球に興じる少年時代の桑田のモノクロ写真が画面に大写しになったり、各曲の効果映像に何度も湘南の海の風景が使われたりと、茅ヶ崎で開催するライブであることに重点を置いた演出になっていた、とは言えると思う。

 特に印象的だったのは、20曲目「盆ギリ恋歌」。夜の江ノ島に花火が次々と上がり、江ノ電が『銀河鉄道999』のように空に昇っていく、というめったやたらと素敵な映像がLEDモニターに映し出された。

 ・12曲目「歌えニッポンの空」で、この日最初にEBATOダンシングチームがオンステージ。この時はメキシコの民族衣装を思わせる色鮮やかなドレス。以降、20曲目「盆ギリ恋歌」や、本編ラストの21曲目「マンピーのG★SPOT」などで登場、ステージを華やかに、かつ猥雑に(←こことても大事、サザン的に)盛り上げる。

 最大人数になったのは、アンコール最後の「勝手にシンドバッド」の時。ダンサーは26名、プラス神輿二台と「45周年本当にありがとう!!」の幕を掲げる人たちも現れたので、総勢50名以上になっていたと思う。

・2曲目「女呼んでブギ」を終えたところで、桑田、最初のMC。

 まず「帰ってまいりました、ザ・ドリフターズでございます。荒井注です。愛とロマンを歌うサザンオールスターズでございます!」と、挨拶。

 そして「ようこそ茅ヶ崎へ」という歓迎の言葉から端を発して、桑田が「♪ようこそここへ」と歌うと、オーディエンスが「♪クッククック」と返す、という、謎の「わたしの青い鳥ムーブ」が始まる。桑田はこれを気に入ったようで、ライブ後半のMCでもリピート。

 最初のMCの最後に、桑田は「我々、僕たち目立ちたがりの芸人でございますけれども」と、『ザ・ベストテン』に「スポットライト」のコーナーで初出演した時の自己紹介の言葉を持ってきた。そして「コロナ明けではございますが、みなさん、熱いご声援と、パワーをください、いっぱいください!」と、呼びかけた。

サザンオールスターズ

・6曲目「夏をあきらめて」の時の効果映像は、海と空の画で始まって夕暮れの海で終わり、続く7曲目「Moon Light Lover」では月夜の海になったのだが、この曲の並びが、茅ヶ崎公園野球場におけるこの時間の状況とほぼ合っていて鳥肌ものだった。

・もうひとつ、映像演出に関して書いておきたい、鳥肌ものな一瞬。

 8曲目の「栄光の男」では、曲に伴って映像もガラッとムードが変わり、東京の都心の光景を次々と映していく。それが、よく見たら今ではなくて、ちょっと前の風景なのだ。この曲だからそうしたのだと思う。地下に移設される前の東急東横線渋谷駅のホームが映し出された時は、思わず「ああっ!」となった。

・10曲目「そんなヒロシに騙されて」は、もちろん原由子がリードボーカル。中盤まではピアノの前で歌い、後半では“毛ガニ”こと野沢秀行と共にステージ前へ出て歌い踊った。

・入場者全員に配られたリストバンド型ライト=「烏帽子ライト」は、14曲目「東京VICTORY」から点灯開始。各所に配置されたレーザーがグラウンド中央上空めがけて照射され、交差光はまるでミラーボールのようだった。白い光が茅ヶ崎公園野球場を満たし、曲の最後には、白い光で包まれた球場をドローンが映し、そのカメラがどんどん上空へと引いて行って、最後には地球の姿になる、という映像演出が。

 それ以降も、要所要所で、白、青、イエロー等の「烏帽子ライト」の光が楽曲を彩った。

・後半のピーク、つまりステージの上も下もひたすらヒートアップしていくブロックのスターターになったのは、18曲目の「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」。

 軽やかさと重厚さ、スウィング感と疾走感を併せ持った松田弘のプレイが、こういう曲では特に活きる。アウトロでは桑田は、演奏に乗せてザ・ロネッツの「Be My Baby」を口ずさんでみせる。

 そのまま曲間なしで、19曲目の「ミス・ブランニュー・ディ(MISS BRAND-NEW DAY)」へ。当時の最先端であり今聴いても新鮮な、無機質でシンセっぽい、関口和之の奏でるイントロのベースラインに合わせて、「オイ!」という掛け声がまき起こった。

 この熱狂は、そのまま22曲目の「マンピーのG★SPOT」まで続いていく。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる