松本孝弘、21年ぶりのカバー作品から伝わる力強いミュージシャンシップ LiSAやTERUらと共に紡いだ音楽への愛情と感謝
アルバム3曲目に収録されているのは、これまでさまざまなアーティストによってカバーされてきた吉田拓郎の「落陽」。この曲では松本との親交も深いGLAYから、フロントマンのTERUが参加している。原曲の初出は1973年のライブバージョンであり、多くの拓郎ファンがイメージするのもこのテイクでの演奏だろう。松本も今回、このライブバージョンを元にアレンジを施しており、軸となるアコギの上に(原曲でリードギターを担当した)高中正義にも匹敵する味わい深いボリューム奏法を用いたプレイを聴かせてくれる。さらに、シンプルなバンドアンサンブルに彩りを与えるブラスセクションも原曲同様に採用されており、ブルージーな色合いを見せる松本の渋いギタープレイとの対比も抜群だ。
いつ頃どの媒体で目にしたか記憶が定かではないが、かつて松本はGLAYのTAKURO(Gt)との対談で「GLAYの音楽には4人の人柄が表れていて、(曲を聴くと)きっと優しい男たちなんだろうなと思った」のような趣旨の発言をしたことがあったが、筆者がこの「落陽」を聴いたとき真っ先に脳裏に浮かんだのがこの発言だった。優しさや誠実さを強く感じさせるGLAYの楽曲で、その大きな役割を担っているのがTERUの歌声。今年デビュー30周年を迎え、その優しさに大人の色気やよい具合の“枯れ”も加わったことで、「落陽」で描かれる情景をより伝わりやすいものにしている。ちなみに、「落陽」の作詞を手がけた岡本おさみは、この曲は北海道を放浪した際の実体験が元になっているとのことで、それを北海道出身のTERUが歌うというのも運命めいたものがあるのではないだろうか。
本作においてもっとも異色のコラボレーションと言えるのが、アルバム9曲目に収録された「傷だらけのローラ」だろう。西城秀樹が1974年に大ヒットさせたこの曲は、歌謡曲の域を超えたドラマチックなハードロック調の楽曲で、楽曲の盛り上がりと比例して熱量が高まる西城の絶唱は唯一無二といえるもの。そんな難易度の高い名曲を歌うのが、令和の演歌界を担う若手歌手・新浜レオン。筆者にとっても、収録楽曲クレジットが発表された時点でもっとも注目していた1曲だった。
原曲にあったドラマ性を弱めることなく、むしろツインリードなど松本らしいフレージングで更新されたアレンジは令和の時代に聴いても新鮮さがあり、イントロの時点で期待が高まる。気になる新浜の歌唱だが、前のめりで荒々しく野生味が強かった西城の原曲とは異なり、端正さが目立つものの緩急を付けつつ独自の熱の込め方でエモーショナルさを表現している。疾走感の強かった原曲よりも若干重心が低く感じられるアレンジも新浜の歌唱スタイルに合わせたものなのだろうか。演歌とも歌謡曲とも異なる不思議な空気感は、ロック畑の松本と演歌界に身を置く新浜とのタッグだからこそ成し得た、稀有なカバーだと断言しておきたい。
Tak Matsumoto名義だからこそ実現できた、長きにわたり語り継がれる“J-POP前夜”の名曲カバーと、ジャンルやキャリア、性別の異なるシンガーたちとの共演が凝縮された『THE HIT PARADE II』は、松本の音楽に対する愛情と感謝、そしていくつになっても途切れることのない冒険心をストレートに感じることができる好盤だ。第1弾から第2弾までの間隔が21年もあったことから、果たして第3弾があるのかどうかはわからないが、彼のいち音楽ファンとしての側面と、常に現在進行形で成長し続けるミュージシャンシップをダイレクトに楽しめる企画に今後も期待したい。
※1:https://houseofstrings.jp/special_thp2/
■リリース情報
Tak Matsumoto『THE HIT PARADE Ⅱ』
発売・配信中
詳細:https://bz-vermillion.com/news/240712.html
<収録曲> 全10曲収録・全形態共通
「六本木心中」 featuring LiSA 〔original:アン・ルイス〕
「木蘭の涙」 featuring GRe4N BOYZ 〔original:スターダスト☆レビュー〕
「落陽」 featuring TERU(GLAY)〔original:吉田拓郎〕
「銃爪」 featuring 稲葉浩志〔original:世良公則&ツイスト〕
「Yes-No」 featuring 山本ピカソ(青いガーネット)〔original:オフコース〕
「ブルーライト・ヨコハマ」 featuring 倉木麻衣 〔original:いしだあゆみ〕
「白い冬」 featuring KEISUKE(Z)、YUJIRO(Z)〔original:ふきのとう〕
「時の過ぎゆくままに」 featuring 上原大史(WANDS)〔original:沢田研二〕
「傷だらけのローラ」 featuring 新浜レオン 〔original:西城秀樹〕
「俺たちの勲章テーマ」 Tak Matsumoto 〔original:トランザム〕
【数量限定生産盤 】 ※7インチアナログサイズジャケット仕様 <180×180mm>
No:BMCS-8014 Price:¥4,950(税込)
特典Blu-ray
貴重なゲスト・ボーカルとの共演映像を収録
『Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman- at Billboard Live TOKYO』
01. 「俺たちの勲章テーマ」
02. 「ブルーライト・ヨコハマ」 featuring 倉木麻衣
03. 「傷だらけのローラ」 featuring 新浜レオン
04. 「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」
封入特典
★オリジナルポスター(320×480mm)
【初回限定盤】
No:BMCS-8015 Price:¥4,400(税込)
特典Blu-ray
※数量限定生産盤と共通内容
【通常盤】
No:BMCS-8016 Price:¥3,520(税込)
全形態共通封入特典
セルフライナーノーツ
Tak Matsumoto「THE HIT PARADE Ⅱ」& TMG 2nd ALBUM連動応募特典
応募抽選券A
【 応募抽選券A 】 封入(※各形態とも初回生産分のみ封入)
「THE HIT PARADE Ⅱ」に封入となる【応募抽選券A】と、「TMG Ⅱ」に封入の【応募抽選券B】をお持ちの方を対象に、連動応募特典企画を実施。
連動応募特典詳細情報:https://bz-vermillion.com/news/240823.html
松本孝弘 公式サイト:https://www.houseofstrings.jp/