TETORA、ライブバンドの日常における“特別な1日” 剥き出しの演奏で33曲を駆け抜けた武道館ワンマン

TETORA、初の武道館ワンマンレポ

 最初の4曲を終えてMCに入る際、上野は「これが武道館か」と呟き、「“どうやったらカッコよく見えるやろ”とか、“みんながドキッとしちゃう言葉って、どんなんだろう”とか、柄にもなくいろいろ考えちゃったりしたんだけど、そういうの全部なくして、今日はありのままの3人の人間の姿をしっかり見ててほしいと思いました」とステージに立ったことで初めて実感したことを語った。以降、この言葉通り、剥き出しのまま音楽を鳴らし続けた3人。年始に声帯ポリープを摘出した上野は、声のつっかかりがなくなった分、歌声にストレートに感情が乗っている。歌い出しから聴き手の注意をグッと引きつける瞬間が続いた。いのり、ミユキが体全体を使って鳴らす音が生むグルーヴは緩急豊かで、喜怒哀楽の4カテゴリに当てはまらない心の高まりや揺らぎを体現している。上野の歌に寄り添うこともあれば、あえて波を起こして飲み込むこともあり、そのスリルがボーカルを一層切実なものにさせた。

 上野から出る言葉もまた飾らないものだった。特に「贅沢病」を演奏する前の「“武道館ライブやらせてもらえるなんて、うわあ、贅沢やな”って思ってたけど、そうじゃなくて、感動できることが贅沢やと今、ふと思っちゃった」という言葉はポロッと出てきたような感じだったし、観客に「ありがとう」と伝える回数も多かった印象。この日のライブの真ん中にあったのは、自分たちの本質に気づき、見つけてくれた人たちへの感謝と、今は全力を尽くすのみというバンドの覚悟だろう。「イーストヒルズ」曲中では、上野が観客に「サブスク解禁してないと出られないフェスとか、TETORA以外みんなメジャーのイベントとか、そういうのもある中で、中身に気づいてもらって。そんな人のこと、一生TETORAは忘れないです」と伝える。直後の間奏で3人が鳴らした気合いの轟音は、観客の記憶に深く刻まれたことだろう。

 さらに頼もしかったのが、20曲目「12月」を境に、バンドのギアがもう一段階上がったこと。ライブの終盤に差し掛かったタイミングにも関わらずだ。バンドにとっての一番の晴れ舞台で、TETORAというバンドが天井知らずであることを3人は観客に見せつけた。上野も「今の気持ち、喜怒哀楽の中にない気がする。言葉にできない感じ」とポジティブな手応えを感じている様子だ。「こういう時によく重大発表があるけど、うちらは続いていくだけだから。これからもよろしくお願いします」と語られたように、3人の眼差しはこれからも続く“日常”に向いている。現にここから全国のライブハウスを巡るツアーが始まる。「もしいつかまた、武道館でライブやるってなった時は、このヤバかった日、今日に勝とうと思いながら、たぶんこのステージに立つと思う。その日が来るまで、ライブハウスでカッコよくなって、日本武道館に帰ってきます」という発言が実現する未来を楽しみにしていたい。

※1:https://natalie.mu/music/pp/tetora

◾️セットリスト
1.わざわざ
2.7月
3.8月
4.9月
5.本音
6.3月
7.出来ないよ
8.日常
9.11月
10.友達、以上
11.ずるい人
12.知らん顔
13.今日くらいは
14.今さらわかるな
15頑張れた
16.憧れ
17.ネコナマズ
18.贅沢病
19.産毛
20.12月
21.バカ
22.6月
23.嘘ばっかり
24.10月
25.イーストヒルズ
26.言葉のレントゲン
27.素直
28.覚悟のありか
29.レイリー
30.Loser for the future
31.2月
EN
32.ワンダーランド
33.もう立派な大人

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