草彅剛、想像を超えた“平和”を呼び起こすMC力 『がんばった大賞』から活かし続ける視聴者視点

 草彅剛が8月15日、3時間の特別番組『大相撲部屋対抗!大食い&歌うまバトル』(フジテレビ系)に出演し、チェアマン(MC)を務めた。8年4カ月ぶりとなる同局でのMCっぷりは、期待通りの平和で温かなものだった。

 『大相撲部屋対抗!大食い&歌うまバトル』は、そのタイトル通り1時間の大食いバトルと、1カ月間の練習を重ねた合唱対決で勝敗を決めるという対決モノ。出羽海一門、高砂一門、二所ノ関一門、時津風一門、伊勢ヶ濱一門と5つの部屋から集まった55人の現役力士たち。勝負の世界に生きる彼らにとって、バラエティとはいえど負けるわけにはいかない。吹き出す汗を拭いながら、ちゃんこをかき込む姿は真剣そのもの。ともすればピリピリとした雰囲気になってしまいそうなところだが、その中心に草彅がいるだけで不思議と場が和むのだ。

 その大きな理由は、草彅のナチュラルなリアクションにあるのではないだろうか。MCとなれば、場を少しでも盛り上げようと、ついつい肩に力が入ってしまうもの。MCで成り上がろうという野心を持つ人ならばなおさらだ。誰よりも声を張り上げ、ゲストをイジったり、笑いを取ろうと奮闘する姿が、一般的に想像されるMCのイメージ。しかし、草彅はそんな賑やかなバラエティの現場をニコニコと眺めて自然に楽しんでいるように見える。だから、どちらかといえば視聴者に近い視点でその場の空気をとらえているのかもしれない。

 番組では冒頭に、2000年放送の草彅主演ドラマ『フードファイト』(日本テレビ系)の決め台詞「俺の胃袋は宇宙だ!」が披露された。シソンヌ 長谷川忍からその話題が振られると、草彅は「ずいぶん古いところから引っ張り出してきましたね」なんて率直な感想を述べて笑いを誘うのだが、そんな謙遜で終わるだけではないのが彼らしいポジティブさ。「だから、私が! ありがとうございます」と今回のMCに抜擢された喜びを素直に表す。

 そして各一門が誇る力士飯が紹介されるたび、興味津々に「おいしそう」と前のめりになる。なかでも、高砂一門の力士飯・お吸い物パスタを試食した時には「めっちゃうまい! これね……本当うまいよ(笑)」「マジでうまい! これは流行りますね」と、聞いている側も思わず食べたくなってしまうほどのベタ褒め。かと思えば、後半の歌うまバトルでは“魂ポイント”を判定することになった草彅が、「最後のハモリのところが、誰かもう1人上のラインにいってほしかった。そこのパンチが8点になった」と冷静なジャッジを下す場面も。

 控えめに見えながら華のある存在感を放ち、それでいて力み過ぎることなく締めるところはしっかりと締める。とにかく、そのバランスが絶妙なのだ。だからこそ、力士たちの真剣勝負がメインのコンテンツでありながらも、家族で楽しむゴールデンタイムにふさわしい、ほのぼのとした番組にまとまったのだろう。

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