Turnstileのハードコアに宿る巨大なスケール 緩急自在な演奏でフロアを踊らせた来日公演

Turnstile、初の来日公演レポ

 そもそも、今回のライブは冒頭で書いたように2,500人規模のライブハウスで開催されているのだが、ハードコアというジャンルにおいては、必ずしも規模が大きければいいというわけではない。むしろ、100人から(多くても)数百人くらいが適正というケースの方が多いのではないだろうか。しかし、この日のTurnstileは、Zepp DiverCityどころかもっと大きなステージでも余裕で通用するであろう壮大な音像を軽々と鳴らしていた。それはまさに、(強い芯を持ちながらも)様々なジャンルの要素を取り入れたユニークなハードコアサウンドと、バンドメンバー全員がメインを張りながら自由自在に緩急を操る演奏能力の高さによるものなのだろう。

Franz Lyons
Franz Lyons

 また、このように書くとオールドスクールなハードコアと比較して「暴れられないのではないか」という印象を抱く人もいるかもしれない。だが、実態はその逆であり、その音を身体で捉えようとすればするほどに、そのサウンドの奥深さを前にして「この音にもっと呼応できるはずだ」という感覚を抱くのである。ライブ全体を通して「もっといける、もっと一体になれる」と思いながらその音とひたすらに対峙していくのは、もはやある種のスピリチュアルな体験であり、ライブ後半で披露された「ENDLESS」における〈Break in〉という絶叫に合わせて拳を振り上げている時に、漠然とではありつつも何かを掴んだ気がした。これは、きっと筆者だけではなく、この場に集まったたくさんの観客にとっても近い体験があったのではないだろうか。ライブが進むごとに会場全体に広がっていく渇望感と幸福感は、まさにこのバンドの持つ特異性を象徴していたように感じられる。

Meg Mills
Meg Mills

 だからこそ、この日の最後を飾ったハードコアアンセム「T.L.C. (TURNSTILE LOVE CONNECTION)」でたくさんの観客がステージへと上がって大団円を迎えていた時、誰もが笑顔になりながら、その音と一体となって踊っていたのだろう。だが、そんなパーティ状態のステージにおいても、誰よりも高い位置に登っていたのがボーカルのBrendanである。その姿は、まさに人々の繋がりを求め、私たちを新たな世界へと導こうする、シーンの先頭に立つ人物に他ならなかった。

 何度も書いている通り、2,500人規模でのハードコアのライブはそもそもが異例だ。だが、この音はもっと大きな場所で鳴るべきだし、もっと多くの人に届くべきである。そして、誰もがそう感じるからこそ、Turnstileは大きな存在となっていったのだろう。この日のライブは、その勢いが今後も止まることなく続いていくことをあまりにも見事に証明していた。

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