『ユイカ』、ファンの目の前で歌声届けた初のワンマンライブ 歌い続ける理由と新たな一歩

「やっと会えたね!」

 シンガーソングライターの『ユイカ』が、自身初のワンマンライブ『『ユイカ』1st LIVE「Agapanthus」』をKT Zepp Yokohamaにて開催した。普段は顔を見せず、TikTokやYouTubeなどを通して歌を届けてきた彼女。公演日の6月27日は、3年前、彼女が初めて発表したオリジナル曲「好きだから。」が配信された日でもある。デビューからちょうど3年、ファンの目の前で歌声を届けることが叶ったライブは、『ユイカ』の新たな一歩を感じさせるものだった。

 薄暗い照明のなか、ライブのオープニングを飾ったのは「序章。」だった。〈ここで歌っているから/背中押すから/それが私の夢だから〉――決意表明ともとれる歌詞を、彼女はアコースティックギターを奏でながら力強く歌い上げる。『ユイカ』にとって、この3年間はまだ序章だったのかもしれない。そうだとするならば、おそらく今日が本章の幕開けだ。薄暗かった照明が最後にパッと明るくなり、彼女の姿が鮮明になった瞬間、客席からは大きな(それは本当に大きな)歓声があがった。

 「はじめまして、『ユイカ』です!」と元気よく挨拶すると、ここからは積極的に観客を巻き込んだライブを展開していく。「スノードーム」ではクラップを求め、「ひそかな願い。」の歌唱前には、曲中のシンガロングパートを観客と練習することに。「え、みんな歌ってた?」「もう一回いくで!」と煽り続ける彼女によって、客席にもどんどん笑顔があふれていく。練習の成果もあり、盛大なシンガロングが加わった「ひそかな願い。」を歌い終えると、『ユイカ』は嬉しそうに「ライブって楽しいな!」とひとこと。

 続いて、自身が尊敬しているアーティストだというアマアラシ(ミセカイ)がアレンジを行った「イマジナリーフレンド」を披露した。そこからシーンがガラリと変わるように、ロックチューン「嘘」へ。『ユイカ』の楽曲は可愛らしいイメージのものが多く、攻撃的なサウンドと彼女の低音ボーカルが響くこの曲は異彩を放つ。この日のライブでもよいスパイスとなっており、ソングライター、ボーカリストとしての彼女のはかり知れない可能性を感じさせた。

 観客へ着席を促し、「わがまま。」「桜想」に続いて届けられたのは、大学受験のために音楽活動を一時休止する直前に発表された「17さいのうた。」。人生の選択をしなければいけない、当時の彼女の気持ちが詰まったナンバーだ。〈拝啓、過去の私へ。/今の私は/ずっと夢見ていたこと叶えてるよ。〉――17歳の自分に贈るかのように、『ユイカ』は優しくも力強い声で歌い上げる。彼女が夢に見ていたきれいな景色は、今ここに広がっている。

 バンドメンバーの演奏を経て、アルバムのジャケットで着ていた衣装に着替えた『ユイカ』は「恋泥棒。」を披露。「すないぱー。」ではハンドマイクでステージ前面に歩み出て、手を振ったり座り込んだりしてファンと近い距離で歌を届けた。賑やかなステージを繰り広げた後は、1stアルバムの表題曲「紺色に憧れて」へ。自身が音楽を始めるきっかけを歌ったこの曲で、あらためて〈歌い続ける〉というメッセージを届けた。

 今日のライブについて、『ユイカ』は「「好きだから。」の誕生日にやりたかった」と、自身が熱望して実現したのだと明かした。“Agapanthus”(アガパンサス)は6月27日の誕生花。さらに、“ラブレター”や“恋の訪れ”といった花言葉があり、「好きだから。」のイメージにぴったりだと思ったことからライブタイトルにしたという。

 彼女がTikTokに初めて投稿したオリジナル曲「好きだから。」は、台湾や香港などのSpotifyバイラルチャートで1位を獲得するなど、瞬く間に海外へ広がっていった。自身の出発点であり、人生を変えた大事な曲を、彼女は最後に心を込めて歌い上げる。ラストのサビではハート型の紙吹雪が宙を舞った。

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