ENHYPEN「運命の糸がもっと強く、絶対に解けないものに」 ワールドツアー埼玉公演徹底レポート

 ENHYPENが、ワールドツアーの日本公演『ENHYPEN WORLD TOUR ‘FATE PLUS’ IN JAPAN』を開催した。6月11日から13日までさいたまスーパーアリーナで行われた埼玉公演から、2日目の模様をレポートする。

 気候の不安定なシーズンにもかかわらず、この日の最高気温は29度。“晴れ男集団”の名に違わない快晴の下、待ち侘びたENGENE(ファンの呼称)の熱気が温度をさらに上昇させていた。

 定刻、ENHYPENの世界観を象徴するような映像が流れ、重厚な扉の奥からメンバーが登場すると、「Drunk-Dazed [Japanese ver.]」で幕が上がる。地を這うJUNGWONの力のこもった瞳など、一挙一動の重みがリアルに感じられるライブならではの質感に会場には悲鳴が響き、ラストのサビで上がった火柱にも劣らぬ勢いで7人はリズミカルに躍動する。ダンスパートを挟んだ「Blockbuster」では、GLAYとのコラボを経てロックバイブスにさらに磨きがかかったJAYがひときわ輝きを放った。

 「ENGENEのみなさん、ENHYPENの『FATE PLUS』へようこそ!」――元気よく挨拶するNI-KIに続き、SUNGHOONも「去年の9月の京セラドームと東京ドームの『FATE』に続いて、パワーアップした『FATE PLUS』で会えて嬉しいです!」と会場を見渡す。JUNGWONが「今日のENGENEからすごくいいエネルギーが感じられますが、その理由は……」と前置きすると、「ENGENEとENHYPENは“CONNECT”!」とお決まりの“コネクトポーズ”で会場が一体に。また、JAKEが「ENGENEが『結婚してください』とたくさんおっしゃるんですが、未来のワイフがこちら(下手)のどこかにいるような気がします」と話すと、JAYが「JAKEさんの運命の人(探し)、ぜひ楽しんでください!」とノリノリの仲のよさも見せた。

 前半の「Let Me In (20 CUBE) [Japanese ver.]」、「Flicker」では、はじめは氷のなかに閉じ込められていたモニター中の心臓が徐々に溶け、鼓動を速めていく模様が映し出される。「FEVER」で会場が真っ赤に染まると、愛と人間関係にフォーカスした扇情的なこの曲を象徴するように心臓も赤々しく鼓動。サビで炎に包まれた直後、続く「Still Monster」で真っ黒に染まり、棘のあるバラが突き刺さった心臓は、過去の影に苦しむ心情の象徴だろうか。

 力強く前に進む様子を描いた「Future Perfect(Pass the MIC) [Japanese Ver.]」と「Blessed-Cursed [Japanese ver.]」では、シルバーと白のメタリックな衣装で登場。ほぼ休憩なしで踊り続けるメンバーの頬は軽く上気し、いつもはキュートなSUNOOも、透明感あふれる金髪から瞳を覗かせていたずらな表情で魅了する。

 VCRが明けて響いたのは「ATTENTION!」という叫び声。扉の奥から階段に腰掛けて再登場した7人は、開放感あるロックサウンドで駆け抜けるようにステージ左右に広がり、観客と視線を交わしていく。間奏でエレキギターを奏でたJAYがラストサビ前にギターを放り投げる姿はまるでロックスターのようだ。

 一音目から歓声が上がった「ParadoXXX Invasion」では、ENGENEの掛け声も演出の一部となり、ノリのいいサビでカラフルに揺れるペンライトが華を添える。「埼玉叫べ!」とJAKEが声を上げると、SUNOOがその肩を組み、目がなくなるほどの笑顔で一緒に頭上に大きなハートを作ってみせた。続いてJUNGWONが「準備はいいですか? Everybody make some noise!」と叫び、7人はラグビー場のような場所を背に、ベンチに腰掛ける。「Tamed-Dashed [Japanese ver.]」でお馴染みのラグビーボールをパスしながら歌声のバトンを繋ぎ、HEESEUNGがサビでボールに口づけて観客席へ蹴り上げた。

 ENHYPENでは日本人メンバー・NI-KIを中心に日頃から日本語が飛び交うが、この日もJAYの日本語力が炸裂。JUNGWONが「9曲連続で(楽曲を)お届けしました」と話すと、「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」と耳馴染みのあるフレーズを流暢な日本語で話して笑いを誘ってみたり、SUNGHOONが「JAYさん、昨日よりも(日本語)上達してるね」と褒めると、JAYは「じゃあ結婚式のMCは僕がしますね」とカメラ目線で返答したり。そんなわちゃわちゃのなか、「このムードを台無しにしてごめんなさい!」と次のステージの準備を促すHEESEUNGの最年長らしさも垣間見えた。

 中盤では、ユニットに分かれて楽曲を披露。「TFW (That Feeling When)」の見どころは、長い間夜遅くまで練習していた(HEESEUNGが明かしていた)というJAYのギターによるスペシャルイントロだ。序盤にミスをしてしまい、「ごめんねえ」ともう一度やり直すかわいらしさも生演奏ライブの醍醐味だ。HEESEUNGのピアノ伴奏で歌い上げる「Just A Little Bit」では、ENGENEのスマホの光が会場を優しく照らし、一体感を増していく。

 その後もメンバーは「Polaroid Love」、スタンドマイクで歌唱した日本デビュー曲「Forget Me Not」、6匹のピカチュウと遊ぶ「One and Only」でステージを楽しむ。HEESEUNGのフェイクが光る「SHOUT OUT」では、柔らかく繊細な声と芯のある声の使い分けが上手い彼の歌唱力の高さを改めて感じることができた。

 恒例のサプライズステージでは、NI-KIが「ちょっと内緒で準備しました」とConnor Price & Haviah Mightyの「Trendsetter」のソロダンスを披露。5月10日にYouTubeで公開された、“その月のアーティスト”に焦点を当てたコンテンツ「Artist Of The Month(ATOM)」でお披露目した作品だけあって熱狂する会場に、NI-KIは「『AOTM』見た人いますか? 続きは『Dance JAM』でやりたいと思います」と話して公式ダンスコンテンツでの再来を期待させた。

 MCではJUNGWONが「イヤモニで声が入ってきたんですけど、JAYさん、何か食べているみたいです。JAKEさんが『今食べる時間じゃないだろ』って言ってます」と舞台裏のやりとりをENGENEにリポートする茶目っ気を発揮。食べ物の話の流れでNI-KIが「昨日は牛タンと明太子パスタと……ENGENE(の愛)を食べました」と言いながらニヤリと笑うと会場には悲鳴に似た歓声が響きわたり、JUNGWONが「今TBSの生中継中だよ」と冷静になだめたり、戻ってきたJAYがNI-KIとJUNGWONに「何食べた?」「気になって仕方ない」と詰め寄られて「はちみつとバナナ」と回答するとJUNGWONが「バナナが好きですか? ENHYPENが好きですか?」と愛嬌ある“ダル絡み”をし、「もちろんENHYPENが好きだよ」「わかったから早く行けよ、うるさいから(笑)!」とJAYにあしらわれたりしていた。

 メンバーがフリースタイルを踊るペットボトルスピンコーナーでは、兄いじりに余念がない末っ子NI-KIが「今日もJAYさんが当たるように頑張ります」と話す一方、JAYは「毎日こうやっていじられて嬉しいよ」と、もはや慣れた様子。3回目まではJAKE、SUNOO、NI-KIが当たり、最後に始まった“JAYコール”で自分の番が来たJAYが、SUNOOに足を押さえてもらってその場で腹筋を開始。突然巻き込まれたSUNOOの必死の表情も印象的だった。中盤のトリを飾る「Go Big or Go Home」では、ラストサビ前のSUNGHOONのウインクが悲鳴にも似た歓声を誘う。

 重い扉が開き、ゆっくりと歩いてくるNI-KIのソロダンスにため息を溢していると、血に染まった赤黒い衣装に身を包んだ7人が踊り始めるのは「Chaconne」。「Bills [Japanese ver.]」や「CRIMINAL LOVE」では切なげに顔を歪めながら、視線の落とし方、見せ方ひとつとっても自分のスタイルをうまく盛り込んでくるNI-KIのダンスや、妖艶な表情をしたSUNGHOONの力強いヒット、憑依したように舞い踊るJUNGWONなど、火照った表情でパフォーマンスするメンバーの表現力が何倍にも研ぎ澄まされる。攻撃的な表情でクールに歌い上げた「One In A Billion」では、右耳のイヤモニが取れるほど激しく踊るHEESEUNGの姿も。彼ら自身が「僕たちの音楽テーマがいちばん詰まった区間」だと話すように、まさにENHYPENの世界観をとりわけ満喫できる後半戦となったのではないだろうか。

 『FATE PLUS』ツアーからセットリスト入りし、日本公演でも本ツアーが初披露となる「Fate」では、向かい合うJAYとSUNOOの演技に会場中の視線が引き寄せられた。一瞬にして会場がオレンジ色に染まった瞬間、「Bite Me [Japanese ver.]」のイントロが公演のラストスパートを告げる。ストリングスの音色と絡み合うダークな世界観が一層切なさと哀愁を引き出し、歓声で呼応するENGENEの高揚感を感じさせたのち、真っ赤に照らされた巨大な月の下部にツアータイトルが表示され、本編は幕を閉じた。

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