清 竜人25は“今”求められるアイドル? 現代のヒットの条件とも合致するグループの持ち味

クマリデパート / ぶどう♡Grape♡For♡You♡/ MUSIC VIDEO /

 清 竜人25は、ひとえに清 竜人のプロデュースにおける手腕が遺憾なく発揮されたグループだ。これまで数々のアイドルグループや声優への楽曲提供を行ってきたが、清 竜人25は男女の構成比がまず他のプロジェクトと決定的に異なっている。また楽曲はどれも夫人たちとの関係性を前提としたものばかりで、このグループのための書き下ろしでないと成立しない。その点、彼はソングライターとして当て書きに長けているタイプだったのが功を奏したように感じる。例えば、でんぱ組.incの「結婚してもMAMAになっても君は永遠にぼくのIDOL♡」は、メンバーの古川未鈴が結婚したことを受けて制作した曲であることは想像に難くないし、結婚しても変わらずに応援し続けるファンの気持ちを代弁している。クマリデパートの「ぶどう♡Grape♡For♡You♡」は、グループが当時日本武道館公演を控えていたことから武道(館)=ぶどうに引っかけて作られたユーモラスな楽曲だ。アイドルソングは「誰が歌うか」が特に重要なジャンルであり、声質や個性、その時置かれている状況などが楽曲とリンクすることで歌はその人のものになる。第一期のオーディションで選ばれた夫人たちは芸能活動未経験だったメンバーが多く、当初は必ずしも歌唱やダンスのスキルが高いわけではなかった。このメンバーがグループとしてのストーリーの中で何を表現すればいいのか、清 竜人による的確なディレクションが夫人たちを輝かせ、アイドルとして成長させたのだ。

清 竜人25「ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング」ラストコンサート@幕張メッセイベントホール

 また、そもそもの話にはなるが“一夫多妻制”というコンセプトが群を抜いて面白かった。全員が清の姓を名乗る夫人たちはみな「竜人くんが大好き」という設定で、楽曲でも夫婦としてイチャイチャする様子が描かれる。アイドルのラブソングでありながらファンに疑似恋愛的な感情を抱かせる隙がなく、「ラブソングを歌うのに恋愛禁止が主流」というアイドル文化のある種の矛盾を逆手に取ったようなところもあった。その上で一夫多妻制というファンタジーに徹することで楽曲の多くにハッピーな空気が通底し、ただただ楽しいエンタメへと昇華されるありさまには、その手があったか!と思わず唸ってしまったのを覚えている。ただ、夫人個々のキャラクター設定に関しては特段作り込まれていたわけではない。よって生身の人間としてのリアリティも同時に感じられ、本当の家族のような愛情が芽生えていくドキュメンタリーとしての側面もあったように思う。多種多様なアイドルが全国から次々に登場しカオスを極めた2010年代のアイドル文化の極致とも言える存在だった。

 今回の新メンバーに関しては、オーディションではなく清 竜人自らアプローチをしたのだという。7月11日にKT Zepp Yokohamaで行われるお披露目ライブに向け、現在はSNSで新メンバーの一部をとらえた写真を公開する、いわゆる“匂わせ”が行われている段階だ。芸能活動歴のあるメンバーが含まれていることがすでに予告されており、わずかな手がかりからファンによる予想合戦が加熱している。果たしてどんな驚きの人選が待っているのか、注目だ。

清 竜人25 再結成

 また第一期の活動時は、女性アイドルのヒットの指標としてまだCDチャートが機能していた最後の時代であったように思える。清 竜人25は他のアイドルと比べて接触系のイベントが少なかったためかチャートアクションはあまり派手ではなく、記録よりも記憶に残るグループだったと言えよう。しかし解散から7年経った現在は、SNSからヒットが生まれる時代である。初見の強烈なインパクトとキャッチーなダンス、お洒落で耳に残る楽曲……このグループの持ち味は現代のヒットの条件とも合致する部分が多く、今後はいよいよメインストリームに切り込んでいくことになるかもしれない。再始動の発表とともに早速TikTok公式アカウントが開設されており、世界を視野に入れたバイラルヒットにも期待したいところだ。

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