リュックと添い寝ごはんが紡ぐ物語の“始発” 新たな決意と覚悟をもって臨んだツアー初日
リュックと添い寝ごはんのニューアルバム『Terminal』は、「終着駅」を意味するアルバムタイトルやアートワークに描かれた空飛ぶ列車の絵が物語るように、さまざまな感情やできごとを通り過ぎながら続いていく人生という旅のようなアルバムだ。そしてそれを実際に全国各地のお客さんの前に届けていくアルバムツアーという旅もまた、ロックバンドにとって人生そのものといっていい。そういう意味で、このアルバムを提げた今回のツアーがすばらしいものになることは半ば約束されていたといっていい。ただ、大学卒業という節目を迎えたバンドが、新たな決意と覚悟をもって臨むその初日。リキッドルームを舞台に繰り広げられたライブは、その予想を遥かに超えて力強く、エモーショナルで、高揚感と躍動感に満ち溢れたものとなった。自らも旅を続けながら、聴き手一人ひとりの日常にも優しく寄り添ってその背中を押す、リュックと添い寝ごはんらしい一夜。こうしてバンドが変化を重ねながら前に進んでいく様子を間近で見ることができるのが何よりも嬉しいし、頼もしい。ここから始まるツアーはもちろん、その先に広がる彼らの未来までが一気に視界に飛び込んでくるような、感動的なライブの模様をレポートする。
アルバムのコンセプトに合わせて開演前の場内アナウンスも電車の車内放送風。日本語だけでなくご丁寧に英語や中国語でのアナウンスも用意され、フロアを埋めたオーディエンスの旅気分は否が応でも高まっていく。そこにアルバムのオープニングSEでもある「Attention」が流れると、メンバー4人が登場してライブは始まっていった。ツアーはまだまだ続くのでセットリストの詳細を書くことは控えるが、『Terminal』の収録曲である「恋をして」をはじめアッパーなロックチューンを立て続けに繰り出す序盤から、明らかにバンドのテンションが違う。まるでここにいる全員を引き連れていくとでも言わんばかりのパワーが、一気にリキッドルームのボルテージを高めていく。松本ユウ(Vo/Gt)は何度も「いけるか!」と叫び、ついてこいよとばかりにフロアを煽る。その中で披露された軽快なソウルチューン「everyday」では早くも特大のコール&レスポンスとシンガロングが巻き起こり、会場中に幸せなムードが溢れ出した。堂免英敬(Ba)のベースソロにも、それをかき消すほどの大歓声が飛ぶ。見れば、「いいねえ」とつぶやく松本はもちろん、その後ろでドラムを叩く宮澤あかり(Dr)も、バリエーション豊かなギターサウンドで楽曲を彩るぬん(Gt)も笑顔だ。
「ツアー初日、無事迎えることができました!」と序盤を終えて松本が挨拶。「人がいるねえ」と堂免も宮澤も嬉しそうだ。ここで堂免がメンバー全員この春で大学を卒業したことを告げると「おめでとう」の声と拍手が飛ぶ。堂免は確定申告の書類の職業欄に「ロックスター」と書いて、自分が学生ではなくなったことを改めて実感したらしい。そんな話から、同じようにこの春で新たな環境に飛び込んだ人たちに向けて「未来予想図」が届けられる。刻まれるギターにオーディエンスの手拍子が同調し、そこに宮澤のキックドラムが重なる。まさにグイグイと未来の扉を開けていくような、胸高鳴る音が再びリキッドルームをひとつにしていく。さらにその胸の高鳴りを加速させたのが、続けて披露された「反撃的讃歌」だ。強い意志の滲む歌を塊のようなバンドサウンドが後押しする。今まさに新たな未来の入り口に立った4人のリアリティが、この曲にさらなる力を与えているのがフロアで観ていても伝わってきた。