TeddyLoid、満島ひかり迎えた『コードギアス 奪還のロゼ』主題歌のプロデュースで新境地 近年のアニソンの潮流も語る
2006年にTVアニメ第一期『コードギアス 反逆のルルーシュ』が放送されて以降、日本を代表するアニメのひとつとして愛され続ける『コードギアス』シリーズ。2012年の『コードギアス 亡国のアキト』や2017~2018年の劇場3部作を経て、2019年の『コードギアス 復活のルルーシュ』でルルーシュの物語がひとつの区切りを迎えたことも記憶に新しい同シリーズが、『コードギアス 奪還のロゼ』として新章をスタートさせた。
『コードギアス 奪還のロゼ』は、新たな主人公・ロゼを迎え、『復活のルルーシュ』のその後の世界を描く完全新作アニメーション。全12話のシリーズ作品を、OP/EDを含めた形で3話分ずつまとめて劇場公開する形式が取られており、現在第一幕の上映がはじまっており、第二幕の上映が6月7日よりスタートする。
そのエンディング主題歌を担当したのが、日本のみならず世界でも活躍するプロデューサー・TeddyLoid。彼が作曲を手掛け、満島ひかりがボーカルと日本語詞を担当した「ロゼ (Prod.TeddyLoid)」の制作過程について、TeddyLoid本人に聞いた。(杉山仁)
『コードギアス』の人間ドラマを表現する楽曲に
ーーまずはTeddyloidさんと『コードギアス』シリーズとの思い出について聞かせてください。このシリーズにどんな魅力を感じていますか?
TeddyLoid:やっぱり、『コードギアス』といえば、日本アニメの歴史上に残る作品の一つだと思っています。それぞれのキャラクターが魅力的だし、バトルシーンも熱いし、バトルにともなうキャラクター同士の駆け引きにも、すごくドラマがありますよね。日本のアニメの色んな要素が詰まっている作品だと思います。ただ、僕はまさか続編が出るとは思っていなかったんですよ。
ーールルーシュたちの物語は、『復活のルルーシュ』で一区切りついた感もありました。
TeddyLoid:そうなんです。それもあって、今回新たな主人公が登場して、続編が出ることになって、そのエンディングのお話を自分にいただいたときは、とても驚きました。
ーーアニメ制作チームからのオーダーはどんなものだったんでしょう?
TeddyLoid:今回は普段の僕のサウンドとは違う、バラード調でドラマティックなものを求められていて、新たな挑戦となりました。それに、今回の『奪還のロゼ』は川井憲次さんが劇伴を担当されていて。僕は幼少期の頃から川井さんをリスペクトしていて、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や『さよならの朝に約束の花をかざろう』『スカイ・クロラ』のような作品の音楽を好きで聴いてきました。川井さんはストリングスを使ったオーケストラサウンドとギターやドラムサウンドを融合させるのがすごく得意な方なので、彼が参加されるのであれば、僕もそういう「ハイブリッドな楽曲」にしたいと思っていました。
ナイトメアフレームが戦うバトルの疾走感やキャラクターそれぞれのドラマ性、作中で展開されるチェスをモチーフにした頭脳戦や心理戦の雰囲気ーー。そういった、この作品らしい駆け引きや疾走感のようなものを楽曲に落とし込んでいった感覚です。
ーー実際、今回の「ロゼ (Prod.TeddyLoid)」は壮大なオーケストレーションやバンドサウンドとが見事に混ざり合ったものになっています。
TeddyLoid:僕の今までの作風とはかなり違っていて、『奪還のロゼ』という作品に寄り添った曲になったと思います。作曲は一緒に曲をつくったAdd108と相談しながら進めていき、全体のストリングスの組み方を考えていったり、生ドラムを起用したのは「人間性」を表現したいという気持ちからでした。そのために変拍子のような(規則的ではない、ランダムな)要素を加えたりもしています。作品を観た方は分かると思うんですけど、ロゼは二面性を持っている人物なので、その魅力を表現したかったんです。兄のアッシュとの複雑な関係性もそうですよね。そういった部分も含めて、作品で描かれる人間ドラマの魅力を、「一筋縄ではいかない曲」で表現しようと思いました。
ーービートパターンも曲の中で次々に切り替わっていくのが印象的です。
TeddyLoid:そうですね。曲の中でビートを一緒くたにするのではなくて、「ここはバトルの疾走感があって、でもここはまた違って……」というふうに、色んな要素を再現したいと思っていました。1曲を通して、作品の色んなシーンを連想できるようなものにしたいと思っていました。
ーー深みのある作品だからこそ、楽曲にも色んな要素が必要だった、と。
TeddyLoid:はい。逆に、リミックスとして担当した「ロゼ (Zero Mix)」はストレートなリキッドドラムンベースになっていて、さらに進化した『コードギアス』のバトルシーンをイメージしています。こちらは疾走感全開で、バトルシーンにすごく合うものになっているはずです。
ーー今回、特に苦労した部分や工夫したことはありますか?
TeddyLoid:やっぱり、僕が今まで全く作ってこなかったようなタイプの楽曲だったので、普段とは違うフィーリングで制作できました。そのうえで、これは満島ひかりさんも言われていましたけど、「作品に沿った楽曲」であることを大事にしました。僕の場合、普段はリミックスやプロデュースなども含めて、「Teddyさんの好きなようにやってください」と任せてもらうことが多いので貴重な体験になりました。
工夫した点としては、サビに入る瞬間にドラムがいきなり入ってきて、ストリングスがバーっと鳴るところですね。あの部分は、『コードギアス』シリーズの叙情的な魅力を特に表現できたのかな、と思います。実はデモ段階では、サビ以外のA~Bメロやバースの部分にももっとドラムを足していました。でも、最終的にそのパーカッションはほとんど抜いて、サビに向けて盛り上がっていくように変更しています。あと、今回バイオリンはLisakoちゃんにお願いして、僕のスタジオで演奏してもらったものを、コンピューターに取り込んでエディットしています。
ーーLisakoさんはEDMに合うストリングスも弾ける方だそうですね。
TeddyLoid:打ち込みに対するバイオリンのアプローチがすごく上手い人で、クラシック以外の様々な作品でも弾いたりしていますね。彼女が色々なフレーズをバーっと弾いてくれて、それを僕がエディットして完成させました。バイオリンに関しても、曲自体と同じように「1曲の中で起承転結をつくってほしい」とお願いして、静かなフレーズから動きのあるフレーズまでを弾いてもらっています。メロディに関しては、満島ひかりさんのボーカルを存分に活かせるものにしたいと思っていました。ひかりさんの歌は透き通っているんだけれど、そこに芯があると思っているので、その魅力がしっかりと感じられるように考えていきました。