XG、ラップ動画の魅力は“遊戯性”にある 自由さとユーモアで示すヒップポップへのリスペクト

 思うに、今の時代、ここまで自由な形で“遊ぶこと”を達成している、ということそのものが彼女たちの特出しているところなのだと思う。なぜならその核には、カルチャーへの愛とそれを再現し、自らのオリジナルのスタイルに取り入れようとするクレバーさと熱意が確実にあって、それらを結実させることは、決して誰にでもできることではないからだ。ヒップホップに対する徹底した想いがベースにあるからこそ自由に遊ぶことができる。実際彼女たちのフロウは多くのアーティストからの影響を感じさせ(カーディーB、ニッキー・ミナージュ、2Pacからエミネムまで頭をよぎる)、ビートジャックの企画は、その曲ならではのモチーフや言葉遊びを取り入れている。

[XG TAPE #4] Trampoline (JURIN, HARVEY, MAYA, COCONA)

 例えば、遊びの感覚は、最も直近のリリースである「Trampoline」にも引き継がれている。JURIN、HARVEY、MAYA、COCONAが揃ってラップを披露するこの曲は、原曲のミッシー・エリオットによる、ユーモラスで気怠いコーラスをトレースしながら、軽快に各々のヴァースを披露している。既存のものから、リスペクトと工夫で、新しいものを作り出す。それは一種のヒップホップ精神だ。ヒップホップにおけるビートジャックの、つまり既存のものに乗っかることの楽しさが、そこには理想的な形で溢れていると言えるのではないだろうか。

 2分に満たない尺、連続投稿、その上でキャッチーなネタ使いを試行する、まさに現代的と言えそうなこの動画企画は、いい意味で理想的な遊びの感覚に溢れている。身軽で、そして自由な感覚を、高いレベルで完成させる。そのこと自体は手軽さからは程遠い、困難なものでもあるかもしれない。XGの一連の企画には、そのような本気の遊びに耽る様子が窺える。

 少なくとも彼女たちの“遊び”は、信じるに値すると思わされる。来たる次のリリースは5月21日、XG初のオールラップソングと言われるシングル「WOKE UP」。同曲は808ベースに東アジア特有のサウンドが加わった型破りなスタイルで、強力なヒップホップアイデンティティを感じさせるトラック。4月の情報解禁以降、楽曲関連情報がなかったためその続報が待たれていたが、JAKOPS(SIMON JUNHO PARK)が先週自身のInstagram Liveで同曲について口を開いた。

「WOKE UPは、荒く強烈で危険な雰囲気を感じながらも、上品で真のXGの本質を体現した作品に仕上がっており、 韓国のヘグム、日本の胡弓、中国の二胡という弦楽器をサウンドに使用しています。ミュージックビデオもアーティストフォトも本当にクレイジーでクールな内容になっているのでぜひ期待して欲しいです!」

 また、配信内で、「WOKE UP」の曲のスニペット(一部)が公開され、このサプライズに視聴者は歓喜し、その切り抜き動画がSNSで拡散されている。

 これまで以上にヒップホップと親密になっていく彼女たちのブレなさと自由でスマートな感触に、次どういった景色を見せてくれるのか、我々も飛び跳ねる準備をして、楽しみに待つほかないだろう。

※1 https://www.vogue.co.jp/article/2024-january-xg-cover-interview-japanese

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