XG、ラップ動画の魅力は“遊戯性”にある 自由さとユーモアで示すヒップポップへのリスペクト

 〈飛び跳ねる準備はできている〉ーーTrampoline

 XGが話題だ。今や彼女たちは様々なものの中心にいるとさえ言えるかもしれない。彼女たちは軽快に飛び跳ねながらも、行き先に迷う私たちに一つの道を提案する。先進的なのか、はたまた彼女たち自身がトレンドであるということなのだろうか。

 こういったアイコン的な存在は、現在において決して少なくはないが、その中でも、従来のアイドル性だけではなく、コアな音楽的背景をスタイリッシュなファッション、ビジュアルに落とし込み、一過性のものとして消化されないような地力を携えている彼女たちの存在感は、やはり特別なものなのだろう。そんなXGが連続投稿した楽曲ビデオが、今、熱狂的な彼女たちのファンを超えて、ヒップホップのリスナーからも注目を集めている。

 今回の一連のビデオは、以前から継続しているラップ企画「XG TAPE」の一部として投稿された。「XG TAPE」は、メンバーたちがビートジャックでラップをする動画企画であり、過去にはJ.I.DやRosalía、Cordaeなどの楽曲をビートジャックしている。

[XG TAPE #4] BIG MAD (HARVEY)

 そもそも彼女たちが、ヒップホップをここまで前面に押し出しているのは、XGALX総括プロデューサーのJAKOPS(SIMON JUNHO PARK)の影響や、メンバーたちのヒップホップやR&Bへの愛が前提ではあるのだが(※1)、この企画で特に注目されているのは各々メンバーのラップスキルの高さである。

[XG TAPE #4] Million Cash (MAYA)

 今回投稿された「XG TAPE 4」ではKtlyn「BIG MAD」、Connor Price & Armani White「Million Cash」、Jay-Z「Dirt Off Your Shoulder 」、Connor Price & Nic D「Still Hot」、David Guetta & Afrojack ft. Missy Elliott, BIA & Doechii「Trampoline」をビートジャック。それぞれがトラックの上で自由かつ個性的にラップを披露しているが、彼女たちのフロウやライミングを含むラップのレベルの高さは、過去の「XG TAPE」同様、強く感じることができるだろう。例えば、MAYA「Million Cash」の言葉遊び、ライミングのスキルの高さには否定しようのないものが確実にあるし、メイクマネーを軸に展開するリリックのモチーフも非常にヒップホップ的と言える。

[XG TAPE #4] Dirt Off Your Shoulder (COCONA)
[XG TAPE #4] Still Hot (JURIN)

 “ヒップホップ的”という言葉に様々な定義や解釈が存在するのは承知の上だが、少なくとも彼女たちの魅力はその遊戯性にある。つまり自分たちの大好きなヒップホップで遊んでいるという感覚。そしてそれが、いわゆるフェイクと言われるものでも、ジャンルやカルチャーへのリスペクトに欠ける姿勢でもないということが、何よりも重要なのだ。

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