新連載「天音かなたは音楽を学びたい!」:草野華余子に聞く、音楽を届けるために大事なこと「ちょっと傲慢になってもいい」

天音かなた連載第1回:草野華余子に学ぶ

どんどん僕の人生が変わっていく!(天音)

天音かなた
天音かなた

草野:逆に私も聞きたいんですけど、VTuberの方ってけっこう1週間のスケジュールを前もって出されたりするじゃないですか。でも、人間だからめっちゃしんどい日もあるだろうし、全然しゃべりたくない日もあるんじゃないかなって思うんですよね。そういう部分をどうコントロールしてるのかが気になるんですけど。

天音:経験上、気持ちが落ち込んでいるときに配信をすると、変なことを言ってしまったり、暗くなったりしてしまうんですよ、絶対に。で、最後に「みんなごめん……」みたいな感じで終わるっていう。そういうことが前はよくあったので、最近はもう1週間の予定は出してません! やめました(笑)!

草野:あははは、そうなんだ(笑)!

天音:予定を出した以上、急にお休みしてしまうとリスナーさんを悲しい気持ちにさせてしまうし、約束を破ってしまったという感覚が強くなってしまうので……僕はまだ5年しか配信をしてないですけど、やり始めたらテンションが上がるタイプではあるんですよ。とは言え、配信前には気持ちがズーンと落ち込んでることはあったりしますけどね。

草野:わかる! 私もライブでステージに立つときは、その前までズーンとしてた気持ちを捨てなきゃいけないから。その気持ちの切り替えで苦労することはけっこうあるんですよね。

天音:わー同じなんだ! こんなプロフェッショナルな方でも同じ苦労があるって知れたらもう安心ですね。

草野:プライベートの自分と、人前でしゃべったり歌ったりする自分の切り替えはアーティストなら大多数が苦労してると思いますよ。

天音:そうなんだ。僕は年に数回、3Dライブをやらせていただく機会があって。その際には自分でもかなりプロデュースするというか、時間をかけていろいろ作り上げていくんです。でも、ライブ前日とかになると「歌が下手だ。こんなのやっても意味ない。誰が聴くねん!」みたいな気持ちになってしまうんですよね。

草野:大阪弁出た(笑)。いやいや、みんなめっちゃ見てるし、聴いてるから!

天音:勝手にそう思い込んで落ち込むんですよね。自分の弱さがイヤになってしまう感じで。でも草野さんでもそんな風に思うのならば、ちょっと勇気づけられた気がします。

草野:そういうことの繰り返しが人生かなって最近すごく思うんですよね。そんな苦労があってもやめないってことは、やっぱりライブが終わった時の充足感が何物にも代えがたいってことじゃないですか。Vの方だと、喜んでくれてるファンの方のコメントを見ることもできるし。

天音:そうですね。本当にリスナーさんがいなかったら、半年で辞めてたと思います。みんなには居てもらわないと困ります。僕は本当に自信がない人間なんですよね。例えば楽曲を依頼させていただくときに、楽曲を作ることに関してはほぼ素人の僕からいろんな意見をフィードバックされることって、ぶっちゃけイヤじゃないかなってすごく考えてしまうんですよ。草野さんの場合はどうですか? 「うるさいな。これが一番ええねん!」みたいに思ったりします?

草野:考え方は人によるとは思うんですけど、私が楽曲提供をさせてもらうときは、歌ってくださる方と、その方の先にいるファンの人が喜んでくれることを第一に考えてるんですよ。だから私の主観よりも、歌ってくださる方の意見の方が正しい瞬間ってやっぱりあるんですよね。もちろん先方からいただいたリファレンスや発注の内容が間違ってるだろうってこともあるので、そういうときは素直に伝えるようにはしてます。「〇〇っぽい曲をお願いします」って言われても、それが似合う人とそうじゃない人がいるわけで。無理やり似合わない服で装飾されても、誰も嬉しくないじゃないですか。“なりたいもの”と“なれるもの”は違うし、“やりたいこと”と“求められていること”も違う。その折衷案を探すのが私たちの仕事だなってすごく思いますね。だから、楽曲提供させていただく方とは、こうやっていろんなことをたくさんしゃべりたいんですよ。

天音:なるほど。じゃあ、僕が思っていることをお伝えするのはOKなんですね?

草野:っていうか、いっぱい言われた方がいいですね。曲を書くにあたっての素材はたくさんあったほうがいいから。私の場合、最近だとそのアーティストさんが曲のテーマにしようと思っている感情についてめちゃめちゃ話を聞くんですよ。それを文章にしてもらったものから印象的だった言葉をピックアップして歌詞にすることも多いし。ご本人からの言葉が出てくるのを待つっていうのが私のスタイルですね。

天音:へぇ! すごい! 今、すごくホッとしています。今回はかなたの心を安心させるためのインタビューになってしまっていて申し訳ない感じですけど(笑)。

草野:あははは。

天音:楽曲の依頼をする際、自分は素人だっていう感覚がずっと強くあって。さらに言えば、VTuberというものが正直、まだまだポッと出というイメージもあると思うんですよね。だから曲を書いてくださる方からしたら「なんやこいつらは?」みたいな感情なのかなぁって思ったりしちゃっていて。

草野:VTuberがこんだけ社会現象になってもまだそんな心配をしてる人がいるという衝撃(笑)。全然そんなことないですよ。私の方が音楽知識や言葉をたくさん知っていたとしても、VTuberのファン、オタクのことはかなたさんの方が知ってるじゃないですか。「こういう曲は私には歌って欲しくないんじゃないかな」っていう部分に関しては、それをずっとやってきている人が作家にアドバイスするべき。だからやり取りはたくさんした方がいいと思いますよ。

天音:確かに自分を応援してくれている人のことは誰よりも知ってると思うし、ファンが喜んでくれるから頑張れるという気持ちがかなり大きいので、これから曲を書いていただくときはたくさん相談しながらやっていこうと思います。すごいな、どんどん僕の人生が変わっていく! 世の中の全員が草野さんであれって感じですね(笑)。

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