にしな、変わらぬ親密な距離で届けた歌 ツアー『Feeling』最終公演NHKホールレポ

 その後も次々と楽曲を披露しながら、一切の後悔がないように観客とのコミュニケーションを重ねていくにしな。昨年夏のリリース以降、新しいライブアンセムと化している「クランベリージャムをかけて」では、首から下げたバッグから取り出した白いボールを次々とフロアに投げながら、狂騒的なジャム空間を創り上げていく。また、今年最初のリリースとなった「bugs」では、魅惑的なダンスビートに自らの体を委ねながら、観客一人ひとりをトランス状態へと誘っていく。本編のラストを飾ったのは、にしなの真髄が宿った3曲「ヘビースモーク」、「青藍遊泳」、「1999」。壮大にして、深淵。これらの楽曲は、特にホール会場との相性が抜群だ。それでいて、手を伸ばせば届きそうな親密さも感じられる点がとても素晴らしかったし、にしなのライブらしいと思った。なお、エンドロールの映像は、今回のツアーの各会場のライブに参加した観客を主役に据えたもので、最後には、「Special Thanks : Feelingood YOU!!」の文字が映し出された。「It's a piece of cake」が象徴的だったように、今回のツアーはまさにオーディエンス一人ひとりとともに作り上げたものである、というメッセージがステージから伝わってくるようで、とても感動的なものだった。

 熱烈なアンコールに応え、再びステージに現れたにしなは、まず「ホットミルク」を披露。その後、ツアータイトル『Feeling』について「年を重ねてくると感情よりも先に思考が働くことが多くなる」と語ったうえで、それでも「いくつになっても、根拠がなくても、正しいと思うほう、好きなほうへ行く無邪気さを持ち続けたい」と告げた。続けて、「今日ここに直感に従ってくることを選んでくれて、本当にありがとうございます」と、感謝の想いを丁寧に語った。それぞれの人生の道中で、「また音の鳴っている場所で会えたら嬉しく思います」と告げ、ラストは、「シュガースポット」と「アイニコイ」の2曲で熱烈な大団円を迎えた。

 アンコール中に、今年の11月にZeppツアーを開催することをさりげなく発表していたように、にしなと観客一人ひとりのそれぞれの人生が続いていくなかで、またきっと各々がそれぞれのタイミングで再会し合える時が訪れるはず。そして、絶え間ない進化と自由な変化を重ね続けるにしなが、その再会の時にどのようなライブを届けてくれるのか。これから先の彼女の歩みに、とても期待が高まる。

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