s**t kingz NOPPOが掴んだダンスの“人間味” 初ソロ演出公演『GOOFY~マヌケな2人の間で~』ゲネプロに潜入

 ゲネが終了した直後、“やっと喋れる”ようになったNOPPOをキャッチ。話を聞いていく。

ーーお疲れさまでした! 早速なのですが、ゲネを終えた所感を教えてください。

NOPPO:厳しい目線で言うと、まだまだ細かなタイミングを合わせないとな、と思いました。最初は大まかに作って、全体像が見えてから細かく修正をしていくので、「あそこのつなぎ目はもうちょっと詰めたいな」という部分が所々ありましたね。でも、全体的には「よくここまでできたな」と思いましたし、お客さんにも楽しんでもらえると思います。今回はお客さんに時間を委ねたり、僕とJillianの空気感でアクティングが伸びたりすることが多くて。そういったところも楽しんでほしいですね。それに劇全体を通して、僕とJillianが普段のリハでやっているコミュニケーションみたいなんですよ。僕は英語が達者ではないので、いつも「おお」とか「あ〜」とか擬音で会話しているんです。それをパフォーマンスとして、見せることができていると思います。

ーーその「コミュニケーション」で言うと、以前インタビューさせていただいた時にも「ダンスコミュニケーション」という言葉を使っていらして(※1)。稽古やゲネを通して「ダンスコミュニケーション」をどう実感しましたか?

NOPPO:自分は踊るようにコミュニケーションを取っているんだなと感じたのかもしれません。「ダンスコミュニケーション」と言うと、ちょっと言葉としてかっこよすぎちゃうかもしれない(笑)。ダンスを通してコミュニケーションを取るイメージが強いと思うのですが、そうではなくて、コミュニケーションを取ることが楽しくて踊ってしまう、と言ったほうが近いのかも。それは身体的な部分だけではなく、心も踊ってしまうという意味もあります。コミュニケーションをすることがまず第一にあって、その結果身も心も踊ってしまう。今回の舞台では、それをうまく表現できているのかなと思いました。

ーーそれはどのタイミングで感じたのでしょうか。

NOPPO:Jillianはもちろん、植松さん、高橋さん、演出を手伝ってくれたおおたけこういちさんなどいろんな方と話をして、思いを共有したことで、だんだん自分のなかで明確になっていきました。会話を通して、明確にしてくれる言葉をもらったりもしましたね。僕一人で作ったというよりも、周りからヒントをもらいながら作り上げられた作品というか。いろいろな物をどんどん付け加えて作っていく、粘土みたいな感じです。

ーーうっすらとあったNOPPOさんの感覚が、舞台のリハやゲネを通してよりはっきりしたのですね。

NOPPO:本当にそうですね。出演者同士はもちろん、おおたけさん、照明さん、音響さん……話せば話すほど、コミュニケーションをすればするほど、明確になっていきました。なので、“モノ作り”という点において気づいたこともいろいろとあって。普段振り付けを作る時って、ひとりで考えることが多いんです。そのなかではアーティストに委ねたり、コミュニケーションをしながら一部分を作っていくということもある。でも、僕はそれを少し悪いことだと思っていたんです。自分ひとりで振りが作れないから相談する、みたいな。「ヒントをください」と言ってしまうと「全然固まってないじゃん!」と思われてしまうような気がしていて、ネガティブな印象を持っていました。でも、今回の舞台を通して「完璧にしなくてもいいのかな」と思ったり。ある程度の方向性を決めてチームで作り上げていく、自分がリスペクトしている人とコミュニケーションを取ってヒントをもらう――そういう隙間があってもいいんだなって思えました。

ーー今後NOPPOさんが作る作品にもいい影響がありそうですね。

NOPPO:周りに委ねて怠けすぎちゃうと、それは危険だと思うんですけどね(笑)。でも、いろいろな方の意見を取り入れてみるということは、新しい自分が生まれるきっかけになりそうです。

ーー今後の作品が楽しみです! そして楽曲の魅力や注目ポイントについても教えてください。

NOPPO:「Wonderful Piece」は、「人生っていろいろあるよね」「人それぞれの人生の形があるよね」という、大きな枠で考えた曲を作りたい、パフォーマンスをしたいという思いで生まれました。植松さんと高橋さんに、その世界観にお客さんを連れていきたいというオーダーをしてできあがりました。歌詞も本当に素敵なんです。「自分のピースはどんな形なんだろう」「重ねてみたらわかるかも」「人生においてこの経験を重ねたらどんどん大きくなっていくかな」というようなことをブロックに喩えて書いていただきました。

ーー今おっしゃっていただいたことは、NOPPOさんとJillianさんが表現することでより伝わりやすくなっていると感じました。

NOPPO:本当ですか? めちゃくちゃ嬉しいです! 表現のニュアンスもすごくこだわっているんですよ。あの場面は僕たちが公園で遊びながら歌詞を表現するんですね。歌詞を遊びに変換していくといいますか。この曲以外もそうで、たとえばかくれんぼや鬼ごっこで歌詞を表現していて。全体を通して、歌詞を遊びに変換しながら表現するチャレンジをしています。ただダンスをしてパフォーマンス的にかっこいい構成にするのではなく、公園にいるからできるパフォーマンスを曲に落とし込みました。

ーー6曲目の「シーソー」はいかがでしょうか。この曲は歌詞がすべて〈lalalalalalalalala〉です。

NOPPO:ストーリーとしては、ふたりそれぞれに行きたい方向があって、一緒に行きたいけど「こっちに行きたい」という気持ちが強すぎて、やっぱりひとりで行くことになって。でも、「君が行きたい方向もわかっているよ」という思いもある。それぞれが人生を歩んで、そのなかで悩みや無理をしていること、辛いこともあるけれど、また公園に帰ってくるという曲。でも、それを歌でも言葉にはしたくなかったんですね。そういった経験は人それぞれだと思うから歌詞は〈lalalalalalalalala〉に留めて、ダンスで伝えていこう、と。歌詞を書いてしまうとセリフになってしまう気がしたんです。僕とJillianのコミュニケーションを通して背中を押し合ったり、「仲のいい友達と一緒にいると喋らなくてもホッとする」という感覚を表現しました。

ーーそれに続くのは、7曲目の「手をつなご」です。

NOPPO:これはまさに曲を遊びで表現した曲ですね。〈ここにいるから〉と、そばにいることをかくれんぼで遊びながら表現していて、歌詞の意味をうまく遊びと融合させているパフォーマンスです。歌詞は「シーソー」の答えを言っているようなイメージです。「言葉には出さないけど、君のことはすごいと思っているよ」「いつもありがとう」「たまには寄りかかってきていいんだよ」という。友情を表現したいと思って作った楽曲です。

ーー見どころはどんな部分になるのでしょうか。

NOPPO:〈点と点がつながって 線と線がむすばれて 面と面がかさなって いつか大きな円になる〉という歌詞がキーワードになっています。これはいちばん最初に掲げた作品全体のストーリーラインなんですね。公園でひとりで遊んでいたけれど、コミュニケーションを通して人と繋がって、それがどんどん広がってコミュニティになっていくことが人生。“円”は“縁”でもありますからね。それがこの曲に集約されていると思います。

ーーブロックを円状に動かすシーンがありましたが、視覚的にも歌詞を理解しやすくなっているというか。

NOPPO:紐で繋がりやコミュニケーションを表現したり、今まで遊んでいたものがいろいろな可能性になるということをブロックで表現しています。

ーーなるほど。同公演を通してあらためて見えたダンスの可能性はありますか?

NOPPO:そうだなあ、“人間味”かな。今の時代、さまざまなアーティストの方がピシッと揃ったかっこいいダンスをやっていますが、もっと個にフォーカスしてもいいのかなと思いました。そういったパーソナルな部分が出るダンスをJillianは昔からやっているので、久々に彼女と一緒にダンスをしたことで人間味はダンスに反映されるんだなとあらためて感じました。人の個性って素敵だし、その個性やダンスの味を活かして表現をすることもめっちゃ素敵なこと。パフォーマンスなのか舞台なのかはわかりませんが、また表現したいと思えるものが見つけられたきっかけになっていると思います。

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