トンボコープ、数多のファンと夢を引き連れて次のステージへ 結成2年初ワンマン公演を観て
後半のスタートも新曲。雪村がアコースティックギターを弾きながら歌う「ルッキンバッカー」という楽曲だ。曲を終えて雪村自身が語ったところによれば、この曲は彼が高校時代に作ったものだという。「トンボコープでやるつもりはまったくなかったんですけど、メンバーに聴かせたら『いいじゃん、やろうよ』って」。後述するが、この日のアンコールでは雪村の弾き語りも披露された。そうやって雪村の「バンド以前」の物語がトンボコープの物語に繋がっていくというのは、きっとトンボコープにとって、そして雪村にとってとても大きな意味を持っていたに違いない。
鋭いサウンドを突き刺すようにぶつけてくる「PARADIGM」で空気を変えると、続けて「明日の一面」へ。ダークなムードの中、そらのギターとでかそのベースによるソロバトルも展開される。『ファースト・クライ・ベイビー』の中でもトンボコープの新たな顔を見せる2曲を連続で披露すると、「溢れる愛が止まらねえんだよ!」と雪村が叫んで「過呼吸愛」を繰り出す。アッパーなビートをオーディエンスの力強い手拍子が後押しし、LIQUIDROOMの空気が一気に熱を帯びていった。
「後ろ3人は高校のときから同じバンドをやってるんですけど、最初視聴覚室とかでライブしてたのが、LIQUIDROOMワンマンですって! 柄にもなく感動してます」
本当に感慨深げにでかそが口を開く。3人の夢に雪村の夢が合流して、ひとつの大きな物語になっていくーートンボコープはそうやって進んできたバンドだ。それぞれひとりだけだったらできなかったことでも、合わさることで叶う。そしてそこにLIQUIDROOMに集まった大勢のオーディエンスも加わる。「みんなの歌じゃない、あなたの歌、あなたひとりの歌だ!」という雪村の言葉とともに「喜怒哀楽」で生まれたシンガロングは、そんなロックバンドのロマンティックな在り方を改めて教えてくれるようだった。
そして冒頭に書いたように本編最後を新曲で締めると、アンコールでは雪村がトンボコープを結成する前のように弾き語りで「むかしむかし」を披露。お客さんのまったくいない中でギターを弾いて歌っていた過去を思い返し感慨深くなっている彼を見ると、こちらまで胸が熱くなるようだ。そこに「いいじゃん、いいじゃん」と言いながらでかそが入ってくる感じもいい。そしてトンボコープ躍進のきっかけとなった「Now is the best!!!」を披露すると、最後はもう一度「むかしむかし」。今度はバンドで鳴らされたこの曲を歌う雪村のはちきれんばかりの笑顔がすべてを物語っていた。
この日のライブ中には9月から初のワンマンツアー『WORLD ILLUMINATION』を開催することも発表された。ファイナルは渋谷Spotify O-EAST。一段ずつステップを上がりながら、トンボコープのストーリーは続いていく。その新たな始まりを目撃できた喜びが、ライブが終わった後の場内にいつまでも漂っているようだった。
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