櫻井和寿・スガ シカオら出演、スペシャルライブ『super folklore』に通底した未来への願い
スガがイベント開催後に「全てのアート、音楽、ダンス、言葉などがコンセプトで結ばれてる」とSNSで解説していたように、むしろそこに意味やメッセージ性をそれぞれが見出すことがこのイベントの楽しみ方とも言える。スガと櫻井のライブアクトの間に行われた、ダンサーの高村月、KUMIを迎えてのButterfly Studioによる「en Live Art Performance」。「過去と未来」「遠心力と求心力」といったコンセプチュアルなメッセージ性を放ちながら、その後にHana Hopeをゲストボーカルに櫻井と歌われた「to U」もまた、〈想いは繋がっていく〉と綴られている。Mr.Children「Worlds end」もタイトルの“en”と歌詞には〈僕ら繋がっている〉と歌われている、見事な選曲だ。
だが、それらのコンセプトに縛られない、櫻井和寿のソロとして自由な1曲があった。Mr.Childrenの「365日」。そのイントロと間奏部分で、櫻井がサックスを披露したのだ。これまでMr.Childrenでも、Bank Bandでも披露したことは一度もなく、人前で演奏するのはこの『super folklore』のリハーサルが初めてだったと明かし、会場はどよめく。演奏時間こそ短かったものの、綺麗なサックスの音色が「365日」のロマンチックな世界観を一層際立たせており、今後もしかしたらMr.ChildrenやBank Bandでのライブやレコーディングに繋がっていくことを予感させる一幕でもあった。
今回の『super folklore』において象徴的だったのが、1000台のドローンを用いたライブ演出だった。「en Live Art Performance」として、2023年時点ですでに存在していた演出ではあるが、櫻井の歌声、Mr.ChildrenとBank Bandの楽曲と融合することにより、これまでにないライブ空間、体験を作り出していく。主にBank Band「歓喜の歌」(小林のヴォコーダーでの歌唱にも度肝を抜いた)を皮切りにして、Mr.Children「風と星とメビウスの輪」、「HANABI」、Bank Band「こだま、ことだま。」でドローン演出が使われたが、特筆すべきは「風と星とメビウスの輪」と「HANABI」。表と裏が繋がったメビウスの輪、さらに「HANABI」のDメロの歌詞を表した水面が、光の瞬きによって表現される。どちらもMr.Childrenのライブチューンとして幾度も披露されてきた楽曲だが、スクリーンに映し出される映像とはまた異なる、独自のライブ演出であると感じた。だが同時に、大規模フェスとはまた異なる絶妙な規模感のKURKKU FIELDSのライブエリアだからこそできた演出でもあるのではないかと思いながらも、今後に繋がっていけばと願わずにはいられない。
小林がMCで触れていたように、ウクライナのような戦地ではドローンは兵器として使用されてもいる。1000台ものドローンが飛ぶ光景、羽音はある人にとっては恐怖でしかないのかもしれない。ただ、あの時4000人がまるで花火を見上げるかのようにして会場に起こった歓喜の声。そこにあったのは未来へと繋がる、灯火に似た消えない希望だったように思う。
■出演
櫻井和寿 / スガ シカオ / Butterfly Studio (guest vocal : Hana Hope / dancer : 高村月 / KUMI)
小林武史(Key) / FUYU(Dr)/ 須藤優(Ba) / 名越由貴夫(Gt) / 沖 祥子(Vl)
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