bokula.のらしさとは何か “伝わる音楽”とより深く向き合ったメジャー1st EPを語る

bokula.が表現する”本音”とは何か

「終わってしまう前提で曲を作っている」 寂しさこそがbokula.の“らしさ”

bokula.インタビュー写真(撮影=伊藤惇)

――この曲の歌詞で〈二人は素晴らしい悲しみの中に入り込んで/二度と出てこない〉というフレーズが出てきますけど、これはおもしろい表現ですね。

えい:これは依存というか束縛というか。結構僕、束縛されやすいんですよ(笑)。そういう経験というか、こっちがそういう感情になったわけではないですけど、俯瞰してみることがよくあるので。束縛する側からするとこういう感じだろうな、みたいなことを妄想で書いてみました。

――実体験が背景にはあるけど、自分のこととして書くのではなくて、そういう2人を外側から見ているような視点で。

えい:そうです。僕からしたらそういうイチャイチャしてるカップルを見るのはすごく腹が立つし、気持ち悪いなって思うんですけど、でも本人たちは幸せじゃないですか。ならいいよねっていう。

――それを〈悲しみ〉という言葉で表現してるのはなぜなんですか?

えい:だって、好きな人だったら何でも受け入れてあげたいはずなのに、わざわざあれするなとかこれするなとか、なんかめんどくさいじゃないですか。

――外から見るとかわいそうに見えるってことなんですね。

ふじい:痛いな、みたいな。

えい:それもあるし。最近結婚した友達がいるんですけど、この時間になったら帰らないといけなくて、みたいなことがよくあるんです。本人は帰りたくないのかもしれないけど。そういうのを見ているとかわいそうだなという気持ちになることもよくあるので。

――そうか、外から見ると悲しいように見えるけど、本人たちはそう思ってないかもしれない、と。

えい:だからそれを含めて素晴らしいっていう。トーンは明るくしてるけど、こっちからしたらひねくれて「痛いですよね」って、白い目で見てる感じ。

――なるほど、その歌詞の視点が、今までもあったかもしれないけど今回はすごく――。

ふじい:わかりやすくなった。

――そう、明確になった感じがする。

えい:ニュアンスは大事にするようになりました。言葉の持っている雰囲気だったり、色をもっと大事に使うようになりました。

――「怪火」もそんな感じですよね。

えい:これはもうベロベロに酔って書いた曲なので(笑)、自分でもなんでこんな歌詞が浮かんだのか本当にわからない。

――そういうことってよくあるんですか?

えい:いや、初めてでした。しかもほぼ5分ほどで書いた曲だったので、語感勝負みたいな感じです。ビートも最初からこのビートだったんですよね。聴いていてかっこいいと思ったものをそのままDTMで打ち込んだだけなんで。「火」をテーマにラフに書いた曲です。

――じゃあ、「涙ばっかのヒロインさん」もそうだけど、bokula.として新しい一面を見せてやろうみたいな強い意志で作ったというよりは――。

えい:そうですね。メジャーっていう言葉に対してかしこまるんじゃなくて、より柔軟になって「しまった」に近いですね。その意識はなかったです。

ふじい:でも、メジャーになるにあたって、僕も知識量の部分では変わりましたけどね。今回の音源、僕の中では「自分のプレイに感情を乗せる」というテーマがあって。感情を乗せるのがこんなに音として表れるものなんだっていうのを初めて知りました。

――プレイヤーとしての姿勢とか、そういうものですかね。

ふじい:それをレーベルの方から教えてもらいましたね。4曲目の「いつ失ってもいいように.」とか、バラードだったらこんな感じだろうと思ってやっていたら、「この6曲の中でいちばん力強く叩いてみて。雨に打たれてるような感じで」というアドバイスをもらって、「マジっすか?」と思って叩いてみたんですけど、聴いてみたらぶっちぎりでよかった。そういう感覚は正直、メジャーに行かないと知ることができなかった。

――そうやって具体的なアドバイスをもらうというのもそうだけど、やっぱりメジャーで出しますということが影響している部分はあると思うんです。スタッフも変わったり増えたりするなかで、改めてbokula.としていちばん強い表現とは何か、bokula.らしさとは何かということを見定めることができたんじゃないですか?

えい:ああ。何かを言われる前に、自分でそれを超えていけばいい、みんなを黙らせるものを書けばいいっていう気持ちで書いたのはありますね。そうすればbokula.らしさは消えないと思うから。そこは自分でバリアを張れたなっていう感覚ですね。

――今作を聴いていちばん感じるのはそこなんです。メジャーで出すからこそ、自分たちらしさをより強く出そうという意思が、音にも歌詞にもある感じがする。バラードでもそうだなと思うんです。

えい:そうですか?

――自分ではそんな感じはしない?

えい:でも「いつ失ってもいいように.」は2年前くらいからある曲なんです。

――同じタイトルのEPも出していましたもんね。

えい:そう。当時は感覚が違ったというか、「なんか違うな」と思って入れなかったんです。でも生活している中で、この曲のサビの部分が頭から離れないというか、ずっとループしていることがちょくちょくあったりして。それでもう1回やってみようかなってがんばって肉付けしていきました。

――2年越しで完成させてみて、どんなことを感じましたか?

えい:いい意味で固くなったというか。メッセージ性的な意味でもすごく愚直というか、しっかりした曲になったなって思っています。

――これ、めちゃくちゃいい曲じゃない?

えい:そうかなあ……。

さとぴー:(笑)。

えい:俺も正直言ったらこういう曲がすごく好きなんですけど、ウケる曲ではないのかなって勝手に思っていて。

――それは世の中的にってこと?

えい:そうです。なんていうんだろうな、大多数の共感は別に求めてないというか。

――ああ、なるほど。

えい:これはもう自分が書きたくて書いているから、いろいろな人に聴いてもらって「この曲いいよね」って言ってほしいとかではないというか。自己満で書いてるから。

かじ:僕は好きですけどね。

えい:嫌いではないですよ!

――でも、そのえいくんの気持ちもわかります。そういうふうに書いた曲なんだっていうのはわかる。

えい:特にこういう、人とのことを書いてる曲、しっかり伝えたいことがある曲は、言葉を無碍にしたらダメだなって思ってるから、ある種、遊び心を持たずに書いているんです。

――でもそういう、共感を求めて書いていない曲のほうが得てして共感されてしまったりすることもありますからね。

えい:そうなってしまえば「あざーっす」くらいの感じ(笑)。でも、めちゃくちゃわかりやすくいったら、たとえばTikTokだったりとか、そういうBGM的なものにはされたくないなっていうのはある。ちゃんとbokula.のバックグラウンドも知った上でこの曲は聴いてほしい。そういう意図はあるかもしれない。

ふじい:「いつ失ってもいいように.」は、bokula.のバラードの中でトップクラスに好きだけどな。

――ほら。

えい:だから嫌いではないですよ?

ふじい:独特なんですよね。「いつかの事」だったり「ワンルームとふたり」とかの類の悲しいタイプのバラード、青と黒が似合うようなバラードの中でも。何歳になっても「この曲やっぱいいよね」って言える曲だなって思いますね。

――単純にサビのメロディができたときに「やった」って思いませんでした?

えい:どちらかというとコード進行ですね。2コード目でマイナーに切り替わるんですよ。そこが俺の中でツボだったっていうか。これが理論の楽しさか、みたいな。気持ちよさはもちろんありましたね。だから、嫌いじゃないです(笑)。

――でもこの曲もそうですけど、bokula.のバラードは基本悲しいとか切ないことが多いじゃないですか。めっちゃハッピーみたいな曲ってほとんどないと思うんですけど、それはなんでなんでしょう?

えい:それは、こんな人間だからですよ。バンドをやってるえいとしてはすごく自信は持ってるし、かっこいいなと思ってるんですけど、そうじゃない自分に対してはすごく自信がないというか。ステージを降りてしまえばろくでもない人だと思ってるので。本質的にはそういう負の感情の人間が作っているから、そういう曲が生まれるんだと思います。

ふじい:この前もそういう話になったんです。「終わってしまう前提で曲を作ってるよね」って。でもその寂しいのが「らしさ」なんだろうなって。

えい:「涙ばっかのヒロインさん」はリードトラックなので、そこからbokula.の入口を広くしていきたいっていうのがあるんですけど、「いつ失ってもいいように.」はもっと小さくていいというか、密な部分で愛されたい曲ですね。

bokula.インタビュー写真(撮影=伊藤惇)

――だけど、「涙ばっかのヒロインさん」も、もちろんそこに描かれてる2人は幸せなのかもしれないけど、それを外側から見てるこの人っていうのは幸せなのかっていったら――。

えい:これはもともとは僕のことを歌っているので。幸せじゃないですね。

――その「どうせ終わっちゃうし」みたいな気持ちはどこかにあり続けているし、それが今作はよりはっきり伝わってくる部分があるような気がする。

えい:最近は特にそうですね。何にも期待しなくなりました。

――でもきっとバンドや音楽をやっていくということに関しては違うんですよね。

えい:音楽は別ですね。それは本当に中学生の頃から信じていたことなので、そこに対しては何の不安もないし、負の感情はまったくない。

――その両方が今回のEPではちゃんと表現できている気がする。歌詞はすごくディープに、本来のえいくんを映し出している気がするし、でも演奏や音の部分で前に行くベクトルがちゃんと出ている気がするし。その両面をちゃんと表現できてパッケージできたっていうのが、今回のEPのおもしろさなのかなと思います。『涙 滲むのは心の本音です.』というタイトルは「不完ロマンス」の歌詞から取られていますが、このタイトルになったのはどうしてなんですか?

えい:最初に話したとおり「青さ」と「恋」というテーマがあって、それに沿った曲を揃えることになったとき、「不完ロマンス」の言葉が目に留まったというか。テーマに沿っているし、内側を抉れる曲が揃ってくれたから、このワードがふさわしいなと思って。

bokula. - 不完ロマンス -【Official MusicVideo】

――いいタイトルですよね。

さとぴー:そう思います。

えい:もうちょっとなんか表現してほしいな(笑)。

さとぴー:このタイトルに関してですか? いや……すごくいいタイトルだと思います。なんだろう、文字で見た時にちょっと懐かしいなと思ったんですよね。2021、2022年くらいに出していたEPとかのタイトルがこんな感じだったから。

――確かに、最近英語のタイトルが続いていましたからね。

さとぴー:収録曲たちの中にも、当時の感じが思い出せる雰囲気があって。それもあって、懐かしいなという感じがしました。

ふじい:結構真正面から歌ってる楽曲が多いから、「本音」っていう言葉がすごく合うしね。

――本音っていう言葉はやっぱりすごいキーワードですよね。今までももちろん本音で書いてきたと思うけど、その本音度合い、濃さみたいなものが変わっているというか。

えい:さっき、自分でも言っていて思ったのは、本当に人に対して言わなくていいことを言わなくなったっていうのもあったりとかして。それが曲を捌け口にして出ているのかもしれない。それはある種の成長なのかなと勝手に思ってはいるんですけど。あと、生活する上での出会いだったり別れだったりの、なんでそれが起きたのかっていうことに対して、自分で8割方正解に気づけるようになったのかなって。そうやって自分を俯瞰できるようになったのかもって思います。

『涙 滲むのは心の本音です.』
『涙 滲むのは心の本音です.』

■リリース情報
2024年4月17日(水) 発売 
Major 1st EP『涙 滲むのは心の本音です.』
価格:¥2,200(税込) 

特設サイト:https://bokulaofficial-namida.com

<CD収録内容>
M1 涙ばっかのヒロインさん
M2 怪火
M3 不完ロマンス
M4 いつ失ってもいいように.
M5 最愛のゆくえ.
M6 高鳴り(Bonus track/CD Only)

<CD封入特典>
Phantom youth TOUR
2023年12月4日(月) 渋谷CLUB QUATTRO公演
オンライン視聴コード

<ショップ購入特典>
Amazon.co.jp:メガジャケ
楽天ブックス:L版ブロマイド
セブンネットショッピング:ピック
TOWER RECORDS/TOWER RECORDS ONLINE:ステッカーシート (※一部店舗を除く)
TOY’S STORE:アクリルキーホルダー
共通店舗特典:告知ポスター

■ツアー情報
bokula. 『涙 滲むのは心の本音です.』 Release Tour 
『僕らで時代を作ります。ワンマンツアー 〜“じゃけぇ”ってすぐ言う編〜』
5月31日(金) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO 開場18:00/開演19:00
6月5日(水) 大阪・梅田CLUB QUATTRO 開場18:00/開演19:00
6月9日(日) 広島CLUB QUATTRO 開場16:00/開演17:00
6月19日(水) 東京・恵比寿LIQUIDROOM 開場18:00/開演19:00

ツアー応募:https://eplus.jp/bokula/

■関連リンク
Official Website:https://bokula.jp
Instagram:https://www.instagram.com/bokula_official/
X(旧Twitter):https://twitter.com/bokula_bandmate
TikTok:https://www.tiktok.com/@bokula_official

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