トンボコープ、音楽の道で目指す“最強” 直近1年での飛躍を実現した強い楽曲の作り方
世間に対する違和感が曲の原点
ーーだからこそ音楽に懸けるものが大きいんだろうなと。今回のミニアルバムは、それがよりシリアスに出ている感じがするんです。自分たちではこの『ファースト・クライ・ベイビー』はどういう作品になったと思いますか?
林:雪村が作った「明日の一面」と、それに近いカラーなのが2曲目にある「PARADIGM」で。『ファースト・クライ・ベイビー』=「産声」というタイトルは僕が考えたんですけど、意味としては、産声って人が生まれてきて一番最初に“意見”をする瞬間なのかなっていう。だから意見っていう意味が結構強くこもっています。「明日の一面」や「PARADIGM」は結構社会的な批判とか、世の中で今ホットな「これってどうなの」という話題に踏み込んだり、アーティストだからできることや言えることを取り入れています。
ーー「明日の一面」はどういうきっかけでできた曲なんですか?
雪村:これは結構前、僕がTikTokに楽曲のサビを上げ続ける動画を更新していて、その時に生まれた曲です。毎日上げなきゃいけないから、ちょっと尖り目な曲も必要だよなと考える中でできた曲なので、フルを作るとなった時に「マジでこれどうしよう」となりましたが、なんとか形にしたっていう感じで。まさかこれがリード曲になるなんて思ってもなかったんで、ちょっと苦労しました。
そら:「明日の一面」は最初に聴いたときから本当にかっこいい曲だなと思いました。詞を読んで「こんなことを思ってんだ」と思いましたね。
ーー「明日の一面」や「PARADIGM」に込められている感情は、怒りに近いものなんですかね?
雪村:怒りというよりも、世間に対して違和感を覚えることがあって。でもこう思ってるのはたぶん俺だけではないなと思って曲にしました。普通に生きていたら、その違和感があったとしても生きれると思うんです。でも目を背けるのも嫌だなとも思うので、それはやっぱり歌にしたいなと思いますね。
林:「PARADIGM」は違和感というより、もっと適切な言葉を使うとしたら皮肉なのかな。例えば社会全体で何か問題を解決しましょうみたいな動きがあった時、中には「それって意味あるの?」「口で言ってるだけじゃない?」と思うものもあって。それを軸にした商売が同時に生まれるところを目にすると、そういうビジネスなのかなと。そのくせバッジとかを着けて優良企業感を出したりするじゃないですか。うちの親も着けてましたけど。それは別にいいんですけど、内容をよく理解していないであろう人が「やるべきだ」と強要してくることに対して、「それ、ちゃんとわかって言っているの?」と思うんです。
ーーそういう違和感や皮肉めいた感覚から曲が生まれてくるバンドなんだというのは、今作を聴いてよくわかりました。
雪村:違和感をモチーフに曲にすることは結構多いですね。もともとちょっと社会から逸脱してるタイプの人間だと自分のことを思うので、普通に生きていたらそれが完全に弱みになっちゃうと思うんです。でもアーティストである以上は強みにもできるなと。
ーー社会から逸脱している自覚があるんですか?
雪村:はい。結構昔、物心ついた時からありました。学校の成績とかもめちゃくちゃ悪かったですし、先生から怒られてばっかりだったし、「自分はなにかおかしいのかな」とずっと思って生きてきました。
林:物心ついた頃から「自分は社会から逸脱している」と思ってきたんだ(笑)。
ーーでも、社会から逸脱しているからこそ見えるものや感じられることってあると思うんです。そういうことを1個1個曲にしているような気がするし、「もっと言っちゃっていいんじゃないの?」って、そこに向かうことに対して遠慮がなくなった感じがする。
林:前作『羽化』はほぼシングルで先行配信されていた曲だったので、それをまとめて一つにした作品だったんですけど、今回は新録の曲が多いので、コンセプトを考えながら作っていきました。自分としては、今までの曲は恋愛の話が少し多かったと感じていて。ラブソングって世の中にたくさんあるし、それはそれでいいものだと思うんですけど、視野が狭い感じもするというか。恋愛って、大体は自分の話じゃないですか。様々な出来事が世の中で起きていることを知った上で、恋愛の曲はあるべきだなと思っているんです。自分が作った「くだらないこと」も、そういう考えの中で生まれてきた曲で。そういう「非日常から逆輸入した日常」みたいなものが、このミニアルバムのコンセプトなのかなと思っています。
ーー確かに「明日の一面」とか「PARADIGM」を聴いた上で「くだらないこと」を聴くと、ただそれだけを聴くのとは違う感情が湧いてきます。「喜怒哀楽」も恋愛がテーマの曲だと思うんですけど、もっと大きな視野で歌っている感じがする。
雪村:「喜怒哀楽」はみんながハッピーになれる曲にしようと思って作りました。いろんな感情をみんな持っていると思うんですけど、結果的に幸せならそれでいいよねみたいな。
林:大団円的なイメージがあったので、アルバムの最後の曲にしました。これで締めくくったらハッピーエンドかなと思ったので。
ーー確かにハッピーな曲ではあるんですけど、おもしろいなと思うのは「サンポリズム」でも「独裁者」でも、雪村さんが恋愛を描く時って2人だけの世界に閉じていくというか、どこか遠い世界に行きたがるような傾向があると思いました。
雪村:恋愛だけに限らず、人間関係全般というか、そこに他者は介入しないでほしいというタイプの人間なんです。久しぶりに会った小学校の同級生みたいな、ほぼないけど一応関わりはある、みたいな人からバンドのこととかを触れられると、なんかイラッとしちゃうんです。
ーーああ、「なんか売れてるじゃん」みたいな。
雪村:はい。「お前に関係ないよ」と思っちゃう。
ーーそういう性格だからこそ、音楽という形で人とつながることが必要だったんだと思うんですよね。
雪村:そうですね。
ーーそういう意味では、今ステージに立つと目の前のお客さんがいっぱいいて、他者とつながれてるわけじゃないですか。その感覚はどうなんですか?
雪村:気持ちいいし、でも一歩間違えたら深く心に傷を負っちゃうなみたいな。すごくパワーのあるものだと思っています。でもうまくいった時はこの上なく幸せな気持ちになります。
ーーこの『ファースト・クライ・ベイビー』には、その両方がちゃんと入っていると思います。尖ってる部分はめちゃくちゃ尖っているし、でも大きく包み込むような部分もある。たとえば大きくなっていきたいということだけを考えるなら、もっと大衆的な、普遍的なものをどんどん作っていけばいいという発想になりそうな気もするんだけど。
林:自分たちがどうありたいかっていうのを考えたときに、「かっこよくなりたいな」と思っていて。みんなが僕たちを知ってくれるきっかけになった曲はたぶん「Now is the best!!!」だと思うんですけど、あの曲はあまりトンボコープを説明してないと思っているんです。むしろ誤解を与えるかもしれないぐらいだったなって。でもそれがあったからこそ、もっとかっこいいものを作りたいという気持ちが強まった。だからみんなが欲しがるものをあげるというよりも、「これが俺たちだからここにおいで」という提示みたいな意味合いが強いですね、このアルバムは。でも、まだいけるなっていうのも少し感じていて。僕は何でもできるオールマイティな存在になりたいんですよね。すべてのジャンルにおいて最強になりたい。そこがチラッと見えたなと思います。
雪村:でも、どう最強になるかっていうのはいろんな選択肢があると思うんです。『羽化』を出した時は道が一直線だったというか、強くなるにはこの道を通るしかないと思っていたんですけど、『ファースト・クライ・ベイビー』を出すことによってより道が広がったというか。ここから先どんな曲を出しても、この作品が一歩目として認識できるようなアルバムになったんじゃないかと思ってます。
■リリース情報
2nd mini album『ファースト・クライ・ベイビー』
2024年4月3日(水)発売
※タワーレコード専売商品
2,500円(税込)
https://tower.jp/item/6289486
▼収録内容
M1.風の噂
M2.PARADIGM
M3.明日の一面
M4.くだらないこと
M5.独裁者
M6.サンポリズム
M7.喜怒哀楽
■関連リンク
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