くるりの本質はシングル表題曲以外に宿る 演奏バリエーションでも楽しませたFC限定公演

 くるりが「くるりオフィシャルサポーターズクラブ『純情息子』限定イベント」を大阪と東京で開催した。くるりがファンクラブイベントを行うのは2019年以来、約5年ぶり。「純情息子」会員からのリクエストを基に決められたというセットリストは、シングルの表題曲を一曲も含まない非常にレアなものだった。

 とはいえ、ただ「普段あまりやらない曲をやる」というだけではない。僕はくるりが唯一オリコンで1位を獲得したのがB面集の『僕の住んでいた街』だというエピソードが好きで、よく原稿にも書いてしまうのだが、つまり「くるりはシングルの表題曲以外にこそ本質がある」というのは、くるりファンが共有している感覚のはず。このイベントについて、3月13日に行われた恵比寿 LIQUIDROOMでの公演をレポートする。

 岸田繁と佐藤征史に加え、松本大樹、野崎泰弘、石若駿という近年のレギュラーメンバーがステージに登場すると、ライブは2004年発表のアルバム『アンテナ』で一曲目を飾っている「グッドモーニング」からスタート。音源で印象的なストリングスのメロディがピアノに置き換えられ、このアレンジもとてもいい。さらには2006年にリリースされたコンピレーションアルバム『みやこ音楽』と後にベストアルバム『くるりの20回転』にも収録された「五月の海」、もともとはシングル『ワンダーフォーゲル』の初回限定盤のみに収録され、その後に『僕の住んでいた街』に再録された「ノッチ5555」と、冒頭からファンクラブイベントらしい選曲が続いていく。

 ギターのイントロからすぐに歓声が起こったのは、『THE WORLD IS MINE』収録の「水中モーター」。野崎がボコーダーで主メロを歌い、サビを佐藤が歌い、曲中の台詞〈君の背中にヒトデがついてるよ このままじゃ ヒトデ形に日焼けしちまうぜ〉も岸田によって完全再現され、場内からは大きな拍手が起こる。さらに『坩堝の電圧』収録の「jumbo」では佐藤が派手なカーディガンを羽織ってボーカルを務め、岸田は仮面をして、音源のトランペット替わりにカズーを演奏。こんな光景も普段のライブでは見ることができないものだ。

 MCでは岸田が最近ハマっているアニメ『葬送のフリーレン』ネタを交えつつ、「魂のゆくえ」では岸田がフェンダー・Highwayシリーズのエレアコを弾き、そのシリーズ名からしてくるりファンならにやりという感じだし、薄型でヘッドがエレキ仕様の見た目もかっこいい。また、「真昼の人魚」では松本がマンドリンを弾いたりと、頻繁に楽器を持ち替えながら、様々な年代の曲を現代にアップデートして鳴らしていく。こちらもピアノのイントロからすぐに歓声が起こった「京都の大学生」では、岸田がピンボーカルで熱唱。「くるり=京都」のイメージはもちろん強いが、この曲はまさにその象徴だ。

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