香取慎吾、黒木彰一プロデューサーと最後に交わした誓い 楽曲「質問」が心を奮い立たせてくれる理由
近年、香取慎吾の1年は大きなチャレンジとともに始まっている印象だ。
たとえば、2020年は初のアルバム『20200101』(ニワニワワイワイ)を発売し、ソロアーティストとしての大きな一歩を踏み出した。そして2021年は33年ぶりにテレビ東京ドラマへの出演となった『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』でSNS上の誹謗中傷問題という新しいテーマのサスペンスを好演。
また、2022年の元日には『ワルイコあつまれ』(NHK Eテレ)の特番でレギュラー番組化への足がかりを作り、同年末から2023年の年始にかけて個展『WHO AM I 』をスタート。全国を巡る『WHO AM I -SHINGO KATORI ART JAPAN TOUR-』、そしてライブ『Black Rabbit』を展開した。
そして2024年、香取は東京・日比谷の日生劇場にいた。舞台『テラヤマキャバレー』で「言葉の錬金術師」と呼ばれた鬼才・寺山修司を演じるためだ。開幕前日の2月8日の舞台挨拶では自ら「いつもの“慎吾ちゃん”とはちょっと違う様子で、この日生劇場の舞台に立っています」と語っていたように、その顔つきは私たちの知る香取慎吾とは少し異なる、緊張感が伝わってくるものだった。
1983年に47歳でこの世を去った寺山修司。その没後40年を機に47歳の香取が寺山を演じる。しかも物語は寺山が死を宣告された瞬間の脳内キャバレーを舞台としているというのも、何か運命めいたものを感じずにはいられなかった。
さらにこの公演の裏側で香取は、ある大切な人の死と向き合っていた。それは、今年2月13日に白血病のために54歳という若さで死去したフジテレビの黒木彰一プロデューサーだ。『夢がMORI MORI』ではADを務め、SMAPのメンバーが出演する多くの番組に携わってきた黒木氏。なかでも『SMAP×SMAP』では最後のチーフプロデューサーとして番組を作り上げたことでも知られる名物プロデューサーだった。
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「稽古がはじまった1月4日から、僕は生きること、死ぬことを1日何時間も考えてきました」とは雑誌『週刊文春WOMAN』2024春号(文藝春秋)のインタビューで語られた香取の言葉だ。そこには、番組プロデューサーとして関わる以上に信頼を寄せていた黒木氏との限りある日々が大きく影響していたに違いない。
会いに行ける日には彼のもとへ通ったという香取。その病室で、香取が歌う配信リリース前の「質問」の音源を聴いてもらえたことも明かされた。この「質問」は寺山が作詞をした楽曲で、〈あなたは 幸せですか〉という歌詞から始まる。今回の舞台では、香取が独唱するシーンが非常に印象的に描かれていた。