YU、『aitowa』は日記のような作品に バースデーイベントで感じたライブの楽しさも明かす

YU、『aitowa』は日記のような作品に

 台湾・日本の2拠点で活躍する俳優/ミュージシャンのYUが、EP+Calendar『aitowa』をリリースした。日本第一弾楽曲「心鏡」はじめ、収録されている5曲には日本デビューしてからの2年半のリアルな経験が詰まっているという。今作の各曲についてはもちろん、2月に開催されたバースデーイベント『YU Japan 29th Birthday Event~THIS IS YU~』を振り返って感じるライブの楽しさ、これからの目標などについて、本人にじっくりと語ってもらった。(編集部)

(自分をさらけ出すのは)怖いとか恥ずかしいというより、嬉しいの方が大きい

YU(撮影=池村隆司)

――すでに散々聞かれたと思うのですが(笑)、改めてEPのタイトル『aitowa』の意味をうかがわせてください。

YU:今回のEPにはカレンダーも付いていて、目と耳で楽しめることもあるので、たくさんの意味で捉えてほしくて、あえてローマ字の『aitowa』にしました。僕はご縁や繋がり、そして愛をずっと大事にしてきました。EPに収録されている5曲は、僕が(日本)デビューさせていただいてからの2年半の、日本での生活のリアルな体験が曲になったもの。それらの繋がり、皆さんとの繋がりを紐づけて、『aitowa』というタイトルを考えました。

――「ご縁」という話もありましたが、YUさんご自身のターニングポイントとなったご縁とは?

YU:台湾で初めて主演させていただいたBLドラマ『We Best Love 永遠の1位/2位の反撃』(2021年)ですね。お芝居させていただくきっかけになったし、アジアの皆さんに知っていただける作品になったので。

――ご自身の2年半が綴られているということなので、1曲ずつお話を伺っていきましょう。1曲目の「心鏡」は、アコースティックバラードです。

YU - 心鏡 (Official Music Video)

YU:theバラードですよね(笑)。台湾ってすごくバラードが流行っていることもあり、台湾デビュー曲もバラードでした。僕が台湾に行ってから10年ほどですが、今ではバラードばかり聴いていて。だから日本語の1曲目は、バラードのラブソングにしたかった。しかもラブソングというのも、僕には初めてで。書きたくて、歌いたくて……という気持ちでした。僕のリアルな経験から書いた曲なので、すごく思い入れもある曲になりました。

――こんな切ない経験が?

YU:実体験というよりは、僕がこういう人間であるから、こういう歌詞が出てきたと捉えてください。それを改めて再認識できた曲です。

――再確認できた自分とは、どんな自分でしたか。

YU:すごく言葉足らずなんですよね、僕って。恋愛だけに限らず、役者であり、アーティストでありながら、言葉足らずで。それで周りの人を困らせることもあるから「いけない」と思いつつも、「それが僕らしさかな」とも思ったり。

YU(撮影=池村隆司)

――受け入れたんですね。ところで、「ラブソングを書きたくて、歌いたくて」という気持ちはどこから出てきたのでしょう。

YU:ちょっと悲しいラブソングが好きなので、僕が好きなものに挑戦したかったんです。

――この5曲の中では「心鏡」が一番昔の曲となりますが、今、この曲を聴いて2年半前の自分をどう思いますか。

YU:ちゃんと、ちょっとずつ変わってきているかな。そのころの考えに正解も不正解もないけれど、比べてみると、今、自分自身が成長できているんだなと感じます。

――2曲目の「アシアト」には、ちょっとポジティブな兆しが見えますね(笑)。

YU - アシアト (Official Lyric Video)

YU:そうですね。ふつふつ沸く熱というか、「僕はどうあればいいんだろう」という自分への投げかけに、「こうしたらいいんだ」と前向きに返せた感じですね。書いたのは、ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』(2022年/日本テレビ)の撮影で、初めて東京に長期滞在していた時期だったんです。東京もわからない、知り合いもいない、話せる人もいない孤独感があったし、日本での仕事の第一歩目で、不安もたくさんあった。その感覚って、僕が日本から台湾に行った時に似ているなと思ったんです。寂しいけれど、ちゃんとした思いは持っている。そういう曲にはなっているのかな。

――3曲目の「梅雨のち晴れ」は、これまでの2曲とだいぶカラーが違いますね。

YU - 梅雨のち晴れ (Official Lyric Video)

YU:はい。カラーも違うし、言葉数も多くてちょっとラップっぽい感じもして。レコーディングが終わった時に、「これライブで歌えるのかな?」と心配になりました(笑)。新たな挑戦と発見があった曲です。5曲の中に入ると、「あってよかった」と思える曲ですね。

――「ライブで歌えるのかな?」と思ったそうですが、レコーディング前にだいぶ練習したのでしょうか。

YU:僕、レコーディングの時に毎回、沼にハマるんですよ。この曲は、譜割がわからなくなって歌えなくなってしまいました。ひたすら練習するしかないですね。

――4曲目の「夢中」は、疾走感のあるロック曲です。

YU - 夢中 (Official Lyric Video)

YU:力強い歌声も必要だと思ってボイストレーニングに通い始めた時期に、新たな課題に挑戦するために作った曲です。作ったのは、ドラマ『何曜日に生まれたの』(2023年/ABCテレビ・テレビ朝日系)が終わってから。「アシアト」をひっくり返したような内容です。「俺が正解だ! もう突き進むしかない!」というちょっと俺様なイメージは、その時に僕が感じていた一種の苛立ちをストレートに歌詞にして。今までで一番、歌詞の直しが少なかった曲です。書きたいことがちゃんと表現できたなと実感できました。

――ボイトレを始めて、変化はありましたか。

YU:ちゃんとした声量でパワフルな声を出せるようになってきましたし、喉もどれだけ歌い続けても大丈夫という自信もついた。そういうメンタルの効果が1番大きかったですね。

――5曲目の「19」は、どうでしょう。

YU - 19 (Official Lyric Video)

YU:この曲も『aitowa』というタイトルと同じで、いろいろな捉え方をしてほしくて。ずっと書きたいと思っていたテーマでした。COVID-19、コロナの時期に感じた「人と会うことが、突然簡単なことではなくなる」ということを詩にしています。小さな幸せがなくなったことに気づかなかったり、小さな幸せを幸せと思えないことってすごく寂しいと思ったんです。リモートやテレビ電話も便利だけれど、ちゃんと対面して会える素晴らしさというのをコロナの時期に実感しました。そして、そのモヤモヤがちょっと消化できた曲でもありました。僕がこの曲で描いてる相手を自分の大事な人と想像して、自分の捉え方でこの曲を聴いてみてほしいです。

――YUさんは自分の思ったことに対しての共感よりも、聴き手に委ねたいんですね。

YU:そうですね。初めてライブをやった時に、「君が悲しいって言ったら悲しい曲になっちゃうんだよ」と言われたんですが、それは良くないなと思いました。楽しんでもらう曲を「楽しんでください」はいいんだけれど、人に寄り添う曲って、人それぞれの状況が違うから一概にはいえない。「19」は少しでも誰かの励みになってほしいと願って作ったから、「それぞれの捉え方で感じてほしい」と言うようにしています。

YU(撮影=池村隆司)

――ご自身で書かれる歌詞について聞いていきたいのですが、「自分のことを書く」とおっしゃいましたが、YUさんにとって歌詞を書くというのは、日記を書くようなものなのか、それとも内面にあるものを吐き出すものなのかというのは。

YU:両方ですね。この5曲が2年半の日記になっていますし、それぞれの曲で吐き出したいものをちゃんと吐き出して消化できている。僕が思う音楽、僕がかく音楽って、なんかそういう場所なんですよ。言葉足らずな人が、歌があれば何かを残せるし、自分のモヤモヤしたものを吐き出せる。

――ということは、このEPを1曲目から聴いていけば、YUさんの生きてきた過程がわかるってことですね。

YU:そうですね。あのころ、あの仕事をしていた時に何を感じていたんだろうって思いながら聴いてみるとまた面白いかもしれないですね。

――自分の内面をさらけ出すって、怖くないですか?

YU:いや、全然平気。全然さらけ出す……うん、さらけ出したい(笑)。1つの作品として残せることが嬉しいです。怖いとか恥ずかしいというより、嬉しいの方が大きいですね。

――リアルを書いていらっしゃいますが、想像の世界を書いてみようという思いは?

YU:たまに思います。それで1作書いたことがあるんですけど、あまり良くなかった(笑)。

――やっぱり自分の経験が、言葉になりやすいんですね。

YU:そう、反映できる。想像だけだと気持ちがあまり乗らないんです。

YU(撮影=池村隆司)

――YUさんの歌詞って、ハッピーというよりも、自分の心に引っかかるものをテーマにしていることが多いですよね。

YU:そうですね、大体そっち……いや、全部そっちだ(笑)。「梅雨のち晴れ」も、少しアップテンポでな曲を書きたいと思ったのに、結局そっちになっちゃって。楽しくてポップで、誰が聴いてもフワフワなれるような曲を作りたかったのに、やっぱりネガティブになってしまいました。僕が経験してきた中で描きやすいことって、大体少しネガティブ(笑)。

――心配性ですか?

YU:心配性ですよ、実は。悟られないようにしてるのだけれど(笑)。

――ハッピーな曲を書けるのは、いつなんでしょうね。

YU:僕がハッピーになっている時ってことですよね、今の話でいうと。

――でも今、ハッピーでしょ?

YU:ハッピーといえばハッピーですけれど、そうなったら「ハッピーってなんだろう」って歌詞になりそうだな……。

――今回のEPには、カレンダーが付いています。カレンダーの写真と曲がリンクしているとか。

YU:そうですね。カレンダーはモノクロ写真で始まります。僕が日本に来た時、何も色がないモノクロの世界に生きていて、そこから日本でお仕事をして、人に出会い、だんだん色づいていく様子を表現して、写真もカラーになっていきます。5つの楽曲も写真もだんだん色づいていく様を見てほしいですね。

YU(撮影=池村隆司)

――制作の過程について伺っていきたいんですけれど、プロデューサーの百田留衣さんとは、どういう感じで曲作りを進めているのでしょう。「今回バラードにしたいんだけど」というところから?

YU:そうですね、まず大枠のメロディを最初に決めて。今回はバラードとか、ロックっぽい感じとか。それで何曲か聴かせていただき、選びます、そして、僕が歌詞をかきます。それを一緒にブラッシュアップしていく感じです。アレンジはお任せで。でも不思議と僕が思っていた通りの曲を出してきてくださるんです。僕の良いとこだけをちゃんと繋げてくださいます。レコーディングの時も気分を乗せてくださり、とても心地よいです(笑)。

――YUさんから見て、百田さんはどういう人ですか。

YU:大人の余裕があるし、歌もめちゃくちゃ上手い。仮歌を百田さんが入れてくださるのですが、聴くと「これでいいじゃん!」と思う(笑)。なんでも教えてくれるし、お兄さんみたいな人。本当に頼れる存在ですね。

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